前書き

昨日は……メンテナンスだっけ? まあ更新できなかったおかげで今日は書かずにすんだっ!!
いやぁ、ありがたいありがたい。見直す時間ができたし。
……見直さなかったけれども。

―――

あれは……中魅なんだろうか?
見たことある背中を確認して少し疑問に思う。外見からすれば中魅だ、ただ一つだけ昨日と違う点があるのだ。
勿論それはオレが中魅かどうかそれを疑うほど禍々しいというか異様なオーラを放っていた。

「たぶん正解」
「たぶんって何だよ。その前に気づかないように近寄ってくるのはやめてくれ」

挨拶は面倒だし今更なのでやめ突っ込みを入れる。
勿論声の主は神立だ。

「趣味、人の趣味に口出しはいけない」
「オマエの趣味は心臓に悪い。いや、それを趣味にしているんだろうけども」
「……声かけるの?」

話を逸らしたよコイツ。
まあ声をかけてみようとはオレも思ったので中魅のほうに歩いていく。
その異様なものはやはり重量感ある音を出していた。周りの連中は学園祭に使うものだろうとでも思っているのか不気味がって見てない。
わかるのはオレのクラスの連中だけだろう。オレ達のクラスは日本刀なんてものは使わないのだ。

「中魅、おはよう」
「ん? ああ、おはよう」

オレの後ろに居る神立にも挨拶をする中魅。
そのたびに音を鳴らす日本刀が目立つ。

……オレはこんな事のために日本刀渡したんじゃないんだが……物凄く気になる。

「いきなりだがその目立つものは何だ?」
「お前が昨日くれたものだ。大事に扱っているぞ」

それは良いけど出来るだけ目立たないように持ってくれ。
伝わらないだろうがぼかしつつそれを言いつつ学校の敷地内に入る。そこから話も途切れ下駄箱で靴を履き替えると教室へ向かう。

「中魅……それ何処かに置いておいたりしないのか?」
「盗まれたらダメだろう?」
「まあ、そうだけど……」

やはり目立つ日本刀。さすがにオレのクラスメイトの数も増えてきてソイツ等が驚いているのを見て周りも気づき始めた。
元々美人ってことで噂の中魅だし噂は拡大する一方だろう。

中魅もそれを覚悟してるだろう、ということも考慮しオレは特に騒がず教室に入る。
やはりというべきかここには大山が居るのだ。情報は素早く伝えられている。誰かが息を呑む音が聞こえてきた。
そこまで緊張するか?

オレはリラックスして席に座る。
周りがオレの分まで緊張してくれている感じだからオレまで一緒になる必要は無いだろう。オレもここで始めてみていたのなら緊張していたかも知れないが。
色々用具を仕舞っていると急に竹刀袋に入っている日本刀を取り出す中魅。今なら大山の気持ちがわかる。
中魅はコレを使って気に入らないヤツを殺し始めるんじゃないか? という緊張。この近距離だ。オレだって案外一撃で死ぬかも知れない。

しかし中魅がやったのは鞘を抜き刀身を磨く行為。

ふぅ、と溜息が漏れる。

誰かさんと重なったのか大山は教室の隅で震えている……が、神立だけが平気そうな顔で本を手にとって読んでいた。
内容はある程度までなら認知できるものなので放置しておく。事実的に危ないのは日本刀なのだ。
まあ友達の一人が正常じゃないってのも事実的に危ないのだがまずは目の前の物から対処していこう。せっかく周りから助けてくれっ!! といった感じの眼差しで見られていることだし。

「あー、中魅。オマエ日本刀なんて人の居るところで取り出したら危ないだろうが」
「……はぁ(息を刀身に吹きかける音)」

……自分の世界に入ってないか!?

どうやって連れ戻すか……。肩に手を乗せるという行為はかなりの確立で死亡フラグを立てそうなのでやめておくとして他に何があるだろうか?
先生が教室に入ってきて一声かける? ダメだ、先生の声で戻るぐらいならオレの声で目覚めているはず。
となると放っておくという選択肢が浮かび上がってくるわけだがこのままの中魅でも十分危険だ。

「死ぬ覚悟でいけ、という事か」

オレの右手を中魅の肩に向かわせる。
勿論後ろから向かっている。そうじゃなければ危ない。真正面からズターとやられるのはイヤだ。

そしてオレの手が中魅の肩に触れる瞬間――何処からともなく飛んできた消しゴムが中魅の頭に直撃する。

「あたっ!!」
「って、危ないっ!!」

急いで身を引く。腕が切断されるぅ!!

後ろに倒れた中魅の顔を見る。
何やら憤った様子だ。

「黒斗……何も殴る事は無いんじゃないのか?」
「いや、殴ってないぞ。それよりもオマエ、自分の世界に浸るのは良いが人の居るところで日本刀は取り出すな。危ないだろうが」
「あ、それは……すまん。しかし殴ってないとなると誰が……」

何処からオレも飛んできたかわからないが自然と周りのクラスメイトが視線を向ける先をたどりその消しゴムを投げた人を見つける。
うん、神立だった。アイツならやりそうなことだな。

「神立、投げるなら投げると言えよ」
「それじゃあイタズラじゃない」
「うん、まあそうだな。黒斗落ち着け」
「落ち着くのはオマエだ!! 何で今の説明で納得した!?」

周り見る。
何故か納得した表情のクラスメイト達。アレ? オレがおかしいのか?
いやいや、そんなことは無いと思うが不安なので話題を変えよう。

オレの席に戻り中魅の方を見る。足音が無かったから気づかなかったが神立も近くに来ていた。
大山も顔が青いが居る。

「そういえば騒ぎを止める団体の件どうなってるんだろうな」
「通称STDだな」

何でも略せば良いってものじゃないぞ大山。
しかしそう呼ばせてもらおう。

「大山何か知ってるか?」
「そういや学級委員から説明無かったな。アレは生徒会側から指名が来るようになってるんだぞ」
「ほお、なるほど。大山とか嫌味で入れられそうだな」
「お前も同じだろ?」

オレは生徒会長の秘密など握ってはいないぞ。
三桁の計算が出来ないって事以外は。アレ? 暗算だっけな?
まあどっちでも恥ずかしいから良いだろ。

ちょうど会話は生徒会の話に移ろうとしていた時校内放送の合図が鳴る。
何かイヤな予感がするぞ。コレで三度目だ。

『えー、説明が行き渡っていると思いますが先日集会で学園祭のことを話しました。それには一般人も来ます。お酒を出す店もあるでしょう。そこで風紀委員含め全クラスから強い人、話し合いがうまい人でも集めようと思います。この学校伝統なので覚えておくように』

いつに無く適当だな生徒会長。まあ緊張してないってところは素直に褒めれるところだが。
呆れつつ続きを聞くことにする。

『それで、今回より新制度が儲けられました。まあ各クラスで決まった持ち場とこの役割の両立ですね。一クラスの人数が多ければ良いんですけど。まあ四人も一気に抜けたら機能しなくなるところもあるでしょうし』

強制指名なのか!!
まあそれも伝統なのだろうな。だってクラスメイトとの思い出が一つ無くなることになるのだから。
でも今回は必要無い気がする。両立させるのだったら思い出も作れるし治安も守れるし。

ここでオレは校内が静かなことに気づく。おかげで放送が聞こえてくるスピーカーから紙をめくる音が聞こえてきたぐらいだ。

『では発表します』

三年から発表されていくようで知らない名前が続々出てくる。
ただ学校内で怖がられている不良共の名前は誰も出てこなかった。不用意に権限を渡さないためだろう。
しっかりしてるなぁ、とか思いつつ次はオレのクラスか、と気を引き締める。ここでイヤな予感を打ち消せれば良いんだが……やはりイヤな予感しかしない。
まあ最低限に抑えるため『もしかしてオレが選ばれることは無いよな?』というのは思わないで置く。

『次のクラスは。ああ、ココね。即決したところ』

オレのイヤな予感を増長させないでくれ!!
頼むからっ!!

手を合わせて祈る隣の友人に習いオレも手を合わせる。
きっと大山が二人分担ってくれるに決まっている!! きっとそうさ。
大山は頼りがいがあるからな!

『大山通君、そして白神黒斗君。んじゃ女子行くよ』

……………………心の準備は出来ていたさ。

「大山、屋上に行って一緒にに叫ばないか?」
「おうよ。でも先に生徒会室に行こうぜ」

なるほど、抗議するだけしてみるってことか。意図的に相手の迷惑なことをやるなんてさすがだぜ。
という訳で生徒会室に向かう……途中で気づいたんだが生徒会長は放送室に今居るんじゃないか?

「大山、進路変更だ。放送室だ。放送室に向かうんだ」
「いや、それはトラップだぜ。生徒会室からでも校内全体に放送できるように配線されてるんだ。防音効果もバッチリらしい」

……ん? 待てよ。
それじゃあ常日ごろから廊下で遊戯格闘部と称して生徒会を音で悩ませている千里先輩はどれだけでかい音で殴りあい……じゃなくて戦闘してるんだ。
何かもう殴り合いでも戦闘でもどっちでも良いけど。

と、いうわけで生徒会室の前に着いた。
扉の前には誰も居なかった。まあ両立できるってのなら不満がある人はでないだろう。
明らかに嫌がらせな意図的で選ばれたオレ達以外は……だが。

「扉に鍵が掛かってるぞっ!!」
「殴れば良いだろ!」
「なるほど」

頭良いな。っていうか壊して良いのか?
始末書とか書かされない? まあそれを書いてでもやるだけの価値はある!!

拳を硬く握り扉を見る。
防音効果の扉は度々殴ったことがあるが耐久度的に言えば少し破壊しにくいぐらいだ。
まあ本気で殴れば良いだろう。

勢いを付け扉に殴りかかる。

と、同時に扉が開き生徒会長を先頭に生徒会の役員が出てくる。

「あ、ぶ、なぁぁぁぁぁぁ」

拳を戻せなかったので体ごと体当たりすることにする。

「へ? あ、うごっ!!」
『ちょ、かいちょー。やっぱり恨まれてたよー』
『この二人は危険、わかってたはずなのに、ね?』

他にも声は出ていたがもう聞こえなかった。生徒会長にすでにぶつかっていたから。
後ろの役員も巻き添えにして倒れこむ。

「こ、これぞ男の生き様っ!! まあしょうがない。保険の先生を呼んで来てやろう」
「いつつ……。待て大山っ!! カムバァァァァック!!」

オレの叫びは届かなかったようだ。
十分聞こえる距離だったろう? なあ大山。

それぞれの役員達、ダメージの少ない者から立ち上がる。
最後に生徒会長も立ち上がり頬をさすりつつ立ち上がる。今日は珍しく眼鏡などしていた。

「まず、殴ったことを謝りなさい」
「ごめんなさい。じゃあ次は生徒会が謝る番だな」
「……毎年こうなんだって。まあ今回から無いと思われてたんだけどねぇ? ね?」
『いや、かいちょー。完全に意図的に二人選んでましたし。謝った方が良いでしょ』
「バラしちゃダメでしょうがぁぁぁぁ!!」
「信頼できない部下だな。まあありがたい。謝れ」
「……イヤ」

チラリとさっきのオレを弁護してくれた男を見る。

「謝りましょうよー。この人秘密知ってる一人――」
「謝る。ごめんなさい。はいっ、この件おしまいっ!!」

そんなに秘密っての強力なのか……。でも、まあオレが知ってるのはダミーなんだが。
ちょっと変わった人達だなぁ、なんて思いつつオレもクラスに帰ろうと背を向ける。

『怪我人って何処かなぁー。あっはっは、エロちっくな保険医様が診断してやるにょーん』
「あの生徒会長です」
『了解ー!!』

その後の光景は……悲惨だった。
しかし大山。すごく良い笑顔だな、それ。




























大山は生徒会長をいじるのが好き。豆知識ねー。
睡魔が断続的に襲い掛かってくるのでおやすみです。
今日は色々忙しかった……いや、それをブログネタにすれば良いのか?

今日は寝るので無理でしょうけどねぇ。
前書き

描写の難しさといったら……。
得意、とか言ってる人がいたら人体をさかさまにして攻撃している様を是非とも攻撃している人間視点で書いて欲しい。

―――

黄昏時。カッコよくそう呼んでみたが言ってみれば夕方だ。
部活も休みで確かこの時間は部活での出し物の作成だったと思う。勿論オレは何もやってないのでそのまま帰るか少しだけ作業をして帰るつもりだったのだが秋城先生に呼び止められてしまった。
本当に体育館には秋城先生とオレ以外の人間が……いるけども。神立のせいだろうけども暇人が何人か観戦に来ているけども占領して使っているヤツは居なかった。
もう来てしまったし断れない。秋城先生は一応怖い先生だからなぁ。まあ目立つことしなきゃ怒られないけれども。
その点で言えばオレは救われてるなぁ。大山なんてげっそりだが……それなら観戦に来るな。

「先生、防具は……」
「お前の武器は拳だろう? ならばわたしの武器は刀、お互いに防具などいらない」

そう言って取り出したのは本物だ。
本気で戦おう、という意味だろう。一応病み上がりってことなので全力は避けたいところだが手加減したらしたで首が飛ぶ可能性もあるのでダメだ。
生徒相手にこんなことしているのが見つかったら秋城先生はクビ決定だが、まあその時にはオレが全力で手を回してやろう。

「一つ賭けをしないか」

秋城先生から提案があがる。男友達同士だったら気軽に乗ってやるところだが相手は秋城先生だ、何を要求されるのだろう。

「わたしが勝ったら……そうだな。中魅と付き合って――」

な、何を言ってるんだこの人は!!

「わたし一ヶ月わたし達と修行というのはどうだろう」

こけそうになる。オレの早とちりなんだが……どうも緊張してしまった。
しかし一ヶ月の修行。やってみたい気もするがヘンな噂でもたったらどうしよう……と考えるだけで何か普通じゃない気がする。
勿論今の状態ですでに普通じゃないがここで勝てば普通に戻れるのだ。

「お前は何を要求する? 何でも良いんだぞ?」

言葉の真偽はわからないが秋城先生のことだ、本当に何でも良いのだろう。
例えば成績を偽装してあげてほしい、とかの用件でも飲んでくれるに違いない。相手もそれは百も承知だろうから。
ならばそこはオレだ。一番利益になりそうな……待てよ。

「オレが勝ったらその日本刀。貰い受けますっ!」
「これか? お前には不要な物だろう?」
「ちょびっと中魅の免許皆伝を早くしてやるんですよ」
「別にこれを持ったって実力があがるわけじゃない。それはお前もわかるだろう?」

わかってる。わかってるからこそなのだ。

「免許皆伝と共にその日本刀もらえばカッコいいだろうけどさ。未熟なヤツでも未熟なりに武器を扱えるんですよ?」

ちらりと中魅を見る。少し驚いているようだ。当たり前だろう、オレが他人のために戦うなど依頼じゃなければ始めて……じゃあ無いな。
利益を求めないとしたら始めてだ。

「まあ何よりの理由は秋城先生が大事にしているものを取り上げたい、っていう一つの理由なんですけどね」
「……簡単には取らせんぞ」

開始の合図もなしに秋城先生が突っ込んでくる。
間合いなど気にせず兎に角攻撃するらしい。前見た時にはこんな剣術ではなかったはずなのだが……。

周囲に気を使いつつ避けていく。目で終えないスピードではないし避けるのだってギリギリではない。むしろ普通より余裕がある。
リーチが長い分動作が長い。つまり力の向きを見るだけで避け方がわかるのだ。剣戟を寸前で変化させるってのは落ちるリンゴを浮遊させるにも等しいことだとオレは思う。
勿論ゆるやかな攻撃のときではない、実践で使える剣術の中の動きだ。
捕縛と殺傷を目的とした流派だ。戦い専門じゃない分それを求めるのは酷(こく)かも知れないが中魅は独自に変化させ戦場でも使える剣術に変えていたと思う。
完成されてないからこそ出来る進化だ。

「かなりのスピードで振っているはずなんだがな」

どうやら秋城先生も口ではそう言っているが喋れるだけの余裕があるらしい。
ここで反撃するのも良いが会話をしようと思う。

「軌道が読みやすいので助かります」
「言ってくれるな」

浅い笑みを浮かべる秋城先生と同じくオレも口だけで笑みを作る。目は真剣そのものだがこの戦いは楽しい。
ただまだ相手は使ってきていない術がある。捕縛のほうだ。秘密兵器にでもしたいのだろうか? ならば先手を打って腕を封じさせてもらおう。

秋城先生の攻撃を避け手首を掴む。怪力で押し返されると思いきや思ったより弱い力だ。ただ一般的に見たら女性、男性含めても強いほうだとは思うがオレには劣る。
拳で戦うオレと武器を使って戦う秋城先生ではここでは力量の差がでて当然だ。

「この短い距離じゃあオレが有利だ!!」

秋城先生の手首を無理やり右に引っ張り自分との距離を調整すると左足でわき腹を狙って蹴る……が何かに阻まれる。
何かがある様子でもないのに……だ。

何かを本能的に感じて後ろに下がる。
そこから見たのだが秋城先生の手に持っていた日本刀が消えている。その日本刀はと言うとさっきまでオレの居た位置に浮かぶように止まっている。
設置、という言葉が似合いそうだが秋城先生がそれを手に取った時点で設置というのは間違った表現になる。

「どうなって……」
「足に仕掛けなくても……人は必ず身に着ける繊維でできたものがある」

服か? なるほど少なくともこの学校の制服は繊維でできているな。
動きにくいので上着は脱いでいるが下まではやはり脱ぐことは出来ない。

「はぁ、羞恥心を捨てなければ秋城先生には勝てないのか……」

びくっ、と大山が痙攣起こしたような気がするが現在気絶中なのもうわからない。
最悪の思考になってきたんだが。

「そんなことは無い。お前は強いさ」
「相手が何をしているかわからない以上オレは技術面では秋城先生には劣っているんです」
「お互い褒め言葉として受け取ろうじゃないか」
「そうですね」

その言葉と同時にお互い再び相手に向かい走り出す。
日本刀を持ったその手を右に一閃させる秋城先生。それをしゃがんで避けると転ばせるために足を蹴る。オレの目論見通り転んだのは良いのだが悪あがきのつもりかオレが下敷きになるように倒れてくる。
厳しい状態だったが片手に無理やり力を入れて横へと飛ぶ。
なるほど、漫画とかで見たら簡単そうだったのだが重心を片手一つで支えて、そして不安定な重心を制御して横へ吹き飛ばすなんて夢に等しい確立じゃないか。
奇跡が起こったおかげ、とでも言いたい気分だ。ただまだ戦闘の最中、オレが避けたせいでそのまま倒れた秋城先生は起き上がってこない。

「……あ、あの……」
「ま、まだいけるぞ……」

ぐさりと剣先を体育館の床に刺し立ち上がる秋城先生。血さえ出てないものの有効なダメージになったのは間違えない。
しかしそれより気にするところは体育館に傷を作っちゃったけど良いんだろうか? という点だ。周りは特に気にしてないように見えるが問題あるだろう。

「はあっ!!」

掛け声とともに降りかかる剣戟を避けバランスを素早く確保し蹴り技を放つ。
狙うは手首。日本刀を弾けば勝てる、とオレは確認じゃないにしてもかなりの確立で勝てるだろうと思っている。

「く、うぅ……」
「耐えただと!?」

秋城先生の手首を見る。少し赤くなっていた。
これが後から腫れると思うと少し後ろめたいが引き下がるわけには無い。
今のうちに追撃を放とうと蹴りが終わった足で床を踏みしめもう片方の足で膝に向かって追撃を放つ。あまり大きな動作で狙ったら隙ができると思ったのだが予想に反し小さな動きで放った攻撃に関わらず避けられてしまった。

「これじゃあ勝負がつきそうに無いですよ」
「しかしわたしはじわじわと痛みを受けていっているぞ?」
「オレだって大きな動きして体力使ってますから」

どっちが倒れるか、じゃない。どっちが最後に立っているかがこうなったら問題になってくる。
地味な戦いになると思うが冷静さを失った方が負ける戦いってのはこういうのなんだろう。

「考えていることはわかるぞ。しかしわたしにも時間の都合というものがあってな。こうしないか?」
「時間ですか。どういう方法に変えるんですか?」
「わたしが持てる力のすべてを使って渾身の一撃を放つ。それを防ぐでも避けるでも出来たら勝ちは譲る」

内容はわかった。
だがここまで言うのだ。相手に何か策があるのは見えている。けれども時間というのもオレ達の敵なのだ。

「じゃあ早くやりましょう」
「多少怪我をするかも知れないが我慢してくれ」
「死ぬ気で避けるから安心してください」

言葉を交わすのもこれで終わり。ここから始まるのは拳と刀の一騎打ちだ。
秋城先生の持てる力といいえば捕縛術も含まれている。つまりカードに例えるならばジョーカーとクイーンが手を組んだ状態でキング一枚で戦えと言っているようなものだ。
絶対に負ける。
ただオレの勝利条件は打ち勝つ事じゃあない。避けることだ。
絶対という言葉に綻びを生じさせる行動だ。

秋城先生は奇妙な構え、まるで長剣でも持っているかのように片手で日本刀を扱っている。
もう片方の手は何もしていないように見える。バランスを取っている様子にも見えないし何をやっているのだろうか。

オレの疑問など無視して両手を引きずるように走ってくる秋城先生。
まるでアニメや漫画の中の忍者のような走り方。
いや、待て。今の状態を見るに肩の力を使って刀を振るうのは明らか。今までは腕と肩で両立させていたのが一方になる。
くるり、と半回転し勢いをつけ刀の刃を向けオレに襲い掛かる。
なるほど、あの何も持っていないほうの腕は錘代わりか……って危ないぞ!!

本当に避けるか防御しなければ負ける、いやこの世からリタイアして死ぬ。
もっとも確実に防げるのは両腕を使いガードする。となると両腕二つが犠牲になるから無理。
避けるとしても何かワンクッション無いと思うようにスピードが出せない。重心移動なんて相手の攻撃方法がわからないうちからやらないし。

ええい、こうなったら今思いついた策を披露してやろう!!

今一番早くできる重心移動は上から下に移動することだ。と言っても前進を隠すことなど出来ない。
簡単に言えば蹴りの体勢になるのだ。

蹴りを自分の顔の高さまであげて頭を自分の足の位置まで下ろす。勿論柔軟じゃなければできないが武道家なら体が柔らかいのは当然。
この状態でどうやって剣戟を防ぐのかというと極簡単。

「うぐっ」

表現するとすれば天秤だ。一方が落ち、一方が上昇する。
オレの足と頭までを直線で結ぶとする。すると面白いことにオレが頭をしたにすれば足は上にあがるのだ。
そしてオレの背は秋城先生と同じぐらい。ギリギリ足が届き顎を蹴り上げたというわけだ。
こっちだって腕を使わずに反応してやったのだ。

「ま、まさか成功するとは……」

攻撃スピード的にはかなりギリギリだっただろう。ただこれでオレは新たな技を手に入れたというわけで、一件落着して欲しい。

「し、舌噛んだ……。酷いな……君は」
「勝負じゃなかったんですか?」
「……それもそうか。約束通り――」
「中魅に直接ってのはどうです?」
「まだあの子は免許皆伝じゃないんだぞ?」
「それもそうですね」

って言うか自分の師匠が敗れる姿を見て中魅はやっぱり怒ってるよなぁ。
一応謝っておこうか。

端で観戦していた中魅に近寄りまずは謝ることからだ、と頭を下げる。

「ごめんな。中魅」
「……ん? 何故謝る」
「だって、秋城先生倒しちゃったし」
「それで何故私に謝る。お前は誰にも謝る必要なんて無いんだぞ?」
「そ、そうか? なら、コレ渡しとく」
「正直私も受け取りたくないんだが……。正攻法じゃない気がするし」
「良いんだよ。世の中強いヤツが勝つんだから、弱いヤツを強くする道具は絶対必要だ」
「む、失礼だな」

……失言だったか……。

「おお、こんなところにちょうど良い……あっ、待て!」

大山の気持ちがすごくわかる!!
それでも諦めないオマエはある意味凄いよ!

























学園祭の準備中なのに何をやっているんだろうコイツ等は……。