ニンニク畑さん(仮名)は、大腿骨の手術で入院してきた80代の女性。入院時の家族の情報では「趣味は草抜き」とのこと。朝4時から庭に出て、一本たりとも雑草は許さないらしい。
私はすぐにカンファレンスで共有した。「応用動作の評価にこの情報は欠かせない」と思ったからだ。何よりそのこだわりが、リハビリの動機づけになると思った。
そして私が日々の担当に。何気ない雑談の中で、「草抜きが趣味なんですね」と水を向けた。
にんにく畑さんはピタッと動きを止めて、こう言った。
「趣味なんかじゃないよ。暑くなる前にやるしかない。やらなきゃ大変なことになるんだから。仕方なくやってるのよ」
なんともいえない表情だった。面倒くささと、でも手を抜けない性(さが)と、少しの誇りがにじむ顔だった。
それ以来、私は「家族の話には多少の幻が混じる」と思うようになった。
――そして今、引っ越しで自分の庭を掃除している。
やっぱり私は、集合住宅がいい。