児童書とはいえ侮れない。

 

田中佳祐さんの『LIAR 鐘の鳴る夜は真実を隠す』を読んでみました。

 

 

こんなキャッチコピーに惹かれました。公式サイトより

 

□■あなたは、嘘つき犯人を見破れるか? 謎解き×人狼×マーダーミステリー!■□

カーニバルの夜、事件は起こった。

殺害されたMs.ターナーは、街唯一の大学・ノースベル大学の名誉ある学長だった。
容疑者は7人。

物語の中で容疑者が語る[証言]には、たった一つだけ嘘が含まれているーー。

物語に散りばめられたヒントや情報を集めて、真犯人を捜し出せ!

さぁ、あなたは嘘つき犯人を見破れるか!?

 

この中で特に「たった一つだけ嘘が含まれている」の部分が大いに気になりました。

それに、マーダーミステリーをどうやって小説で表現するのだろうとワクワクして書店へ向かいました。

 

その程度の予備知識で探してみたところ、なんと児童書扱いでした。

公式サイトによると、小学5年生から中学1年生向きだとか。

それでは簡単すぎて味気ないかも。

なんて思っていましたが、甘く見すぎていました。

 

8人の登場人物それぞれにスポットを当てた8章仕立てになっています。

各章に一つずつ「小さな謎」が問いかけられ、それを解いていくと事件の真相がわかるようになっています。

謎を解いたと思ったら、いよいよ解答編。

それは袋とじを開けてみてのお楽しみという仕掛けです。

 

「小さな謎」は理詰めで解くものもあれば、なぞなぞのようなものもあり、確かに子どもでも解けるくらいのものです。

とはいえ、さらっと読んだだけでは肝心な情報を見逃してしまうこともあります。

そのせいで、なんだかよくわからなかった謎もあったので、再度初めから丁寧に読んでみました。
 

おかげで、犯人と動機は当たりました。

たった一つの嘘が見破れたのは気持ちよかったです。

 

その一方で、全員のアリバイは完璧には把握できてませんでした。

これはほんの些細な勘違い。

よくよく考えればわかったのに、早とちりでした。

 

もう一つ残念だったのは、なぞなぞ系の「小さな謎」。

ヒントに惑わされすぎて解けませんでした。

堂々と「なぞなぞ」と書かれているのに、理論で解こうとしてしまったのです。

解答を見て納得です。

児童書っぽさを一番感じた謎でした。

 

ただ、この謎は解かなくても犯人探しには影響ありませんでした。

他の「小さな謎」の一つと地図で必要な情報を得ることができたので。

 

モヤっとしたのは、キャッチコピーに「人狼」や「マーダーミステリー」と書かれているのに、それらの要素はあまり感じなかったことです。

「人狼」は、プレイヤー同士が話し合いの末1日ごとに投票で人狼と思われる人を排除し、夜になると市民の誰かが人狼に消されてしまう会話型のゲームです。

「マーダーミステリー」、略して「マダミス」は、プレイヤーが物語の登場人物になり切って犯人探しやミッションをクリアする、これも会話型のゲームです。

 

登場人物同士の会話がもっと増やして、互いを疑う場面が多かった方が人狼やマダミスっぽかったと思います。

でも、今回のような探偵対容疑者の構成ではそこまで細かく分岐する作品にするのは難しいでしょうね。

 

エンディングまで読んでみた率直な感想は「悔しい」です。

でもほどほどの難易度で楽しめました。

シリーズ化されるようなので、次回作は完璧に解いてみたいです。