ここのところ読んだ本を取り上げるコーナーと化しています。

本を薦めるのはいいんですが、他社の本ばかりでは気が引ける(面白い本は面白いから)ので、

そういう意味では今日は自社の本を紹介します。

 

「血統と系統と伝統。」増田知之著、東邦出版

 

競馬は記憶のスポーツだと言われますが、記憶とはすなわち記録を指します。

口伝とか昔話も記憶の継続に役立つけど、私たちは記録を元に自分たちが経験

していない記憶を引き継ぎます。それが競馬が記憶のスポーツとして

成立している根拠なわけです。

 

で、じゃあ競馬の記録をつけるのは誰が始めたのかって話ですよ。

近代競馬は300年から歴史がありますからね。そのね、競馬が近代競馬と言われる

根拠は信頼性に足る記録が残っているかどうかなんです。記録にない競馬なら

300年では足りません。それを近代競馬と区切ることができた、記録。

それを作った人たちのお話です。

 

イギリスに残る「レーシング・カレンダー」という開催記録、

「ジェネラル・スタッドブック」という血統記録。この2冊こそが競馬を近代競馬に

した功労者だというわけです。

それぞれを生み出した人物、チェニーとウェザビー。競馬の記録や血統の流れを

扱うような人は覚えておきたい名前です。近代競馬に関するテストがあるとするなら、

「これは必ずテストに出るから覚えておくように」と先生がバシバシ黒板を

叩いて強調するような人物たちです。

 

でも、知ってる人って少ないですよね。

だから、この「血統と系統と伝統。」を読んでぜひ知ってください。

 

競馬新聞に普通に掲載される成績欄や馬名に記された父、母、母父なんて

チェニーとウェザビーが記録の構築を始めてなかったら、たまに母不明とか

4走前の中京のレースは記録なしとかってなってたかも。んなことはないか。

しかし、この2人が始めた記録こそが近代競馬の発展に貢献したことは

確かです。

 

著者は東京競馬場場長まで務められた元JRA職員の増田知之さん。

情緒ある流れるような美しい文体が18世紀、イギリスの競馬場に

連れていってくれます。