『橋のない川』〜人の世に熱あれ、人間に光りあれ〜 | Cinéma , Mon Amour.。.:*☆

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わたしの右脳は洋画で
左脳は邦画で出来ておりまする╰(*´︶`*)╯

こんばんは


今宵ご紹介する映画は

『橋のない川』(日本・1969年)



明治末年、小森村

此処に住む
小学生の畑中誠太郎(高宮克弥さん)と
孝ニ(大川淳さん)兄弟の父は
日露戦争で御国のために命を捧げ

残された二人は
祖母ぬい(北林谷栄さん)と
母ふで(長山藍子さん)の四人で
暮らしておりましたが


畑中一家をはじめ
小森村住民の生活は
貧しいの一言に尽きました

何故なら此処小森は
被差別部落だったからです

耕す田畑は痩せ細り

村人たちは
草履作りのその日暮らし

誠太郎と孝二ら
小森出身の子供は

同級生から、また、教師から
被差別部落出身というだけで
理不尽な差別を受け続け、それでも

二人が腐ることなく
成長出来たのは、気骨ある祖母と
優しい母から受けた愛情に他ならず
逞しく育ちます

尋常小学校を卒業した誠太郎は
ひと旗あげると大阪へ丁稚奉公に出て行き

残った孝ニが小学校六年生に進級した
ある日、村が火事になります

しかし在所の消防団からは
小森村だから火消しに行くことはないと
無視をされ被害は拡大。

火事を起こした人物は
孝ニの友人の武(梶尾一郎さん)でした

彼は空腹の弟のため、
ご飯を作ろうとして火事を起こしまって

そしてその夜
良心の呵責に堪え兼ね
武は自殺してしまうのです

武の父藤作(伊藤雄之助さん)は
息子の亡骸を腕に抱き
この村に消防ポンプを買うのだと決意し

やがて藤作の努力で
村に消防ポンプが設置されます

その後、行われた
村対抗『提灯落し競争』で
見事優勝を果たした小森村

喜びに沸く村民たちでしたが
それを良しとしない
在所の人間の手で優勝旗は
焼かれてしまいました

それを見ていた孝ニは
人が人を差別することへの怒りを新たにし


この時宿った忸怩たる思いを動力源に
後に彼は『全国水平社』の創立します


これは

日本で最初の

人権宣言となるのでした


*・゜゚・*:.。..。.:*・'・*:.。. .。.:*・゜゚・*


住井すゑさんによる原作は


第8部までありますが著者死去に伴い
未完のままです

こちらと
石森延男さんの『コタンの口笛』と
それからパール・S・パック女史の『大地』

この三作をわたくし
小学生の頃に読んでおりまして
三作とも今だに忘れられない作品です


被差別部落問題を扱った
今作から受けた感想を申すなら


このような
謂れなき差別問題を
子孫に吹聴し続けた
大人が悪い、、、となるでしょうか

孝ニたちが通う小学校の教師も
世間話をする感覚で

『小森の子供は
   助けてやっても手を噛んでくる』

と言った
差別を拡散するような発言を
平気でするんですよ

聞いた子供は、

『それどう言う意味?』となるわけで

ですから

こういった大人による
子供へのインプリンティングこそ
差別がなくならない要因の一つ
ではないかと感じました


タイトルの『橋のない川』から
想像出来るように、被差別部落地域の
インフラは劣悪です

しかし

人の心の醜さとは裏腹に
陽光は誰に対しても平等に降り注ぐのです



重いテーマを持つ作品ですが 


如何なる境遇に身を置こうとも
そこから這い出してくる人間の強さを
謳った作品でもあります


役者さんたちも
ばーちゃん役といったらこの人の
北林谷栄さんに始まって



泣き叫ぶ父親を演じた
伊藤雄之助さんに我が身を詰まされ


子役の皆さんも
感情が表れていてとても良かった



監督の今井正さんは
幾多の映画賞をお獲りになった
名監督であらせられます