今宵は、今月13日に93歳で
お亡くなりになった鈴木清順監督の
『肉体の門』のご紹介です
空腹を抱え、此処にやって来た
18歳のマヤ(野川由美子さん)は
食っていくため『小政のせん』(河西郁子さん)率いる
売春婦軍団の仲間入りをします
せんたちは廃墟を根城とし
客引きを持たず
客と直接交渉で商売をしており
『タダで男と寝るな』
『男を愛するな』
『縄張りを荒らす奴は容赦するな』
『それを破った者は私刑にする』
といった厳しい掟の下
鉄壁のチームワークを誇り
この界隈でブイブイと言わせておりました
『ジープのお美代』(松尾嘉代さん)
『ふうてんお六』(石井富子さん)
渾名を持たない町子姉さん
(富永美沙子さん)は
女の幸せは結婚にあると、
信じて疑わない戦争未亡人で
マヤたちとは一線を画します
彼女たちは
戦に勝てなかった日本の男たちを恨み
日本の女を買う、GIを恨み
普通に誰かの奥さんである同性を恨み
自分たちを蔑みの目で見る人間を恨み
木や森や山や海を恨み
『お偉いさん』を恨み
そして、日本という国自体を恨み
そういった
恨みだけを道連れに
今日も街角に立つ彼女たちの
前に現れたのが
元軍人の伊吹(宍戸錠さん)
MPに追われ、怪我をして
まやたちの寝ぐらに逃げ込んできたのです
手負いながらも、
男らしく逞しい伊吹は
瞬く間にオンナたちを虜にし、
もはや廃墟はハーレム状態
この、伊吹という男の存在が
あれほど鉄壁を誇ったマヤたちチームに
不協和音を生じさせるとは露知らず
クライマックスへ向けて
カウントダウンが始まるのです
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原作は1947年に出版された
田村泰次郎氏の同名小説ですが
鈴木清順風味の『肉体の門』に
登場する(動く)オンナたちは
原作に登場する(紙面の)オンナたちより
考え方がシンプルな分、生に対して貪欲で
そこら辺が実写では活きていたと思います
何よりも今作が映画デビューとなる
野川由美子さんがものっそ綺麗でした
そこから仲間に『ボルネオのマヤ』と
呼ばれるようになった、マヤを演じた野川さん
当時はまだ10代だったようですが
なんという峻烈な色香でしょうか
『腹を括った女』の潔さを
野川さんから感じましたが
それは野川さんにそこまでさせた
鈴木清順監督の手腕とも言えるわけです
野川さん以外の女優さん方についても
原爆投下からかろうじて逃げだした
せんの闘争心を表す 赤 を支配した川西郁子さん
お色気ムンムン マダムンムンを予感させる
松尾嘉代さんは紫
ツライ境遇も笑い飛ばす石井富子さんには
御誂え向きの 黄色
(石井さんたら、大沢家政婦紹介所の前は
こういった職歴だったのね、、、)
なれなかったマヤには緑
極彩色を勝負服に
『肉体の門』を開き続ける
オンナたちに注がれる
清順監督の視線はとっても優しいのです
その分、男に対しての素っ気なさも
また清順監督らしくって
その象徴が、マヤを助けようとして
マヤを抱いてしまうアメリカ人牧師
(チコ・ローランド)の一件で
アレはかなりシビアでしたねぇ
戦後の、あの時代を生き抜くために
彼女たちは『売春』という道を選んだ
その選択を『悪し様』に言うことは容易い
しかし、だからと言って
彼女たちを蔑む権利が誰にあるだろうか?
需要があるから供給がある
それを忘れてはいけない
『売春』を生業とした彼女たちが
『愛』を知った時
『愛』を求めた時
どんな答えが出るのか
わたしには分からない
マヤは言う
『わたしは脱落者だけれど
脱落者の幸せを噛み締めていきたい』と、、、
反対にせんならこう言うだろう
『綺麗事言って、おマンマが食えるかいっ!』
よってその答えは
それぞれの心の中にある
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監督を囲んで
鈴木清順監督へ、、、
たくさんの
味わい深き作品をご披露頂き
ありがとうございました
貴方様の
そのセンス
そのオリジナリティー
『ほへっ?』ってな感じのものも
あるにはありましたが
ジェーンは忘れません
あちらにつかれましたなら
松田優作様
原田芳雄様
山田康夫様に
よろしくお伝えくださいませ