6月2日、渋谷ユーロスペースでカルロス・サウラ監督の遺作映画『壁は語る』を鑑賞。

アルタミラ洞窟壁画の専門家ペドロ・A・サウラ・ラモス、日本語訳されている『ネアンデルタール人の首飾り』(2008年)の著者ファン・ルイス・アルスアガ、2022年1〜3月に初台の東京オペラシティ・アートギャラリーで開催されたミケル・バルセロ展のアーティスト、パリ人類博物館で発表後ヴィアルー先生宅でともに晩餐会に呼ばれたことがある(20年前に来日した時もお会いした)カンタブリア先史考古学博物館館長ロベルト・オンタニオン・ペレド、SUSO33、ZETA、MUSA71、CUCOらグラフィティーアーティストに監督がインタビューする形式のドキュメンタリー映画。

 

動物よりも記号や手形に重心を置いているように感じました。現在のグラフィティーアーティストとの対話が重視された形です。私も洞窟壁画の研究を始めた頃、「落書き」に興味を持っていました。

サウラ監督やアーティストが「衝動」や「エゴ」という言葉を何度か使っていたのも印象的です。洞窟壁画を描いた旧石器時代人もそうした感覚はあると思います。ただ、スプレー缶がない大昔なので、顔料の入手、加工作業を考えると、それだけはないでしょう。現代の「落書き」には多くの感情も含まれてるので、例えば「壁の質感」に興味があるアーティストがいたり、その土地や場所への想いが含まれていたりと。

グラフィティーは後で書き足されるパターンと、前のグラフェティーをリスペクトしてあえて重ならない場所に書くパターンと、グラフィティーアートの専門家やアーティストが話しているのを聞くと、洞窟壁画も両方のパターンがあります。

 

旧石器時代の洞窟壁画も一つの解釈では無理がありそうです。洞窟ごとに壁画ごとに解釈していくのが無難なのでしょう。

 

2022年3月25日、ミケル・バルセロ展で撮影した写真