午後の遺言状(日本・1995年) | Cinéma , Mon Amour.。.:*☆

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わたしの右脳は洋画で
左脳は邦画で出来ておりまする╰(*´︶`*)╯

こんばんは

今宵ご紹介する映画は


『午後の遺言状』


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大女優、森本蓉子(杉村春子さん)は毎夏
蓼科高原にある別荘へと避暑にやって来ます

迎えるのは、長きに渡り別荘を管理する
ジモティの豊子(乙羽信子さん)で
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豊子はひとり娘の
あけみ(瀬尾智美さん)と二人暮らし
蓉子も小さい頃から知っているあけみを
我が子のように可愛がっておりました

変わりはないかと尋ねる蓉子に豊子は
庭師の六兵衛が自殺したことを伝えます
不動産屋の広告用紙の裏に『もうこれまで』と
短い遺書を記し、その傍らには
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棺桶に釘を打つため
川べりから拾った石ひとつ、、

その石に惹かれた蓉子は
同じような石を手に入れ
自分が死んだら六兵衛と同じように
この石で自らの棺桶に
釘を打つよう豊子に命じますが
鼻先で笑う豊子、、、

そう、この二人
主従関係にありながら
対等であるというね、マッチポンプ

そんな2人の前に突然現れた 牛国夫妻
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夫人の登美江(朝霧鏡子さん)は
蓉子の女優仲間で
蓉子を姉のように慕っておりましたが
今は痴呆症を患っていて
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登美江の夫、藤八郎(観世栄夫)は
蓉子に会えば、妻の意識がクリアになるのではないか
との期待を胸に、別荘へ訪ねて来たのでした

変わり果てた登美江の姿に困惑する蓉子

避暑に来たはずが落ち着く事も出来ず
それに輪をかけ、今度は拳銃を所持した
逃亡犯が現れたからさあ大変
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『ババア、水をくれ、むすびを作れ!』
拳銃を突きつけながら要求する犯人に
『ババアと呼ばないで』と抵抗する蓉子

それに対し
『どっからどうみてもババアだろ』と
一歩も譲らない犯人

そんな犯人に立ち向かって行ったのは登美江でした
怯んだ犯人は追って来た警官(永島敏行さん)に捕まり
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蓉子の計らいで登美江は地元警察から
表彰されることになります
それが刺激となって痴呆が緩和されればと願う
蓉子たちでしたが、そうはいかの天ぷら
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警察署長(上田耕一さん)にキスする登美江に
一同大慌て、、、
登美江の症状に、改善がみられないと観念し
牛国夫妻は故郷へ帰ると言って別荘を去って行きました

後に残された蓉子と豊子

おもむろにタバコに火をつける豊子
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『肺がんになるからヤメナサイ』と嗜める蓉子に

『あけみが結婚するだ、、、
   あの娘の父親は森本三郎だ』と
方言丸出しで、突如カミングアウトする豊子

森本三郎とは蓉子の死んだ亭主で
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(見ての通り、演者は津川雅彦さん)

『貴女、わたしの夫と姦通したの?』と
なじる蓉子に
『私たちは真剣に愛しあってただ
   貴女は芝居に夢中で、
   放って置かれた彼は寂しかっただよ』
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と悪びれる様子のない豊子

言いたいことは山ほどありながらも
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蓉子は気持ちを切り替え
亡き夫の忘れ形見であり
可愛がっていたあけみの婚礼に
自分も参列させろと豊子にねじ込みます

イヤイヤながら許諾した豊子と蓉子の前で
古式ゆかしき『足入れの儀式』に挑むあけみ
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雇い主と雇われ人の関係から
本妻と愛人の関係に変化した蓉子と豊子
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包丁が、キラリと光る中
牛国夫妻、逃亡犯に続く第三の訪問者
ルポライターの矢沢(倍賞美津子さん)が颯爽と登場
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しかし
矢沢が携えて来た知らせは
蓉子と豊子を打ちのめす破壊力でした、、、


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『午後の遺言状』は
人が、自らの『老い』と
向かい合う姿を滑稽に
それでいて、真摯に描いています

監督・脚本は2012年に
満100歳で大往生を遂げた新藤兼人さん

日本の演劇界に
大いなる足跡を残した
杉村春子さんを主役に迎えて
その杉村さんを『ババア呼ばわり』は
新藤監督にしか出来ない荒技ですが
杉村春子先生怒らへんかと
観てるこちらはドッキドキ

先生は、籠りがちな声にもかかわらず
クリアーに聞こえる台詞回しは流石としか
言いようがありませぬ

先生の前では、あの津川雅彦さんが
坊やに見えるくらい、そんくらいの存在感です

そして新藤監督の奥様でもある乙羽信子さん

乙羽信子さんと言えば真っ先に
このヘアスタイルが思い浮かぶジェーン
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タイトルは失念しましたが昔観たドラマで
乙羽さんが若い男と懇ろになるシーンが
とっても生々しくって今でも忘れられないんです

この方不思議なんですよね

良家の上品な奥様然としながら
その反面崩れた感があって
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言い方は悪いですけれど
『ヤラシイ』んです  ← 褒めてますから


初老にも関わらず
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色気と言いますか、魔性を感じるんですよね

妻子がいた新藤監督とは『忍ぶ恋』だった乙羽さん

ただ、ウィキペディアに
『忍ぶ恋』とわざわざ記されるあたり
逆に『忍びきれない恋』であったんだなと
ジェーンは感じておりますが。

乙羽さんはこの頃
ガンを患っていらしたとかで
夫の新藤監督も、乙羽さんご自身も
今作が最後の作品となることは
覚悟してらしたようです

ちなみに杉村春子さんの
最後の映画主演作でもあります

それにしても
新藤兼人監督が持つ
飽くなき『生と性』への執着には
只々頭が下がり候

あの怪作
『ふくろう』を
お撮りになったのが
92歳だってんですから


人間は死ぬまで
枯れちゃダメだってことですな



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