それは1986年4月22日のことでした。

 

落合博満さんが自身のYouTubeチャンネル『落合博満のオレ流チャンネル』で視聴者のある質問に答えたことがネットのニュースで取り上げられていました。

 

 

その質問とは、

「漫画『あぶさん』で、落合さんが打撃投手に1球だけ投げさせてボールが見えているかだけ確認して、打撃練習を終えるシーンがありました。

実際にそのような調整をされていたのですか?」

という内容でした。

 

これに対しする落合さんは、

「水島先生が誇張して描いたっていうようなことなんだろうと思います。

ボール1球だけ見て『じゃあ今日はこれで良い』っていうようなことは一切ありませんでした。

バッティング練習は10分間あるのだけどもその中で3球から5球打って『よし、もうこれでいいや』っていうことで打撃練習を終えたってことは何回かあります」

などと答えていました。

 

さて、これってどのシーンだったかなとコミックスを見返してみたところ、35巻の第7章『挑戦状』の中に見つかりました。

前の年に三冠王を取った落合さんでしたが、1986年の公式戦が始まるとあぶさんが先行してホームランを重ねていました。

そして迎えた4月22日の川崎球場は、ロッテ対南海。

ホームラン王を狙う二人が直接対決することになります。

 

話題になった落合先週の打撃練習はこの日のことでした。

落合選手はなんとホームベースをまたいで投手に向かって真正面に構えます。

落合選手の指示で打撃投手は落合選手に向かってボールを投げました。

体を直撃するか危ぶまれた瞬間、落合さんは打ち返します。

そしてその1球で打撃練習を切り上げ、こう言いました。

「疲れている時ァ、いくら打っても悪くなるだけ。

ボールがよく見えていることさえ確かめりゃーそれで充分よ。」

 

この後、あぶさんの打撃練習を見た落合選手は、あぶさんが全打席ホームランを狙っていることを悟ります。

そして迎えた落合選手の第1打席。

レフトを守るあぶさんの方へバットを突き出しました。

ホームラン王争いの挑戦状を叩きつけるように。

 

うんうん、こんなシーンでしたね。

この年はあぶさんがスタメンで出場するようになりましたし、右で強く振るための体のバランスづくりのため、打撃練習では左で打つシーンもありました。

読み返すきっかけをくれた落合さんに感謝です。