●第274話「試合終了」のあらすじ

ウインターカップ決勝戦、誠凛高校対洛山高校は、104対105で洛山がリードし、第4クオーター残り2~3秒。
誠凛最後のチャンスは、日向のフリースローをわざと外し、リバウンドを取ってシュートすることしか残されていない。

日向のフリースローが外れると、両チーム一斉に飛びつく。
ボールを制したのは、誠凛のセンター木吉。
緊迫する洛山のディフェンスの中、マークを外した黒子にパスが通る。

黒子のシュートを赤司だけが読んでいた。ジャンプしてシュートを止めに行く赤司。
しかし、黒子はファントムシュートの構えからパスを選択。
エース火神がアリウープで決めて誠凛逆転。
その瞬間、試合終了のホイッスル。106対105で誠凛が優勝した。

●勝利した黒子の胸中
まずはリバウンドを取った木吉を讃えたい。
この試合が選手生活最後だと覚悟が他の選手の気持ちを上回り、奪えたのだと思う。
これで本当に引退してしまうのかな。
木吉なくして誠凛の優勝はなかった。またコートに帰ってきてほしい。

そして、黒子。かつて、スタンドプレーに走りかけた火神に対し、黒子はこう言った。
「バスケは一人でやるもんじゃないでしょ」
「一人で勝ってもイミなんかないだろ」
「試合終了した時どんなに相手より多く点を取っていても 嬉しくなければそれは『勝利』じゃない…!」

(「黒子のバスケ」4巻第32Q「『勝利』ってなんですか」)
黒子が珍しくタメ口をきいた、この作品のテーマがはっきり表れたシーンがあった。

自分が一番真価を発揮する影に徹し、光となる火神に託し勝利を呼び込む。
チーム一丸となって勝利を掴み、黒子のバスケが、誠凛のバスケが間違っていなかったことを証明した。
以前の黒子は、キセキの世代のバスケを嫌い、見返してやるつもりでバスケをしていたように思う。
キセキの世代を倒した今、黒子は、彼ら5人を負かしたことより、誠凛のみんなと勝利したことに大きな大きな喜びを感じていると思う。

●これからの「黒バス」
黒子達が勝利した今回の話を読んで、僕はそれほど嬉しくなかった。
主人公チームが勝てば、読者としても達成感を味わってよさそうなものだが、嬉しいというよりほっとした感じだった。

赤司に限らず、これまで対戦した緑間、青峰、紫原、黄瀬の5人は、いずれも黒子に、正確には誠凛高校に敗北した。
「黒子のバスケ」という作品に深みが増すのは、これからだと思う。
チームワークのない個人主義のバスケが勝てなかったことで、彼らがどう変わっていくか観てみたい。
緑間は人事を尽くすチームメイトに信頼を置いているし、黄瀬も笠松らチームメイトと一緒に勝利することを熱望していた。
誠凛に敗北した後、再戦したこの二人には、すでに変化が見られている。

「オレに勝てるのはオレだけだ」と豪語していたが、自分が本気を出せるライバルが現れたことで青峰はどうなるだろう。
自分がバスケが好きであることを認めてこなかった紫原はどうなるだろう。
敗北を知らなかった赤司はどうなるだろう。

ウインターカップ編が一段落することになるが、まだまだ先が楽しみだ。
キセキが、特に青峰が笑顔でバスケする姿を観てみたいね。ヒネくれてる紫原にそれを求めるのは無理かな。
インターハイで実現しなかった赤司対紫原、赤司対青峰など、キセキ同士の対決もおもしろそうだ。
そして、海常の笠松、桐皇の今吉ら3年生が引退したら、それぞれのチームはどうなっていくだろう。帝光中学の後輩が出てくるかもね。
バスケに戻った荻原と対戦する日が来るかも。
藤巻忠俊、この先の黒バスを楽しみにしてます。