探せど、探せど魚影はなく、時間が過ぎる。


穴突きに作戦変更。


すると、30センチと小柄なイシダイ。


私を見るなり奥に潜りこもうとした瞬間、仕留める。


キルショットとはいかないまでも、それに近いかたちで脳の後ろを貫通。


すばやく取り込み、締めて自作のメグシに通す。


大きさの割には身が厚く、刺身にしたら旨そうだ。



海の状況は悪くなる一方なのでこれで引き上げることにした。


今回海に行くことは妻に告げていない。


時刻は午前9時。


急いで帰らなければならない。



素早く陸にあがり、片づけをして車のキーレスのボタンをおす。


トランクの鍵を開け、扉を開ける。


シュノーケル、マスク、フィン、などの道具を仕舞い、キーを後部座席に放り投げ、トランクを閉める。


助手席に着替えを取りに行く。






ドアが開かない。





・・・痛恨のインロック。





冷静なもので、すばやく己がおかれている状況を把握した。


そして、なぜ人がインロックという不可思議な行為をするのか少しわかった気がした。




お前の馬鹿さ加減に父ちゃん涙が出てくるわ!


暴れはっちゃくの名台詞が頭をよぎる。


裸一貫で、(ウェットスーツとブーツは装備中)放りだされ、


逆立ちをしようが、あぐらをかこうが、はっちゃくのようにはっちゃけたアイデアが出るわけはなかった。



近くに民家はなく、あるのは海と切り立つ山と8号線のみ。


しばしの沈黙・・・からの雄叫びの後、電話を目指し一路西へ歩みを進める。


30分後、GSを発見。事情を説明し、JAFにTEL.。


来た道をまた戻り、JAFを待つ。


待つこと15分、JAF到着。


若いあんちゃんがものの10秒で鍵を開ける。


1万2千円分の仕事をしたプロフェッショナルの背中を見送る。


閉ざされた未来からの開放に安堵のため息をつく。





何はともあれ今回のイシダイは高くついてしまった。


だが、それに見合う経験と達成感、最高の刺身を与えてくれるのだからと自分に言い聞かせる。


鮮度が落ちぬよう、網に入れ海にしずめておいた獲物を回収して今日はさっさと帰ろう。




網がない。


波が高くなってきていたので、流されてはいけないとかなり大きな石を重しに載せておいたはず。


いや、ここじゃない。


自分に言い聞かす。


ほらあそこにあるじゃないか。


網を回収。






イシダイがイナイ。






ふぅー。



久しぶりにこの現実から逃げ出したくなった。



あきらめの悪い私は再度、準備をし、新たな獲物を求め潜るが、ここまでツキを落とした者に捕まるヤツなどもはやいない。


本格的に波が身体をさらい始め、身の危険を感じ出したのでここであきらめた。


車に戻り、インロックに気をつけ、ケータイを開くと鬼のような着信履歴が・・・


その後はご想像のとおり、こっぴどく怒られた。


達成感も刺身もお金も、何もかも失った私はただ謝るしかなかった。




後日、一部始終を妻に話したら、


「だからあなたは半吉の人生なんだよ。」


と先週私がひいたおみくじの半吉ネタで無理やり〆てくださいました。