『砂糖の歴史』
（エリザベス・アボット著，樋口幸子訳、
河出書房新社 2011年5月30日発行）
『砂糖の歴史』を読みました。
気になったところを抜粋させて頂きます。
砂糖は庶民の麻薬ともいうべき役割をはたした。砂糖は人を元気づけ、楽しみを与え、
心理的習慣性を引き起こす食品だった。砂糖は食欲を弱め、空腹の苦痛を紛らした。そし
て、かつては特権階級しか享受できなかった消費をちゃんとした暮らしという新しい可能
性の扉を開いた。
そうした可能性の一つが、砂糖水を高温で煮詰めて作った、独特の風味と形を持つ美味
しいキャンディーである。・・・・・ （『砂糖の歴史』Ｐ８７）
砂糖は穀類等の複合糖質よりすばやく満腹感、満足感を与え、他のさまざまな食品と組
み合わせやすく、組み合わせた食品にも砂糖が含まれていることが多かった（紅茶とビス
ケット、コーヒーと菓子パン、チョコレートとジャムを塗ったパンなど)・・・・・金持ち
や権力者がたいそう砂糖を好んだのも、貧しい人々が砂糖を愛するようになったのも、驚
くには当たらない」 （『砂糖の歴史』Ｐ８９）
砂糖の生産は白人の支配者階級が未開の国々において黒人の奴隷制度の上に成り立って、砂糖の
生産産業という存在があったようです。
なんと皮肉な歴史があり、現代においても皮肉な現実が存在しているのか。
奴隷にされた黒人たちの一言では語りつくせない過酷な生涯を犠牲にして手に入れた砂糖の代価、
それは私たち現代人に砂糖過剰摂取させ肥満や糖尿病などにまでエスカレートさせている現状があります。
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だが、砂糖はもはや、産業を維持するためにグロテスクで不健全な宣伝に依存する必要はない。
すでに研究によって、プラスチックのようなまったく異なる分野における砂糖の可能性も開発され
つつある。医薬品としての砂糖、例えば生物医学的研究による体内で溶けてしまう外科用プレートの
開発などは、砂糖の新しい物語の一つとなるかもしれない。いつの日か、砂糖の意味は、比喩に登場
する砂糖と同じように甘くなるかもしれない。
（『砂糖の歴史』Ｐ４９４～Ｐ４９５）
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