『砂の女』(日本・1964年) | Cinéma , Mon Amour.。.:*☆

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わたしの右脳は洋画で
左脳は邦画で出来ておりまする╰(*´︶`*)╯

 こんばんは


今宵ご紹介する映画は


『砂の女』




海辺の砂丘へ
昆虫採集にやって来た
男(岡田英次さん)が一人


教師である男は
この砂丘に生息する
新種の昆虫ハンミョウを捕獲し
図鑑に自分の名を載せることを思い描く


その日男は
最終のバスを逃してしまい
砂丘に住む部落民から、オラが村へ
泊まりなされと声をかけられる


申し出を受けた男が連れていかれた先は
砂丘の中の、窪地にある粗末な一軒家で
地上から縄梯子で降りねば ならなかった

そこには女(岸田今日子さん)が住んでいて


男は夕餉をご馳走になる


その夜のこと

女はスコップで
家の外廻りの砂掻きを始めた

そうして集めた砂は缶に入れ
地上にいる男たちが井戸水を汲むように
回収していく

その作業を
夜間ずっと続けるのだと言う

そうしないと砂で家が埋まるし
隣の家にも迷惑がかかるのだそうだ

一宿一飯の恩義に報いるため
手伝おうとする男に
『初日ですから手伝いは結構です』と
意味深な発言をする女

訝しげな表情を浮かべながら
『いやいや、僕は明日帰るから』と答える男。

翌朝、眠る女を起こさぬよう
家に帰ろうとした男は
地上へと繋がっていた縄梯子が
外されていることに気づく

実は男は、
人手不足のこの村の『砂掻き要員』として
囚われの身となってしまったのだ

そんなバナナとパニクった男は
此処から逃げようとするが


登ろうとする先から
砂の壁は崩れてしまい
地上に登ることは出来ない

なんのこれしきと脱出を試みる男に

『砂掻きをしないと
   配給を止められてしまいます』と女は諭す。

(そう、この部落は配給制なんです)

その言葉通り配給はなくなり、やがて水も尽き


観念した男は女との

同居生活を始めるのだが、、、


*・゜゚・*:.。..。.:*・'*:.。. .。.:*・゜゚・*


砂丘の中に在る
社会から孤立した部落

そこに住む
部落内でも最下層に位置する
一人暮らしの女(寡婦)と
彼女に充てがわれた東京から来た男



逃げ道を奪われ
女と一線を超えたからと言って


男が女に情を抱くわけもなく

彼女を騙し
一度は脱出に成功するも
砂にハマってしまってさぁ大変


またぞろ女の元へと送り返されます

それでも此処から抜け出す術を
探す男に

『東京はどんなところ?』と尋ねる女

『気になるなら君も東京へ出ろ
   何故そうしない?』と男は尋ね
 
『だって此処がわたしの家だから、、
    貴方だって自分の家に帰りたいから
    脱出したいんでしょ?』と女は返します

そして男は
砂掻きが一生の仕事だという
女が信じられず

しかし女からすれば、
教師も砂掻きもどちらも
生きるための仕事であることに変わりなく

理詰めのインテリ男と

言葉少なな無学な女の生き方の

何処に違いがあるというのか?  

作者安部公房からの問いかけに
どのように答えれば良いのやら
わたくし返答に窮しました

なんとなくなんですけど

『砂の女』の視聴後感は
黒澤明監督の『羅生門』と
カブるものがあったんですよね

つまり

人間という生き物は
生まれや育ち、学の有る無しに関わらず
一皮剥けば皆、性根は同じだというところがです

何もなければ前面に建前を押し出し
善き人でいることは出来ても

アナタ、ハンニンだと疑われてますよ

アナタ、ココから抜け出す事は出来ませんよ

といった不測の事態に見舞われれば
誰だって自分可愛さに嘘もつくし
助かるためには人を犠牲にしても
構わないといった

人間の深層心理を安部公房
観る側に突きつけてくるわけですよ

それは

今も昔も

洋の東西を問わず変わらない

人間の普遍的な姿であることから


『羅生門』も『砂の女』も
海外から高評価を受けているのだと
思われます

それにしても
安部公房という作家は人が悪い

昆虫を捕まえようとして
自らが捕まってしまった男という設定からして
そうですし


家の中にまで砂が降りかかってくるからと
裸で女を眠らせるというハニトラっぽさも


ほうら『砂掻き』のご褒美だよーんてな感じで

やるな公房と、呼び捨て御免

監督は勅使河原宏さん
脚本は原作者の安部公房さんが
書いておられます

だからでしょうか
主役二人の会話が
まるでスタバで隣り合わせになった
カポーのそれみたいに自然で

今から54年も前の映画なのに
そこがすごく不思議でした

まぁ、この作品の存在自体が
不思議ですから、宜なるかな、、、

タイトルロールの『砂の女』

その人を演じた岸田今日子さんからして
ちょっと人離れしてますもんね



剥き卵みたいにツルッとした肌に
まとわり付く砂がエロティックです



原作と映画

どちらが優れているか?につきましては
色々な意見があると存じますが

『砂』をわかりやすく五感で
体感するならば、映画に軍配が
挙がるでしょうか

誰しもあの、
ザラザラっとした『砂』が
目や口、髪の中まで入ってくる
不快な経験はあるでしょう


最終的に男が女の家から

脱出出来たかどうかは伏せますが


ラストの一瞬は


武満徹さんの音楽と相まって


背筋がゾワワッとなること


ジェーン・ドウが請合い申し候、、、