イギリスのヒルディッチ窯で1845年頃に作られたカップ&ソーサーを買った。パターン・ナンバーは505、シェイプ・ナンバーはB3とある。花びらのように縁が開いた形状はビィクトリア時代の特徴である。「ワイプ・アウト」と言うダービー窯で使われる白抜きの技法を用いて、バラの花が角度を変え描かれている。イギリスではしばしばバラをこのように描くが、大陸の窯ではあまり見られない。葉と茎は金彩で描かれており、グリーンの下地とクリーム色の縁取りが鮮やかである。ハンドルにある「トゲ」はこのカップの特徴でもあり、カップ全体を「バラ」に見立てるとより味わい深くなる。




ヒルディッチは1811年に創業したジョージアンからビィクトリアン中期まで存在した窯である。イギリス.では1851年に最初の国際博覧会となるロンドン万博が開催され、大陸の磁器窯も多く出展した。マイセン、セーブルなどのデザインや技術力、日本の装飾様式が高い関心をよんだ。万博に出品された品物はその後1852年に開館した「ヴィクトリア&アルバート博物館」で展示され、より多くの人が目にすることになった。必然的に注文者の好みも変化し、このような急激な流れについて行けず、廃業するか窯も少なくなかった。残念ながらヒルディッチもその一つであり1867年に廃業したのであった。







和田泰志先生の御著書を参照させて頂きました。




 ヴィクトリア&アルバート博物館

http://www.vam.ac.uk/






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1830年頃にイギリスのダービー窯で作られたコーヒーキャン(筒状のカップ)&ソーサーを買った。日本では江戸時代後期の天保年間にあたる。ダービー窯は現在のロイヤル・クラウン・ダービーに繋がる(但し同じ会社と言えるか否かは実は議論のあるところ)名窯であるが、この時代はロバート・ブルア(Robert Bloor)が経営の実権を握ったことから「ブルア期」(18111848年)と呼ばれている。装飾は明るいグリーンで塗られたリンゴを配した6枚のパネルからなり、まわりは金彩を施したモールドがなされている。

これは「トロッター・パターン」(サー・ジョン・トロッターによる特注品に描かれた図柄であることに因む)を簡略化したものである。ダービー固有のものでありウースターなどには無い。当時はオートクチュールのドレスのように、ティーセットやディナーセット一式を有力貴族や資本家など、注文者の要望に応じて生産する事も多くあった。オリジナルは濃いグリーンと白地の交互のパネルが配され、その白地部分に「花絵」が描かれおり豪華である。(写真下)


ハンドルはちょっと変わった造型になっており、鳥の胸に付いた骨に似た「ウィッシュボーン・ハンドル」がアクセントになっている。ハンドルの上と背にも金彩が施されている。図柄、ハンドルともにブルア期ダービーを代表するデザインの一つである。





※ 和田泰志先生の御著書を参照させて頂きました。







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7日は来日中のボリショイ・バレエ団「ライモンダ」を観に東京文化会館へ行った。ストーリーは中世のフランス、十字軍遠征の頃、叔母である伯爵夫人と館に暮らすライモンダは、遠征に旅立つ騎士ジャン・ド・ブリエンヌの許婚として彼を見送る。留守中(数年間)にサラセン人(異教徒)アブデラーマンに言い寄られ断るが、略奪婚をされそうになる。間一髪帰還したジャンに救出され、二人は決闘となる。ジャンが勝利し晴れて結婚する。



このバレエは貴族的優雅さ・洗練さと、異教徒的プリミティブさ・荒々しさなど対立する要素が盛り込まれている。また誘惑されるのが男性ではなく女性なのも他のクラシックバレエと違うところであり、どんなに迫られても全くなびかないライモンダ(白鳥の湖、バヤデール、ジゼルなどバレエの演目では心変わりする男性が多い)も興味深い。初演は1898年だが、この時代の背景にあった自由主義・ナショナリズム、あるいはジェンダーと言った要素が、マリウス・プティパ最後の大作となった「ライモンダ」に入り込んでいるのが見て取れて興味深い。またグラズノフのいかにもロシア的な甘くて広大な曲調もぴったりである。



主役のアレクサンドロワを始め、ロブーヒン、シプーリナ、ニクーリナ、ラントラートフ、ロヂキンらが繰り広げる超絶技巧な踊りや醸し出される成熟した舞台空間は、見る者のドーパミンを出し続けるのに十分だった。特に一幕、(三幕)でのアレクサンドロワの「嫋やか(たおやか)さ」は洗練・優雅・多少のメランコリックさとアンニュイさを要素とするクラシックバレエをまさに体現したものであった。久々にボリショイが織成すグランド・バレエの世界を堪能したのだった。





http://www.japanarts.co.jp/html/2012/ballet/bolshoi/index.htm