最近、休眠口座が新聞などで話題になっています。
休眠口座とは、「長期にわたって取引(引き出し、預け入れ等)がない預金」のことです。長期とは金融機関によって違いますが、だいたい10年以上のようです。

銀行に口座を作ったけれど残高がほとんどないのでほったらかしにしてある、という人は結構いるのではないでしょうか?あるいは、引っ越しを繰り返しているうちに、通帳がどこかにいってしまい自分もその存在を忘れてしまっているという口座もあるかもしれません。
そのような休眠口座が日本全体では年間850億円くらいあり、それが金融機関の収益になっているというのです。もちろん本人から請求があれば金融機関は返還しなければならず、それが年間350億円くらいあるようですが、それでも差引500億円が毎年金融機関の収入となっているわけです。

この休眠口座については、昨年私も委員をしていた「新しい公共推進会議」で議論になりました。
推進会議の下にあった専門調査会委員では、NPO法人フローレンス代表の駒崎弘樹氏が、この休眠口座の資金を市民公益活動を支援するための資金として活用しようと提案しています。駒崎さんの資料から引用します。
海外では、既に休眠口座を社会的なサービスの財源として活用している例がいくつかあります。
たとえば、イギリスでは15年以上取引がなく預金者と連絡が取れない口座の預金は、預金者の情報とともにReclaim Funds(休眠口座基金管理団体)に移管されて運用され、その預金と剰余金がBig Lottery FundとBig Society Bankに提供されて、社会的組織の援助や中間事業者の資金調達支援に利用されるそうです。消費者は「mylostaccount」というWebサイトを通じて金融機関の口座を検索することができ、自分の休眠口座を見つけた場合は払い戻し請求ができます。
米国、カナダ、アイルランド、韓国などでも同様にシステムが整備されているようです。

駒崎氏は、「日本版休眠口座基金(案)」についても提案しています。諸外国の例を参考に、金融機関を横断した休眠基金照会システムを構築し、一方金融機関が「休眠預金管理財団」に寄付する形で資金を移し、この財団が社会的なサービスのために集まったお金を活用するというものです。

2011年1月、2月に新しい公共推進会議で議論が進んだ休眠口座でしたが、東日本大震災発災後議論が中断してしまいました。それが最近、震災の復興のための資金に使おうと、再び議論になっています。
これに対して、全国銀行協会は「休眠口座でも預金者のもので財産権の問題もある」「活用するには全国12億口座を一元管理する組織が新たに必要でコストは膨らむ」などと反対しているようです(毎日新聞3月2日)。しかし、休眠口座に眠っているお金は、本来預金者のものでありそれを金融機関が自分たちの収入にしていることのほうが問題です。休眠口座に眠っているお金を銀行の儲けに入れるか、それとも震災の復興資金やNPO/NGOによる社会的な活動に使うのがよいかと問えば、誰でも後者を選ぶことでしょう。
休眠口座の社会的活用を日本でもぜひ実現すべきだと思います。

$国際協力NGOセンター(JANIC)事務局長ブログ