今回は初の試みです。好きな曲について少しだけ書いてみたいと思います。短くまとめようと思っておりますので最後までお付き合い頂けると嬉しいです。
早速ですが、記念すべき最初の曲はコレです!
めちゃくちゃ好きなんです。
PVを開いた瞬間に惹きつけられてしまいました。
この曲は元々トーフビーツさん、オノマトペ大臣さんという方の曲で、浮かび上がるようなリリックや不思議な世界観、また近未来的なのにどこか懐かしいトラックが多くの人を魅了し、さまざまな形でremixが行われています。
そう、DAOKOさんの水星も実はremixなのです!(以下敬称略)
「え?じゃあ結局はカバーって事?」
と思った方もいらっしゃると思います。
この曲はただのカバーじゃありませんよ!
と、言うのもhip-hopの世界においてremixは頻繁に行われています。同じトラックを用いるものの、違う人が違うリリックを乗せるのですからそれは全く別の曲になります。ラッパーの個性が光る瞬間です。また、敢えて原曲と同じフレーズを挟んだり、原曲にある単語で原曲とは違う韻を踏んでみたりなど聴けば聴くほどremixは奥が深いです。大前提としてremix元をリスペクトしているという事実があるからこそ、元ネタにニヤリと出来たりフローの違いを楽しめるのです。
このDAOKO版「水星」はお2人へのリスペクトをひしひしと感じつつも、彼女の溢れんばかりの個性が垂れ流しになっている超名曲だと私は思います。
突然ですが皆さんは「ラッパー」と聞くとどんなイメージを連想するでしょうか。
ダボダボの服でゴツいチェーンを巻いてキャップを斜めに被って……
ああ、これだこれだ。
「ラッパー いらすとや」で検索したらお望み通りの画像が手に入りました。
これがラッパーです。正確には「日本人のラッパーのイメージ」でしょうか…。
日本語はラップに最も向いていない言語と言われています。理由はいくつかあるんですが、母音が強く、一音一音がコマ切れなのがダサくなってしまう一番の原因かなと思います。ラップの起源であるアメリカの言語、英語はリズムの言語と言われ、文字と文字の間が切れずに滑らかに発音でき、普通に話すだけでリズミカルに聞こえます。
よく「韻を踏むって結局はダジャレだよね」と言われますが、ほぼその通りなんです。正確に言えば半分正解です。というのは、ダジャレと押韻は目的こそ違えど手段が同じ、つまりやってることは一緒なんです。その目的とは押韻の場合「聴き心地をよくする事」ダジャレは「似たような音がなんだか面白い」といった所でしょうか。
韻のイメージというと「カツ丼、天丼、親子丼」みたいなのですよね。これも立派な韻です。しかしダサいダサいと言われ続けた日本語ラップも研究を重ねる事でかなり本場のものに近づいてきました(やってる事はただの猿真似という意見もよくわかります)。母音を目立たなくしたり、英語っぽいフローで歌ってみたりと先人たちの涙ぐましい努力により今の日本語ラップがあります。
おいDAOKOの話はどこに行ったんだとお思いの方、すみません。次の行からさっきの話が活きてくるはずです。
今や日本語ラップは進化を遂げ、従来のイメージとはかけ離れたものになりました。しかしDAOKOは古き良きダサい日本語ラップの踏み方を敢えてこの曲では行っていて、それが驚くべきことに非常に前衛的なのです。
少なくとも私はDAOKOは90年代の日本語ラップにかなり影響を受けており、リスペクトしているなと感じます。「水星」においてもかなりオーソドックスな韻の踏み方をしています。しかしその踏まれている単語がめっちゃ斬新なんです。
以下は「水星」で私が特に好きなリリックです。
色付きの部分が韻を踏んでいる部分です。
煌めくネオン ゴミが光る町
老い知らぬ耳 信じてる証
太陽が照らす小田急線内
あの子の中じゃ今もまだ圏外
恋愛 縁無い やっぱ焦んない
携帯からのミュージック安定剤
ディスコは宇宙
ムスクの香りの君に夢中
無重力で浮遊
果てのない空間 ぷかぷか
ぐるぐるまわる惑星乗って
プラズマ走る稲妻
くらくらしちゃうな
基本的に名詞だけで母音に忠実に踏むのはかなりスタンダードな踏み方です。古き良き90年代のラップです。色を付けると彼女がかなり韻に拘っているのがわかると思います。問題はその単語ですよ。
「ムスクの香りの君に夢中」て!!
こんな可愛くてオシャレな歌詞がありますか!?
男女差別をするつもりは毛頭ありませんが、まず男のラッパーは思いつかない女性ならではの韻だと思います。
女性のラッパーが男性のマネをするとどうしてもダサさが増すというか、見てる方も恥ずかしくなってしまうような場合が多いです。それは差別でも何でもなく、女性がラッパーとしてカッコ良く
なる為には男性と同じやり方ではダメだということです。日本語ラップがアメリカのマネのままではダメなのと同じように。
DAOKOは若くして女性ラッパーとしての1つの回答をこの曲で出してしまったように感じます。韻は基本に忠実に、しかし声は張らずにアンニュイで可愛らしく。そしてオシャレすぎるリリック…。
「プラズマ稲妻」と「くらくらしちゃうな」
なんて驚異の8文字踏みですからね…
文字数を稼ごうとすると音に合わせられなくなる弊害が出てしまいがちなのですが、バッチリと意味も通して音にも合わせていることから彼女のラッパーとしてのスキルの地盤の固さも確認することができます。
さて、ここまでいかがでしたでしょうか。
当初の予定よりかなりスケールの大きな話になってしまって困惑しています…
今回はこの曲とリリックの構造の話だけに絞り、DAOKO自身の説明も他の曲についても省かせて頂きました。2017年夏に米津玄師さんとコラボした映画主題歌が話題になりましたが、彼女の事務所はシンガー路線で売りたいと考えているように思えますね。もちろん歌も上手ですし、声も綺麗なので彼女がこの路線で売れる事に反対はできないのですが、この先の活動で彼女の気だるげで可愛らしいラップがまた聴けるなら嬉しい事この上ないです。
ここまで読んで頂いてありがとうございました。また機会があればお会いしましょう。
