ネット読書会 コラボ企画 『火宅の人』〜感想編〜 | Cinéma , Mon Amour.。.:*☆

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わたしの右脳は洋画で
左脳は邦画で出来ておりまする╰(*´︶`*)╯


作家 檀一雄(1912.2.3ー1976.1.2)


爽やかな笑顔を惜しみなく
振りまかれておりますが
今回ご紹介した『火宅の人』は
氏の体験を基にした私小説です

妻子がありながら
原田美枝子さん扮する女優と不倫関係に陥る
小説家だからそうなった経緯を上手く構築され
『あ、ナルホド、そういう理由ならしょーがないわね』
と、思わず頷きそうになるのだけれど、、、

でもわたしはいしだあゆみさん扮する妻と
同じ立場ですから、いかなる理由があろうとも
やはり桂と恵子を容認することは出来ないのです

いしださん扮するヨリコさんは先妻に先立たれ
やもめとなった一雄の元へ後妻にきた人です

生さぬ仲の男児を含む四人の子をなりふり構わず育て


そんな女性の鑑のような妻をないがしろにし
キャピキャピと甘える若い女と旅行と洒落込む旦那


しかも恵子(呼び捨てにする)は
ヨリコさんの現状を知っているんですよ

ま、この女はフツーの主婦にはなりたくないわと
ヨリコさんの前でしゃらっと言いのけたタマですから、
画面に向かって『ふん。主婦で悪かったなぁ』と
わたくし毒づいておりました

ヨリコさんがね、わたしより恵子さんが良いなら
『子供達の面倒、彼女にみてもらって下さい』って
仰るんです

それに対し一雄さんは
『そんなことは、、、むにゃむにゃ』とぬかしやがり

このセリフをチコちゃん風に

何で? 何でっ、二人して
  遊び呆けてる時間はあるのに
  子供のメンドーは見れないの、何で?

と、追い込んでやりたいわ

   
わたしは普通の主婦ですが ←根に持ってる
家業を手伝ってもおりますので
ぐだらぐだら自己分析してる暇などなく←激しい嫌味

さらに作家先生とは違い
単純な思考しか持ち合わせていないので←またまた嫌味

人が一生懸命家事やら育児やらはたまた仕事やらを
頑張ってんのに、その間夫は愛人と楽しんでいたことは
断じて許せない

それに尽きるんですよね

ですから二人の長々とした
「お別れプレイ」にも動かざるごと山の如し

風林火山なフィーリングで鑑賞しておりました

唯一溜飲が下がったシーンが
ヨリコさんが恵子のおデコを叩くシーンで

これは、先妻の子一郎が
父と愛人の愛の巣に押し入り
警察に捕まったシークエンスで
署に三人が一同に介してしまうんです

一度は目を逸らした恵子が、気を取り直し
ヨリコに『ご無沙汰してますぅ』と止せばいいのに
ちっちゃい『ぅ』をつけ挨拶をすると


それを受けヨリコ奥様


恵子のおデコを強くもなく弱くもなく
ちょうどいい塩梅に『ぺちっ』と叩くんです
(後方では一雄が硬直)


普通なら往復ビンタくらいかましたって
よさそうなものを、まるで子供のいたずらを
嗜めるかのように、おデコをぺちっとな

このくだりを見て、あ、ヨリコさんて
実は恵子を相手にしていなかったんじゃないかと
ふと思ったんですよね

これは、わたしたち夫婦の問題である
そう捉えられていたんでしょうか

ただ、恥ずかしながら原作を
読んでおりませんので  ← えっ?
あくまで映画を観た上での感想となります

今作の監督は深作欣二さん(1930.7.3ー2003.1.12)


子どもの頃に観た『キイ・ハンター』や
『傷だらけの天使』『必殺シリーズ』『影の軍団』
等の個性あふれる演出

映画では『仁義なき戦い』シリーズから
『柳生一族の陰謀』などの男祭りな作品群や
日本人のDNAを刺激した『蒲田行進曲』
実は何度も見返してる、遺作『バトル・ロワイヤル』に

『青春の門』『華の乱』といった文芸作品も
撮られておりますし、いつかレビューしたい
お気に入りの『忠臣蔵外伝四谷怪談』といった
変わり種もある、日本を代表する監督さんでした

しかし、英雄色を好むではないですが
深作さんもさん同様に色々おありだったようで
今作にご出演の松坂慶子さんとの噂があり

だからといって良いのかどうか
一雄とヨリコと恵子が物語の中心の筈なのに
映画のポスターは慶子さんがメインというね


別バージョンもありますけども、
やはり慶子さんが上という、that's贔屓の引き倒し


深作さんは脚本も勤められていて、
長編の原作を映画用にまとめられたのだと
思いますが

ヨリコを宗教に走らせ
恵子を妊娠堕胎させた上、二人から逃げ
松坂さん演じる葉子と逃避行


中でもわたしが一番不快だったのは
恵子との浮気小説をヨリコさんに口述筆記させたこと

これってあんまりな所業では
あーーりませんかっ ←チャーリーさん降臨しちゃった

こうやって書き連ねると一雄って鬼畜ですよ

なのに一雄が極悪に見えない(むしろ憎めない)のは


深作監督がさんに同期してると言いますか
同じカテゴリの男性だからではないでしょうか

角度を変えてみると
檀一雄という御仁は魅力ある方
だったのかもしれません


一雄を包丁で威嚇しながら



恵子に別れを告げられた一雄を
受け入れたヨリコさん

 
現実的な話をすれば
一雄がいなければ生活は成り立ちませんから
そこもあったのだと推察しますが、本当のところは
よく分かりませぬ

以前『死の棘』をレビューした際に
男性のフォロワー様から
『ジェーンさんこの手の話にはリキ入ってますね』
みたいなことを指摘されたんですけど

こういった『不倫』に陥る男女の心境が
わたしにはよく分からないものですから
下世話ですが、知りたくなるのだと思います

そして分からないなりに
こういう人たちがいることは理解しました

言えることは

夫婦として『魂の位置する場所』が同じなら
何があっても、添い遂げられるのでしょうし

位置が違ったら
そしてそれに気づいてしまったら
もしかしたら袂を別つことになるのかもしれません

長くなりましたが
役者さんについて、、、

太宰治に扮した岡田裕介さんが
子どもの頃好きでした


今は俳優ではなく株式会社東映の
代表取締役をされておりますが
(お父様が 東映社長だった岡田茂さんですから
インテリっぽい佇まいが好きでした

中原中也役の真田広之さんはほんの一瞬の
出番でしたが、その一瞬で血ぃ吐いて
『よごれちまった悲しみにぃー』の一節を唱え退場と
仕事キッチリ



一雄さんのお母様を演じた壇ふみさん


先にふみさんを知り、この良家の子女然とした
お嬢様が機能不全家庭でお育ちになられたことに
どビックリいたしました

そして今回子供を捨てたお祖母様役を
お受けになってね、、それも驚きでしたが
わたしが思うよりふみさんは『チチ』が
好きだったんでしょうか

親子のこともよく分かりませぬ

最後に主役の三人さんですが
わたし、一雄が憎めないとも申しましたが
それは取りもなおさず緒方さんの存在も
大きい気がします
何を演じても、あの笑顔に騙される


得難い笑顔の持ち主でいらっしゃいます

いしださんは 粗末ななりでもお美しく


母親であることを選択した 
そのブレのなさこそが、主婦の矜持
だって子らはまだこんなに小さいんですよ
母親百パーでも当たり前じゃないですか


そして 恵子こと原田美枝子さん
映画の冒頭の、セリフも辿々しいおぼこ娘から


段々と、オトナの女性に変貌を遂げる様はお見事


ある意味彼女も傷を負ったのかも、、、


*・゜゚・*:.。..。.:*・'・*:.。. .。.:*・゜゚・*


ネット読書会とのコラボということでしたが
原作を読む前に発信したことは
見逃して頂きたく存じます←自分に甘い

発信といえば
実は恵子のモデルとなった
舞台女優入江杏子さんも、事の顛末を書かれて
おりますし
沢木耕太郎さんが
ヨリコさんのモデルある檀ヨソ子さんを
取材した 『檀』
檀 (新潮文庫)檀 (新潮文庫)
562円
Amazon


こちらは是非読まなくては
そうしてヨソ子先輩の、ほんとの気持ちを
見せて頂きたいと思いますが


今はこちらを読んでいるジェーン、、、




女優荻野目慶子さんが
二人の映画監督について書かれた私小説で
そのうちのお一方が、今作の監督深作欣二氏です


『火宅の人』を観なければ
ここにダイブしようとは
思わなかったでしょう

そう考えると
縁とは不思議なものです