「にぼしなう」 わが家の2011年流行語大賞【後】
![つよきのヤンゴ](https://stat.ameba.jp/user_images/20100930/18/jango-of-memories/73/0d/p/o0100007110775786912.png?caw=800)
前回のエントリー「にぼしなう」 わが家の2011年流行語大賞【前】
の続きです。
【前回のあらすじ】
妹の不用意な「なう」の使用により、母が「なう」の使い手になってしまった。
世間では「なう」は下火だというのに、お構いなしに母のなうは加熱する。
「でんちなう」や「こゆびなう」を繰り出す母にタジタジの僕。
そして、わが家の流行語大賞にもなる「にぼしなう」が僕のケータイに…。
ある日の仕事帰り、母からメールが送られてきた。
メールは以下のような内容だった。
本文:肉屋に寄るのか?
鶏モモだな
どこのカーチャンもメールではぶしつけな言い方をするものだと聞いている。
だから、変な言い回しについては触れない方向でお願いしたい。
そんなことよりも、鶏モモ肉を買ってきてくれと言っているメールのタイトルは「にぼしなう」。
僕の頭にはこんな画が思い浮かんでいた。
![$おもいでのヤンゴ-煮干し将軍](https://stat.ameba.jp/user_images/20120201/22/jango-of-memories/e4/6c/j/o0400040011768689493.jpg?caw=800)
煮干しを軍配代わりに使い、僕に鶏モモを買うよう命じるその姿は、まさに「煮干し将軍」。
やや混んでいる電車内にいた僕は思った。
「爆笑はマズい」
そう思ったので、プルプルしながら必死に笑いをこらえた。
さて、「にぼしなう」とはそもそも何をしている最中だというのか?
普通ならば、煮干しでダシをとっている事だと思うだろう。
が、たぶん違う。
息子歴20数年の僕の勘がそう言っている。
おそらく、煮干しをスナック代わりにボリボリ食べてる最中に違いない。
家に帰った僕は、鶏モモを渡すついでに母さんに聞いてみた。
「『にぼしなう』って何なのさ?」
「煮干し食べてたのよ」
「やっぱりかー!」
「何が“やっぱり”なのよ?」
悔しいけれど、僕は「にぼしなう」という語感がちょっと気に入っていた。
他の人にも言ってみたかったので、母さんからメールが来たことを姉や妹に話してみた。
「母さんから『にぼしなう』ってメールが来たけど、何してたと思う?」
「え?どうせ煮干しでも食べてたんじゃない?」
「お見事です」
さすが母さんの子ども。
やはりわかるか。
それから数日後、こんな事があった。
休日の朝、僕と姉が起きてリビングに行くと、母さんが煮干しを食べていた。
そしてそのまま母さんと同じテーブルに座ると、思いもしない行動をとった。
(上の画像はアニメーション画像です。
携帯の方は再生されないようですので、コチラから入って、リンク先のアドレスをクリックしてください。)
おそらく、僕と姉は心の声で同時にツッコんだことだろう。
「とらねえよ!」と。
煮干しが意外と高いのは知っているが、だからといって値段の分だけ人気があるというものでもあるまい。
そもそも、加工してこそベストであって、そのまま食べる事を想定してなど作られてないのだから。
にぼしをまるで人気のチョコレートと同じように扱う母さんに、正直イラッとした。
でも同時に、しれっとした顔でにぼしを隠す母の姿に面白さが込み上げてきた。
それからというもの、姉と僕は何かと「にぼしなう」という言葉を使うようになった。
最初は意味もなく言っていたが、一週間ほど経つと「人気がないのに人気があると思い込んでいる」という意味になった。
もう一週間も経つと、それがさらに煮詰まって「勘違い」の意味で使われるようになった。
「勘違い」という言葉は、日常的に使われる言葉。
その使い勝手の良さから、またたく間に妹や親父に知れ渡るようになった。
ずいぶんと流行ったので、母さんの耳に届くのに時間はかからなかった。
母さんは激情型の人なので、そのうち怒り出すだろうなと思っていた。
ところが、予想に反して気に入ったようで、母さんも「にぼしなう」を使うようになった。
ただ、母さんが使う時だけ「にぼ・しなう」といったように、イントネーションがおかしい。
まさかとは思うが、自分がメールに乗せて送った「にぼしなう」を忘れたり…
してないよね!?
昨年の暮れに「流行語はなでしこジャパンがとった」という話を家族でしていて、その中で「わが家の昨年の流行語は何だろうか?」という話の流れになった。
結果、2011年のわが家の流行語大賞は、満場一致で「にぼしなう」になった。
「にぼしなう」がわが家にもたらした社会的影響は大きく、例年に比べて、家族間のメール回数が倍近くにふくれ上がった。
ほとんどメールのやり取りをしない「親父⇔娘」間でもメールがあったそうだ。
共通のネタを得た事で、用事がなくてもメール送る事が増えたのが要因だと考えられる。
恐るべし「にぼしなう」。
恐るべし母さん。
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話にボリュームがあったので2話に分けました。
どちらも読んでいただいたという方
ありがとうございます。
母さんが後生大事に抱えていた煮干しのタッパーを、こっそり撮ってみました。
煮干しの頭ばっか!
煮干しはハラワタと頭を取るとえぐみのないだし汁が取れるのは知っていましたが、貧乏性の母さんが煮干しの頭を取っていたとは思いませんでした。
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