10年くらい前だろうか。バングラデシュの調整会議から帰る飛行機で本当にあった出来事。


バングラデシュの首都ダッカから飛び立ち、バンコクで乗り換え、日本に帰ることが多かった。私は飛行機で隣の席の人と話すのは、ちょっと苦手で、できれば勝手に本でも読んでいたい方だ。


バンコクから日本に帰る飛行機の中で、隣に座ったアメリカ人が私に話しかけてきた。「英語しゃべらないといけないのか・・・イヤダナ・・・・」といった気持ちにすぐなっていた。英語の苦手意識もあるのだが、アメリカ人と話してあまり楽しい気分になったことがこれまで少なかったので、日本までの6時間、この人と話すのがなんか気が重かった。彼は私に握手しながら、自己紹介してくれたのだが、彼はミャンマーでキリスト教の伝道活動に携わる人だった。


彼は、私に何か伝えたい・・といった目の光を放っていた。・・・悪い予感・・・。


彼はさっそく座席のポケットに入っていた聖書を出して、それを次々とめくりながら、「君は、キリストのメッセージを知っているか?」と切り出してきた。それから延々とキリストの愛を私に伝えるのだった。30分もひとりでしゃべっている。横顔を見ると、話ながら涙を流している。マジか・・・?


私は、「キリストの愛は否定しないのですが、すいません、私は仏教徒なので輪廻転生の方がしっくりきます」とあっさり応えると。彼は顔を歪めて、「ブッダの教えは野蛮だ、そういった生命観はありえない」とあっさり、拒否してきた。


私は、心の中で「ああ、やっぱりそうなるか・・・」と思い、仲良くこのままニコニコ時間を過ごすか、はっきり言って、残りの3時間ほどをそれぞれに過ごすか考えた。意を決して、「キリストを否定しませんが、仏教はキリスト以前に深い哲学観を出しています。私はとりあえずその謎を解くことで十分です」といった。彼は、驚いた顔をして、「No!! キリストはブッダより昔に存在していた・・・」と新説を発表した。それを聞いて驚く私の顔を見る、彼。

しばらく、沈黙。

それから、残りの3時間は、二人は黙って成田まで過ごしたのだった。


欧米のNGOの方々は、ひょっとするとこういった価値観を持っていないか、時々心配になるときがある。私も気をつけよう。

国際協力NGOセンター(JANIC)事務局長ブログ-next to us
Next to us(写真提供:Ayako & Ferdi)