「ピッコロヴァイオリン」とはピッコロとヴァイオリンでなく、ヴァイオリンの一種。
通常のヴァイオリンと比べ、より二周りほど小さく、全部の弦が1オクターブ高い調弦がされている。
一番高音の弦のE線にはNASAのために作ったロケットワイヤーと呼ばれる0.178mmの特別なワイヤーが使われているという。
写真の左手に持っている小さめの方がピッコロヴァイオリン、右手は普通のヴァイオリンだ。
チラシはこちら(宗次ホールHP)
http://www.munetsuguhall.com/2011062901.pdf
おかげで誰でも手に入るという代物ではなく、現在ピッコロヴァイオリンを弾きこなせるのは、この日の主役グレゴリー・セドフさんだけらしい。
今回のコンサートの奏者は、このお二人。
グレゴリー・セドフ:ピッコロヴァイオリン、ヴァイオリン
原田綾子:ピアノ
グレゴリーさんは毎年この時期になると来日し、ピッコロヴァイオリンを聴かせてくれる。
ピッコロヴァイオリンが夏の季語になる日も近い。
1曲目の「タイスの瞑想曲」からいきなり別世界。
オクターブ上を弾くだけでこんなに変わるものか。
月明かりに照らされた湖面を妖精が踊り、波紋がどんどん広がっていく光景が目に浮かぶ。
グレゴリー・セドフさんがこんなことを話していた(通訳付き)
「12年前にピッコロ・ヴァイオリンの魅力に取り付かれました。
指使いも弓使いも普通のヴァイオリンとはまったく別物です。
この楽器のためにいろんな曲を新しく編曲しましたた。
これからもこの楽器の可能性を追求していきたい。
私が愛するように、皆さんもこの楽器を愛してほしい」
「ハバネラ」ではトレモロを弾ききった後の控えめなドヤ顔があどけなくて好感だ。
どうでもいいがこのグレゴリーさん、1曲終わるごとにピアノの原田綾子さんを讃えるのはいいのだが、わざわざ手を握るのだ。
なんとなくその時間もムダに長いような気がしていたのは僕だけだろうか。
紳士、ということにしておこうか。
ピッコロヴァイオリンは本体が小さい分、音量は普通のヴァイオリンより小さい。
でも、パガニーニの「カンタービレ」では最後にピチカートを2つ鳴らしたが、結構響いていた。
クライスラーを弾いているときには弓の毛が1本切れた。
毛が切れると、熱演してくれているように感じるので、「お主やるな」とほくそ笑んでしまうぜ。
サラサーテの「ザパテアード」はいかにも難曲。
弓は跳ねまくり、左手のピチカートやハーモニクスも多用していた。
第一部の締めくくりに聴きごたえのある演奏だった。
第二部の幕開けは「こうもり」
トムとジェリーの「星空の音楽会」という話で使われていたあの曲。
あのアニメのおかげで一部のクラシックの名曲は画が浮かんで笑えてしまう。
チャイコフスキーの「パ・ド・カトル」も難しそう。
細かいフレーズを滑らかに移弦している。
弾き終わると、「ブラボー」の声が挙がった。
後半になるほど高音に慣れてきて、ピッコロヴァイオリンのありがたみが薄れてくる。
ごく自然なありふれた楽器のように感じてしまうが、大人の手の大きさであの大きさのヴァイオリンを弾きこなすのは大変だろうなと思う。
ぜひ他のプロの人が弾いてみた感想も聞いてみたい。
アンコールでは速弾きを聴かせてくれた。
あの楽器では無理なのかと思っていたら最後の最後でやってくれた。
せっかくならツィゴイネルワイゼンやチャールダッシュを聴いてみたいが、ピッコロヴァイオリンでは低音の鳴りが足らなかったり、音を弱くしにくいのかもしれないな。
終演後のサイン会で、グレゴリーさんはピッコロヴァイオリンテーブルに置いてくれている。
間近で見るのは初めてだ!!
じっくり観察すると、普通のヴァイオリンと比べて三つの特徴があるのに気がついた。
一つ目は「本体の大きさと比べf字孔が長いこと」
普通のヴァイオリン並みの長さだと音が抜ける面積が小さく、音量が抑えられてしまうからだと思う。
二つ目は「E線が極細」
特に渦巻き側は30~40cm離れて見ると、細すぎて見えないくらい。
三つ目は「全部の弦にアジャスターがある」
普通のヴァイオリンでもE線にはアジャスター(微妙な調弦をするためのツマミ)があるのだから、高音ばかりのピッコロヴァイオリンにはすべての弦に必要なのだろう。
一度弾いてみたいものだ。
グレゴリー・セドフ「ピッコロヴァイオリンコンサート」@宗次ホール 2011年6月29日(水)18:45~20:30
プログラム
第一部
01 マスネ:タイスの瞑想曲
02 ビゼー:オペラ「カルメン」より “ホセのアリア” *“占い” “ハバネラ”
03 プッチーニ:オペラ「トゥーランドット」より “誰も寝てはならぬ”
04 パガニーニ:カンタービレ
05 クライスラー:ウィーン小行進曲、おもちゃの兵隊の行進曲
06 サラサーテ:ザパテアード
第二部
07 ヨハン・シュトラウスⅡ:オペレッタ「こうもり」序曲
08 ラフマニノツ:ヴォカリーズ
09 チャイコフスキー:「四季」より *“収穫の歌” *“舟歌”
10 チャイコフスキー:バレエ「眠れる森の美女」より “ワルツ” ”パ・ド・カトル”
11 ストラビンスキー:バレエ「ペトルーシュカ」より
アンコール
2曲(曲名不明)