今宵ご紹介する映画は『私は告白する』
男が女の口を塞ぐこのボスター
本編を観たものからすると
ミスリードやん、と反論したくなるけれど
実はそうでもないって納得させちゃうところが
アルフレッド・ヒッチコック監督
既に映画の冒頭から
犯人は判明してるんです
それは教会で働く、ドイツからの亡命者ケラー
(O・E・ハッセ)で、生活苦のため
ローガン神父(モンゴメリー・クリフト)に
懺悔するんですね
~聖職者は、信徒の告白を他言してはならない~
という縛りによって、
警察にも、先輩ファーザーにも
ケラーが犯人とは告発出来ない
神父の苦悩に萌えるジェーン
おそらくラストは
ケラーが自らの罪を
悔い改めて終わるんやろなと思うでしょ?
わたしも思いましたね
だがしかし
翌日ヴィレットの死体が発見されました
担当のラルー警視(カール・マルデン)も
犯行現場のヴィレット邸にいます
その警視の目に留まった人物は
野次馬の中のローガン神父と
神父に近寄り、縋る仕草の女性
ルース(アン・バクスター)
法衣姿の聖職者が、金髪の綺麗な女性と
親密な様子は警視ならずとも
観る側のわたしたちも
この2人、何かあるんちゃうかと
邪推しますね、しますよね?
さらにこの時のルースのセリフが
『ヴィレットが殺されたなら
わたしたち、もう心配は要らないわね』と。
警視には聞こえてませんが
こちらはハッキリと聞こえてますから
ありゃりゃりゃのりゃーー
まぁね、聖職者って案外 ムニャムニャ
も少しだけネタをご提供すると
この二人、戦前恋人同士だったんです
恋人ローガンを待ちきれず
彼女は国会議員と結婚
その後ローガンは復員
それを知り、出迎えたルース
2人で積もる話をするうちに
嵐に巻き込まれ、一晩雨をしのいだ四阿の
持ち主こそがヴィレットであり
『これはこれはグランフォート夫人、ニヤリ』とな
ルースが結婚していたことを
この時初めて知ったローガンは唖然
これが原因で神父になったような気がしますが
ヴィレットは名士である
ルースの夫の知人で
結婚式にも招待された人物
夫以外の男性と居るところを
目撃されるというね、失態を犯し
さらにヴィレットは評判のよろしくない
類の弁護士だから、皆さんもうお分かりでしょう
この後、ブラックメイラーとなるわけです
それをローガンに相談するため
殺人のあった夜、二人は会っており
さらにはヴィレット殺害時、
何故かケラーは法衣を身に纏っていて
そして二人組の少女が
ベビーシッター帰りに
ヴィレット宅から法衣姿の男性を目撃し
あれは神父さんに違いないと
証言したではありませんか
時間は犯行時刻と一致しており
殺人の会った夜、
アリバイのない神父はただ一人
ルースと密会していたローガンです
彼はこれにより
一躍容疑者のトップリストに
踊り出てしまったのです
主役のモンゴメリー・クリフトです
こういった甘めのお顔立ちですから
メロドラマ系がお似合いで
実生活でも恋人だったリズ・テイラーとも
幾度か共演していて
ただ、顔が云々以前に実力ある役者さんでした
こう……影があって、余韻の残る演じ方の
出来る方ではあったんですけど、持病があって
さらに顔を大怪我したりと不運に見舞われ
45歳の若さでこの世を去ってます
書いてて悲しくなってきた……
お相手役のアン・バクスターは
言わずと知れた『イヴの総て』のアンさんよ
フランク・ロイド・ライトでいらしたとは!
裕福なおうちのお嬢様らしい
押しの強さ、とでも申しましょうか
今回もトラブルメーカー的な役です
特に旦那様に対して
『初めから貴方を
愛してなんかいなかったわ』と
言い切るあたり、、思わずスゲーって言っちゃったよ
それからローガン神父を助けるために
警察で証言するシーンがあって
付き添った夫の前で『ローガンを愛してます』
と、笑顔でシレッと言っちゃうんですから……
役柄のせいで
苦手なタイプではあるけれど
女優としての肝の座り方は
エライなとも思います
も一人、ラルー警視役のカール・マルデン
このお鼻に見覚えのあるお方も
たくさんいらっしゃることでしょう
謎が解けた時の警視の顔ったら!
犯人ケラーと、その妻の苦悩も
説得力を持って描かれていて
当時の時代背景をも
考えさせられる仕上がりで
ヒッチ作品群の中で、評判は
それほど高くないかもしれませんが
ラスト30分は目の離せない展開は
なかなかやと思います
お約束のヒッチカメオもほれ、このとーーり