友人と二人で、フェリーで渡りました。生まれて初めての壱岐島です。「ハジサン」にふさわしい。
正直に言うと、私は自然があまり得意ではありません。田舎育ちなので、山も海も見飽きています。綺麗だとは思います。
思うのですが、それ以上のことが起きません。
感動が、手前で止まります。「わあ、海だ」で終わります。
だから壱岐島の海を見ても、「綺麗だな」と思いながらも
「お腹空いたな~~~」が勝ってしまいました。
ところが。
島の中を走っていると、神社が出てきます。また神社。また神社。小さな島なのに、神社の数が異常なんです。
ここで私の中の何か心が動きました。
亡くなった祖父が、神主だったんです。
幼い頃、祖父のいる神社によく行きました。
神様というものが、私にとってはずっと祖父の顔をしています。
だから島のあちこちに神社があるのを見て、なんだか祖父があちこちにいるような気がして、少し可笑しくなりました。
おじいちゃん、こんなところにもおるんか、と。
そして、例の人物に出会います。
70代の、壱岐島生まれの漁師のおじさんでした。
気さくに話しかけてきて、壱岐のことをいろいろ教えてくれました。
頼んでいないのに、丁寧に。島の歴史、おすすめの食べ物、地元の人しか知らない場所。案内までしてくれました。
島の方なので、壱岐島への愛情が、話の端々からあふれていました。
気のいいおじさんだな、と思っていたら、唐突に「結婚しませんか」と言われました。言われました。そう、言われたんです。
え、と思いました。冗談かと思いました。でもおじさんの顔は、わりと本気でした。わりととというのが、また絶妙なラインです。
私と友人、二人で旅をしています。友人も独身です。
なぜ私なのか?
その答えはすぐに出ました。
「医療従事者なんですよ」と言った瞬間、おじさんの目が少し変わりました。そして言いました。「あんたが良い」
理由は、安定して稼げるから、とのことでした。
なるほど、と思いました。ロマンチックの欠片もないな、とも思いました。でもおじさんの中では、、、、、、、。
さらに続きがありました。
壱岐島には一つ、大きめの病院があります。
そこで働きなさい、と言われました。
旅行者と結婚して移住する人も最近は増えている、とも教えてくれました。
おじさんは、完全に、、、、、プロポーズではなく、もはや人生設計でした。
出会って一時間も経っていないのに、私の就職先まで決まっていました。
友人は隣でひたすら笑いをこらえていました。
後で二人でひとしきり笑いました。
翌日。
宿の近くを歩いていたら、あのおじさんがいました。
別の旅人(一人旅風の若い女性)に、話しかけていました。
同じような距離感で、同じような笑顔で。
なんか、変な気持ちになりました。
傷ついたわけではありません。
怒ったわけでもありません。
ただ、なんか、変な気持ちになりました。
→たぶん、過去の苦い思い出と重ねたのかもしれない。
帰りのフェリーの中で、ぼんやりそのことを考えていました。
70代で、漁師で、独身で、知らない島で、知らない人に声をかけ続けるおじさん。
本当に少しだけ、羨しいような気がしたんです。
あの島への愛情と、あの臆面もない本気が。
いくつになっても、素直な言動や行動が出来るって素敵だなって!
私はどうでしょう。
知らない場所で、知らない人に、ちゃんと声をかけられているでしょうか。
素直に表現しないから、ストレスがたまるのだと改めて感じたのでした。
神社は、島に450社あるそうです。日本で一番、神様が密集している島なのだそうです。
祖父は、そんな私を見守っていたかもしれない??

