10月31日月曜日隣の店、営業最終日。
この日、社長は朝からNHKの取材を受けていた。豊洲への市場移転が不透明な状況の中、店を閉める老舗仲卸の胸中をテーマにした取材だったようだ。最後の思い出にと社長は取材を快諾した。
取材を受けながら訪れた顧客へ挨拶と最後の商売をする。ちょっとばかり忙しい様子だったが、変な感傷に浸らずに済むので良かったのかもしれない。
冗談を交えながら、いつもの陽気な社長だった。仲間も次々と別れの挨拶にやってくるが、迎える社長は変わらぬ自然体で、辞めていった従業員が花束を渡しに来た時はちょっとばかり優しく受け入れていた。
その間も取材は続いたが、社長は丁寧に親切に応じていた。
卸会社ではフロアにいた社員から花束を贈られ、フロア全員が拍手で送り出してくれたと言う。
築地は月末ごとに仲卸の廃業がどこかである。それは淋しいものだ。いつの間にかいなくなる店もある。静かにその歴史に幕を閉じる仲卸が多い。
だからこそ、最高にいい店仕舞いだったと思う。こんなにも幸せな最後を私は見た事がない。それは全て社長の人格がなせることだ。みんなが笑顔で送り出してくれる。私自身、嫌な別れも多く経験しているので、実感する。笑顔でさよならするのは本当に難しい。
最後まで私の目標であり、尊敬する先輩だった。