近鉄バファローズがなくなってから何年くらいたったのだろう。


ボクは近鉄バファローズの大ファンだった。
野茂英雄が入団して、ちょっとした近鉄フィーバーになるよりも前から近鉄バファローズを愛していた。


近鉄バファローズがなくなる時…いわゆる普通の『身売り』であったなら、新しい球団を応援できたと思う。
しかし、とても特殊な状態で、『近鉄バファローズ』は『解体』してしまった。


ボクはそれ以来、特定の球団を応援していない。
スポーツニュースも、以前ほど熱心に見なくなった。


それほど愛していた近鉄バファローズのファンになったのは、忘れもしない中学3年の時だ。

クラス替えがあり、新しく仲良くなった友人達は皆、野球ファンだった。
ボクは当時、プロ野球に全く興味がなく、朝の『おはよう』と同時になされる、昨日の試合結果話についていけなかった。
ちょっと寂しかったので、どこかの球団を応援しようと決意した。


友人達は皆、パリーグファンだった。
西武、日ハム、ロッテ、南海…のファンがいた。
かぶったらつまらないと思って、残りのパリーグ球団から、応援するチームを選ぶことにした。

ただ、プロ野球に全く興味がなかったので、残りのチームに関しても全く知識がなかった。


当時、ボクはアイドル『南野陽子』の大ファンであった。
前に何かの雑誌で読んだ南野陽子のインタビューに好きなプロ野球の球団について書いてあったのをおもいだした。

確か、関西のパリーグだったな…。

!! 近鉄バファローズだ!!

よし!! 近鉄バファローズを応援しよう!!


動機が不純だった分、その後、しっかりと近鉄バファローズを研究した。
過去の成績、名選手…そして、本当に近鉄バファローズを愛していった。

おかげで、友人達と熱くプロ野球談義を交せるようになった。



しばらくたったある日、違う雑誌に載っていた南野陽子のインタビューを読んだ。


そこには阪急ファンだと書かれていた。
小さい頃のボクのヒーローは仮面ライダーだった。
というよりも、ボクにとってヒーローは仮面ライダーしかいなかった。


アニメのヒーローも格好良かったし、心を惹かれたが、所詮アニメ…『作られたヒーロー』。
文字通り、絵空事だった。


実写と言うリアリティー。

仮面ライダーはボクのそばにいるかもしれないヒーローだった。


実写と言えば…ウルトラマンは?? と疑問に思われるかも知れない。
しかし、ウルトラマンもボクにとっては『絵空事』だった。


あんなに大きいのに、どこにも見えた事がないのはおかしい。

遠くで戦っていたとしても、戦いの後、空を飛んで帰るのだから、やはり見えた事がないのはおかしい。

小さなボクがウルトラマンに出した結論…『絵空事』だった。



そんな訳で、半径50センチの世界観で生活していた幼いボクにとって、仮面ライダーは唯一無二のヒーローだった。

当時、早朝に仮面ライダーシリーズが再放送していたので、ボクはワクワクしながら見ていた。


そんなある日、仮面ライダーに新しい仲間が加わる事を知った。

ドキドキした。



新しい仲間のライダーは…『スカイライダー』。

空を飛ぶ仮面ライダーだった…。

所詮ヒーローは絵空事なんだと思い知らされた…。
小さい頃、父親の会社の社員旅行に連れていってもらった。
行き先は古都・鎌倉だった。


他にも子供がいると思ったのだが、子供は何故かボク一人だった。
なので、父親の同僚とはいえ周りは知らない大人ばかりだった。
だが、唯一の子供参加者と言う事でなにかとちやほやしてもらえたので、悪い気はしなかった。



八幡宮や大仏など、古都を感じる名所をまわった…らしいが、正直あまり記憶にない。

この旅行で記憶に残っているのは、ボクを抱きしめながら泣いていた母親の顔である。



鎌倉の名所を観光していったわけだが、幼いボクには退屈以外のなにものでもなかった。
とりあえず、ちやほやしてくれる大人達のあとをふらふらとついて歩いていた。


バスに戻り、指定席と化していた一番後ろの席に座り、出されるお菓子を頬張っていた。



『ジロ!!!!!』



泣きながら母親がボクの所へやってきて、ボクを痛いくらいに抱きしめた。



ボクは…まったく知らない団体の、まったく知らないバスに乗り、まったく知らない大人達に囲まれていたのだ。