雨の匂い
前にも書いたが、僕の生まれは栃木県の佐野市。
小さい頃から、僕にとって山といえば、唐沢山である。
全国的にメジャーな山ではないが、歴史好きな方なら、ご存知かも知れない。
秀郷系藤家の名門、佐野氏の居城、唐沢山城があった山である。
天気の良い、空気の澄んだ日は、(年に何度もないが)山の上から東京まで
見える。すうーっと関東平野が見渡せる快感は、なかなかのものである。
江戸時代の初め、当時の佐野家当主信吉は、江戸の大火を山上より発見し、
諸侯中真っ先に幕府の見舞いに駆けつけたという。
しかしこれが、江戸を見下ろす場所に築城していると幕府に認識されてしまい、
現在のJR佐野駅北口すぐの場所に「城山公園」として残る平城、
春日山城に移らされ、後に改易された。
世の中、運不運は何が元になるかわからないものである。
しかし、その後佐野氏の血脈は旗本として保たれ、現在も唐沢山城跡に
建立された、祖先藤原秀郷を祀る「唐沢山神社」の宮司家として、
地元の信仰を集めている。
ちなみに当代の跡取りは、確か僕と同級生か、一つ下位の女の子で
(もはや、女の子ではないが。。。)一人娘だったと記憶している。
どうしているんだろうか。婿取ったのだろうか。
僕は子供の頃から、縁あってこの唐沢山で山遊びをしたり、キャンプを
したりしていた。カラサワの名前の通り、水の湧かない赤土の山だが、
針葉樹の繁る、如何にも古城、荘厳な雰囲気の趣ある山である。
先日、東京に雨が降った日。
僕は二子玉川の駅を降りて、自宅のある瀬田方面へ、国分寺崖線を
上っていた。
ふと、雨に濡れた土の匂い。
多分、全然違うんだろうけど、唐沢の土の匂いがした。
あの、なんとなく苔むした、かび臭いような、にがい匂い。
こういうのを、ノスタルジィというのだろうと、思った。