#031 うちの息子はお地蔵さん | おもいでのヤンゴ

#031 うちの息子はお地蔵さん

おもいでのヤンゴ

今回の思い出話は、ちょっと視点を変えて書きたいと思います。


#031 うちの息子はお地蔵さん


息子が小学校に入る前の話です。

うちの子は、友達から“ヤンゴ”ってあだ名で呼ばれている。
まぁ可愛らしいあだ名じゃない。
内気な性格なのは心配だけど、遊んでくれる友達もいるみたいだし、人付き合いが苦手って訳ではなさそうね。

でも、内気なのは外でだけの話。
うちの中じゃワガママ王子もいいところね。
妹には横柄な態度をとるし、外では絶対に出さないような大声で走りまわるし。
男の子っていうのは、そのくらいの方がいいのかしら。

わたし自身も男の子は初めてで、子育てに悩むことは多い。
息子のわけのわからない行動を見るたびに、どんどん自信をなくしてるような気がする。
同い年の男の子がどういった感じなのかは知らないけれど、何だかうちの子だけ変わってるような気もする。
それに加えて、最近、変な遊びをするようになった。


息子は今日も落ち着きがなく、わたしの回りをチョコチョコと走り回っている。
そんな兄のあとにくっつく妹。
そんな子供たちをつれた買い物帰りの道の途中、50m先には十字路があった。
息子はいきなり走り出し、その十字路を曲がって姿が見えなくなった。

やがてその十字路に着くと、曲がってすぐの道端に息子がちょこんと立っていた。
立っているといっても、目をつぶって、指で輪っかを作って、大仏さんみたな格好をして立っていた。

「何してるの?」
「…」

返事がないので、もう一回聞いてみた。
「何してるの?」
「…もう」
息子は地団駄を踏みながらこう言ってきた。
「声かけちゃダメなの。お地蔵さんなんだから、ボクだってわかっちゃダメなの。」

また変な遊びを始めた。
そう思って、置いていく事にした。
「お地蔵さん、先に行ってるわよ」

やがて息子が後ろから走ってきた。
飽きてくれたと思ったのもつかの間、わたしを通り越して、また先にある曲がり角に入って見えなくなった。

その曲がり角に着くと
案の定、さっきと同じ“お地蔵さん”の格好をした息子がそこにいた。

お地蔵さんに声をかけちゃいけないそうなので、今度は話かけずに通り過ぎて行くことにした。


やがて、お地蔵さんだった息子が後ろから走ってきた。
「お母さんお母さん、お地蔵さんを見たらあいさつしなきゃいけないんだよ」
どうやら、しゃべりかけちゃダメだけど、何かリアクションはしてほしいって事みたいね。
ややこしいルールだわ。
「あら、そうなの。」

そう言うと、息子はまた先へと走り出した。
今度は息子を追うように娘も後について行った。
そして次の曲がり角を曲がると、ちっちゃい兄妹地蔵が道端に立っていた。

いったい何がしたいのかしら。
息子の考えはわたしにはさっぱり分からない。

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適当にあしらおうと息子を見ると、何だか満足そうな顔で目をつぶっている。
走り回ったせいで息を切らしているのに、うれしそうな顔をしている。
まるで何かを待っているかのように。

その顔を見た時、何かがわかった気がした。
点と点がつながるってこういう感覚なのかもしれない。

息子の今までの不可解な行動は全て、わたしの気を引くためにやっていたこと。
それこそ試行錯誤して、毎回変わった事を考えては注意を引こうとしていたこと。
それがわかったら、なんだか重い肩の荷が下りた気がした。

変な事ばかりする動機が、こんなに単純な理由からだったなんて。

肩が軽くなったわたしは、息子に言ってやった。
「お地蔵さんはお菓子食べれないみたいだから、お母さんが先に家に帰って、代わりにお菓子食べちゃおっと」
「ダメ。ボクのお菓子なの」

息子をからかってやったら、何だかなくした自信を取り戻したような
そんな気がした。


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母が昔を懐かしんで話していた回想をもとにした話です。
ちなみに、妹は僕のマネをしていただけなので、お地蔵さんでもなんでもなかったそうです。