『ドカベン』最終回まであと3日。
これまで楽しませてくれた『ドリームトーナメント編』に感謝し、カウントダウン企画として「あのシーンをもう一度」と題して作品を振り返っています。
第4弾となる今回のテーマは「アイアンドッグス」。
一回戦第2試合のアイアンドッグス対タイガース戦を振り返ります。
この試合の見どころを独断でランキングを付けてみました。
本題に入る前に、この試合に関するクイズを出しておきましょう。
問題1 この試合で奪った三振の数は、藤村甲子園と不知火守のどちらが多かったでしょうか。
問題2 藤村甲子園が一度も三振を奪えなかったアイアンドッグスの選手は誰でしょうか。
問題3 不知火守が一度も三振を奪えなかったタイガースの選手は誰でしょうか。
スタメンが発表された時点で燃えましたよね。
なんと、あの藤村甲子園が現役選手として帰ってきたのですから。
では、ランキングです。
1位 藤村甲子園と不知火守の投手戦
2位 坂田のバックホーム
3位 投手藤村対打者不知火の第1打席
3位は、不知火の初打席での甲子園の投球内容にしました。(8巻)
この日の甲子園は絶好調、いきなりの8者連続三振で不知火を迎えました。
その不知火は、初球見送ったものの、2球目は後方へのファール、タイミングは合っていました。
そして3球目、甲子園が何度もサインに首を振った後投げたのはスライダーだったのです。
驚きました。剛速球にこだわり続けてきた、あの藤村甲子園が変化球を投げたのです。
でも、これは決して逃げではなかったと思います。
ベンチに戻る甲子園が豆タンにこう話しました。
甲子園「どや豆タン?ストレートやったらスタンドに入っとったやろ?」
さらに、恋女房である豆タンは、ベンチに戻ったときこう思いました。
「何が何でも剛何球」から成長したな。
そう、これは藤村甲子園が投手として成長した姿が描かれたのです。
同時に『ドカベン』出身の代表的なライバル選手である不知火守が、そんな藤村甲子園に強打者として認められたことを意味します。
この試合は、『ドカベン』と『男どアホウ甲子園』のコラボの要素が色濃く出ていますが、その最初のヤマ場だったと思います。
2位は、坂田がファールフライを捕り、タッチアップしたランナーを刺すためバックホームするシーンです。(9巻)
0対0で迎えた8回の裏、アイアンドッグスは、エラーと送りバントでワンアウト三塁のピンチを迎えます。
6番雪村の打球はレフト方向へのフライとなりました。
レフト坂田は難なく落下点に追いつきましたが、そこはファール地域。
見送ればファール、タッチアップされれば失点のリスクがあります。
犬飼監督も坂田の判断に委ねます。
スタンドのアイアンドッグスファンからは一斉に「捕るな」の声が上がりました。
そのとき坂田はこう思いました。
坂田「阿呆なことぬかすな 不知火が完全に抑えた打球やで 見逃せるか!!
わいがホームで刺す!!」
坂田は捕り、三塁ランナー力道はタッチアップ。
坂田は吠えながらバックホーム。
次打者権左が送球の軌道を力道に教えようとしますが、バックアップに入った不知火が巧みに隠します。
そして……。
実に緊迫したシーンでした。
でも、不知火の力投に応えた男気溢れるプレーを見せた坂田は、これまでのどの坂田よりカッコよかったです。
結果的にこれが決勝点となりましたが、実に見応えがありました。
坂田が勝負したのは大正解だったと思います。
栄えある第1位は、シーン限定というより試合全般、甲子園と不知火の投手戦です。(7巻~9巻)
剛球一直線の藤村甲子園と『ドカベン』界最速男の不知火守の投げ合いは、水島新司作品屈指の速球対決となりました。
ひたすらストレートで押す甲子園、速球の他に超遅球や切れの良い変化球も織り交ぜる不知火、どちらも本来の持ち味を発揮し、ランナーを出さない展開が続いていきました。
両者の三振の数を比較すると、甲子園は打者28人に対し13個。
一方の不知火は打者25人に対し13個。
互いに13奪三振だったのは、打者の数は違えど互角だったと言っていいでしょう。
甲子園の9連続を阻止したのは不知火でした。
その不知火は、3打席対戦して一度も三振になっていません。
さらに、甲子園が許したたった一本のヒットは不知火です。
アイアンドッグスの他の8人の打者をみると、いずれも一つないし二つ三振しています。
ちなみに、3巡目には誰も三振してませんでした。
どの打者も意地を見せてくれましたね。
不知火は敗戦投手となりましたが、味方のエラー、送りバント、タッチアップによる1失点のみ。
猛者揃いのドリームタイガースをノーヒットで抑えた圧巻のピッチングを見せてくれました。
しかも、甲子園と豆タンには、9回の裏のタイガースの攻撃がなかったので2打席ずつでしたが、いずれも三振だったのも見事。
その一方で、小野田信長と雪村からは三振と奪えていません。ちょっと意外です。
というわけで、クイズの答えをおさらいです。
答え1 藤村甲子園、不知火守とも同数の13奪三振。
答え2 藤村甲子園が一度も三振を奪えなかったのは、不知火のみ。
答え3 藤村甲子園が一度も三振を奪えなかったのは、信長と雪村の二人。
この試合では、投手不知火守と打者不知火守が『ドカベン』のプライドを背負って戦ってくれたように感じます。
一回戦でアイアンドッグスが消えたのは、本当に惜しいですね。
主人公がいないチーム同士の対戦で盛り上がるのは、魅力的なキャラが多くいる証。
改めて水島作品の素晴らしさを実感した名勝負でした。