あれは日曜日の朝だった。
私がまだ小学生にもなっていない、保育所に通っていた頃のこと。
保育所が休みの日で、本当は起きていたけれど、私は布団の中で寝たふりをしていた。
ちょっとふざけて隣で寝ている両親を驚かせたかったから、寝たふりをしていた。
そのとき、両親の会話が聞こえてきた。
「この子、可愛くないわ」と母が言った。
「そんなこと言うもんじゃない」と父が言った。
「だって可愛くないねんもん」と母が言った。
「……うん」と父が言った。
普段から母は私の容姿を散々けなしていた。
だからそのときも、私の寝顔を見ながら、容姿のことを言っているのだと思った。
そして、最後に父も同調したように感じた。
幼いながら、聞いてはいけない会話を聞いてしまったと思った。
だから私は、そのまま必死に寝たふりを続けた。
聞いていたことがバレるのが怖かった。
まるで自分がすごく悪いことをしてしまったような気持ちだった。
すごく、すごく悲しかった。
もし私の顔が可愛かったら、母は私を可愛がってくれたのだろうか。
母が褒める他所の家の子や、父が褒める人気子役のあの子みたいに、私の顔が可愛かったら、些細なことで殴られたりもしないのだろうか。
可愛い顔に生まれた自分に優しく笑いかけてくれる両親の姿を、
何度も何度も空想していた。
ずいぶん長い間、私はあの日曜日の朝の言葉を
「顔が可愛くないと言われたのだ」と思って生きてきた。
でも今なら分かる。
母が言った「可愛くないわ」は、
容姿のことだけではなかったのだと思う。
私という存在そのものが、
母にとっては可愛くなかったのだろう。
そう考えると、これまでの出来事の多くが、
不思議なほど辻褄が合う。


