某繁華街のラブホテルを担当していた時の話です。
女性一名の部屋(男性は先にお帰り)より「金が無い」、と申し出があり、カードも無く、金もおろせない。と、いう事で、知人を呼んでもらうようにお願いしました。地域柄、よくある話だ、程度のことでした。
すると、4、5分後に内線がかかってきました。
「フロントでございます」
「具合が悪くなったので、部屋から出して下さい、早く~、早く~、具合が悪いんです」苦しそうな声・・・ではなく、割と元気な声で。
「お客様!?すぐにお部屋まで向かいますので」と、もう一人の担当社員と一緒に部屋まで。
ドアを開けて見ると、やっぱりそんなに具合は悪くなさそう。どこが調子悪いのか聞いてもハッキリ答えず。まぁ、具合が悪いと言うし、部屋に一人だけ入れておくのも何なので、事務所までつれてきました。
「もう帰らせて下さい」
「お支払い頂いてないのに、このままお返しする訳にはいきません。身分証明書はありませんか?」
「ないです。財布がないので。」「では、借用書に住所と電話番号書いて下さい。携帯番号も。ウソ書かないで下さいね。」
借用書に記入してもらい、教えられた番号に電話をかけるも、ウソ発覚。「お客さん、困るんですけど。具合もすっかり直ったようですし、もう警察呼んだ方が早いですかね。」大体、未払いだとか、行き過ぎたクレームを出す人間は、前科持ちが多いのか、警察を呼ばれる事を極端に嫌がる。話を続けていると・・・ガタンっ!
あっ!逃げたっ!!事務所からロビーに飛び出し、外へ向かっている・・・
・・・ふふふ。馬鹿めコワッパ。ウチの入り口には、2つの自動ドアがあるのじゃ。見よ、開くのを待ってる内にウチの屈強なN婆(女性フロント。Nばぁ、と読む。勝手に付けられたあだ名。いい歳)が見事に捕らえたわ。
「お前、いい加減にしろ。今警察呼ぶからな。」「・・・それは嫌です。」
「じゃ、一緒に来た男に早く連絡取って、お金持ってきてもらいなさい。あなたの本当の携帯番号も教えて。」
やっと、渋々男に電話をかける。男は3時間後なら持って来れるという。私からも念のため、その男性に電話をかけさせてもらい、話をさせてもらった。
「~ホテルのものですが、○○さんの知人の方でお間違いございませんか?」
「○○?△△の事だと思うけど・・・。アイツ俺に嘘ついてたのか・・・。」これは回収は難しいか、と思ったが、男性は結局お金を持ってきてくれるらしい。っと、電話してる最中に、ガタガタンっ!!
また逃げたっ!!成長しない奴め。再度同じ場所でN婆に捕まる。N婆強し。いい仕事するね。
これ以上N婆の手を煩わせたくも無いので、仕方なく部屋まで連れて行き、入れました。「せっかく男性が持ってきてくれるって言うんだから、待ってなさいよ」「会いたくない・・・」と言われても・・・・。
2度の逃亡失敗、携帯番号も控え、男性も向かっており、部屋に閉じ込めた。私は外に出る用事があるのだが、あとは男性が来れば解決だな。と思い、外出。
1時間も経過したころ、私の携帯電話が鳴る。ホテルからだ。N婆の声。「あっ、じゃみらさん!?あの女飛び降りたっ!!」
ホテルの隣には、民家(会社が事務所として使ってるらしい)があり、2階の窓からそこに飛び降りたようなのだ。急行すると、救急車と警察が来て、若干の人だかりが出来ていた(隣の事務所の人が呼んでくれたらしい)。残念ながら私が着いた時には、女は既に救急車に運び込まれた後で、話は出来なかった。警察からの事情聴取をN婆から引継ぎ、事情を説明し、金だけは払ってもらえるように警察に話をした。警察と話をしている間に、お金を持ってきてくれるという男性から電話が入った。
「△△が飛び降りたって、救急車の中から電話有りました。もうあんな馬鹿とも関わりたくないので、お金を払いに行くのもやめます。」
後日、警察から連絡があり、女は足を骨折した、との事。お金は親御さんが払いにきてくれました・・・。