我が町にはサクラの名所というよりも、春の季節になればサクラしか目に付かないという公園がある。
公園に向かう道路には珍しいほどの渋滞。
普段はどうやって生計を立てているのか分からない寂れた和菓子屋には団子を求める行列。
秋祭りよりも多くの出店が路地には並び、警備員の臨時アルバイト募集も春の新入大学生のコンパ費用の貴重な財源となる。
3月から4月
我が町はサクラによって春を知らされ、春に踊らされる。
残雪の気配はいつの間にか、底冷えの朝はなんとはなしに消えていく。

ああ、そうだ。
僕はサクラが苦手だった。
だから、僕は毎春毎春
家の縁側でぼんやりとした陽光を貪るように、怠惰に浴び続けていた。