死者107人、負傷者555人の被害を出した昨年4月のJR福知山線脱線事故で、死亡した運転士=当時(23)=が事故前、車掌と指令所の会話を傍受できるよう、無線装置を操作していたことが、国土交通省航空・鉄道事故調査委員会(事故調)の調べで分かった。運転士は前の停車駅でオーバーランし、車掌に口裏合わせを依頼。事故調は、運転士がその後、車掌(43)と輸送指令との列車無線のやり取りに気を取られ、ブレーキ操作が遅れた可能性が高いとみている。
事故直前の運転士の行動が判明したのは初めて。事故調は事実経過の全容を盛り込んだ「事実調査に関する報告書」を20日公示。無理なダイヤ編成を組み、安全より、効率を優先したJR西日本の体質についても批判的に踏み込んだ内容となっている。
報告書によると、運転席の列車無線は、車掌が指令所と交信中に電源を入れると、その会話は聞けない仕組みとなっているが、運転席で規定外の操作をすると傍受可能になる。事故調は車掌報告を気に掛けた運転士が操作したとみている。この「裏技」は20代の運転士の約4割が知っていた。
事故前に停車した伊丹駅で約72メートルオーバーラン。運転士は車内電話で車掌に「まけてくれへんか」と過少申告を依頼したが、車掌は「だいぶと行ってるよ(かなり超過している)」とだけ返答。その後、直線区間で制限時速120キロを4~5キロ超えたころ、車掌は指令所にオーバーランの距離を「8メートル」と報告したが、この約40秒間、運転士は一切操作をしていなかった。運転士が自身のミスがどのように報告されているか無線を聞き入っていた可能性が高い。
また、運転士は右手袋を外した状態で、運転席から赤鉛筆が見つかったことも判明。事故調は、交信内容などをメモしようとしたか、マニュアルを確認しようとした疑いがあるという。
電車は現場カーブで理論上106キロで脱線するが、実際には時速116キロで進入、脱線した。
報告書は社内の議事録なども載せ、自動列車停止装置(ATS)の導入など安全対策をないがしろにしていた実態も浮き彫りにした。
事故調は来年2月、鉄道事故で初めて専門家を集めた意見聴取会を開き、来春をめどに最終報告書をまとめる。
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≪報告書案で新たに示された主な問題点≫
▽運行の経過
運転士は車掌と指令員が交信する間、カーブ進入のためのブレーキをかけなかった
▽乗務員の管理
運転士が過去に受けた再教育(日勤教育)は、精神論的な項目がほとんど
▽輸送指令
脱線事故が発生したときのマニュアルがない
▽ダイヤ
福知山線快速電車のダイヤに余裕がなく、遅れが運転士の心理的負担となる
▽会社の体制
事故の一歩手前の「ヒヤリハット」事例の報告を求めながら、報告すると責任を問う
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