63歳男性。脳梗塞/TIAの既往があり、以前から100mを服用していた。今回、心房細動が指摘され、100mgは中止、リバーロキサバン15mgに変更になった。併用薬はオルメサルタン10mg レボチロキシンS100μgのみ。
心房細動による心原性脳梗塞の1次予防目的でNOACが開始された。CHADS2スコアは高血圧と脳卒中/TIA既往から3点で脳卒中リスクは5.9%/年と高リスク。2点(4.0%/年)以上でWFによる抗凝固治療が勧められる。WF服用による脳卒中リスクの相対リスク低下は、メタ分析から60%と報告されている。CHADS2スコア3点では、WFにより3.6%/年の脳卒中を予防出来る。
*Meta-analysis: antithrombotic therapy to prevent stroke in patients who have nonvalvular atrial fibrillation.

 

JAST試験(低用量アスピリンvsプラセボ)、ACTIVE-W(DAPTvsWF)試験において、抗血小板薬に心房細動に伴う脳梗塞の予防効果はないことが示されている。
WASID 試験の結果において、頭蓋内血管狭窄がある非心原性の脳梗塞の脳卒中予防効果はWFと抗血小板薬は同等であり、WF内服患者に出血が多くみられた。
BAT試験は、脳血管障害や心臓血管病にWFと抗血小板薬を投与する前向き観察研究で、重篤・重症な出血の年間発症率は、抗血小板薬単独で1.21%、抗血小板薬併用2.00%、WF単独2.06%、WFと抗血小板薬併用で3.56%であり、WFと抗血小板薬の併用がWF単剤治療に比べ出血イベントを1.5%/年増加させた。(NNH67)
これらの事から心房細動のために抗凝固薬が不可欠な患者では、 アテローム血栓性脳塞に関しても抗凝固薬での再発予防を図るのが先決との見解がある。
NOACに関しては、WFに比して頭蓋内出血は少ないが、アテローム血栓性脳梗塞への有効性の報告がないため、今回のような患者にNOACの単剤使用がどこまで有効かは厳密には不明である。

 

患者固有の条件としては、高血圧で脳梗塞/TIAの既往があり、喫煙・飲酒習慣はあるが、糖尿病・脂質異常症がなく、比較的若年で(<65歳)、心筋梗塞の既往がない等、リスク因子は有るものも無いものもある。HAS-BLEDスコアは3~4点で高リスクであり、アピキサバンを考慮しても良いかも知れない。

 

以上を総合して、慎重に経過を観察しつつ、脳梗塞/TIAの再発があれば抗血小板薬を追加するような方針となるだろうか。リスク要因である血圧のコントロールや過度の飲酒を避ける事等は今後も重要である。出来れば禁煙も望ましい。

 

参考文献『CORE JOURNAL 循環器 no2  2012 秋冬号』ライフサイエンス出版
P54-61「アテローム血栓性脳梗塞の既往がある心房細動に対し、強力な抗血栓治療を行うべきか?」企画 卜部貴夫 協力 名郷直樹