ヴェニスに死す(1971)

監督:ルキノ・ヴィスコンティ

 

 

 

美でガツンと殴られた感覚。

 

ざっくりあらすじは、重い過去を背負った作曲家グスタフ・アッシェンバッハ(ダーク・ボガード)は療養先のヴェニスで、ビューティーの権化のような美少年中の美少年タジオ(ビョルン・アンドレセン)に出会う。すっかり恋に落ちたグスタフだが、ヴェニスには怪しく隠された影が迫っていた、という話。

 

グスタフと友人作曲家アルフレッドによる美の実存主義的な議論。

「美は自然発生的なものである」とするアルフレッドに対して「美は努力によって創造できる」とするグスタフ。

そんなグスタフにとって理解し得ない絶対的なビューティーをまざまざと見せつけた少年タジオ。

初めてタージオが画面に現れた時、息が止まりそうになりました。

初めてティモシー・シャラメを見た時も美しさに衝撃を受けましたが、その上をいく衝撃。

天使、、、?実写版萩尾望都、、?

 

事実萩尾望都に多大な影響を与えたらしいですね。髪の毛のふわっと感!

 

美少年に惚れ込んだオジサンの話ということで、最初はOh...ニッチな世界...と思いつつ鑑賞していましたが、

タジオを見れば見るほどストーカー気味になるオジサンの気持ちが分かっちゃう

ストーカーとか性犯罪に関しては絶対にあってはならないことだと思いますし、被害者には100%非はないと考えます。が!反則だよタージオ!ゆっくり振り返ってゆっくり方向展開しているだけなのに!!

Elleのビョルン・アンドレセンくんに関する記事を読んで大変心が痛みました。周りの大人に搾取され続けた人生を送ってきたようです。美というものを考えさせられますね。。人を狂わせるし、本人にとっても諸刃の刃になる。

タジオ一家が財前教授の総回診ばりに歩いてくるのもカッコよかったです。

グスタフのセリフ「never smile like that to anyone. I love you.」私もその場に飛んで行ってグスタフに代わって呟きたい、と強く感じました。

最初あまりにも話さないので、隠し砦の三悪人の雪姫、上原美佐的理由(演技が絶望的にオモシロ)があるのかと思いましたが、ポーランド人設定のため&至高のミステリアス演出なんですね、きっと。

 

「エリーゼのために」が流れた時のグスタフの苦悩と葛藤が中でも秀逸でした。私までグスタフに感情移入してしまって苦しくなりました。弾いているのが女の子と判明した時のシーン、グスタフの残念感と安堵感が辛かったです。娼館の女の子もそれなりにビューティーで、現代だとメンヘラしか履いてなさそうな感じのシマシマのロングソックス(偏見です)を。退廃的な雰囲気が本当に素晴らしいと思います。

よく平安時代の古典文学であったり和歌を詠むと「恋い焦がれて死ぬ」という文言があって、イマイチピンと来ず、平安時代の貴族は暇だから感情のベクトルがすごいことになっちゃってるのかな、なんて失礼な想像をしていたのですが、本作を見て、なるほどこういうことか、と納得しました。

マーラーのアダージェットの多幸感の中、自嘲と共に生き絶えるグスタフ。一瞬の幸福を掴みつつも、妻の不倫であったり自らの持病で再び孤独に絶望したグスタフ・マーラーをも感じさせる終わりでした。そして何より最後のグスタフ、顔、白かったですね〜〜。タジオ一向が無防備にヴェニス市内を歩き回っていることよりも何よりも、グスタフの顔の白さが気になってしまいました。

白かったですね〜

 

ヴェニスの異様な雰囲気もやばかったです。謎の伝染病はチャイナウイルスならぬ、アジア・コレラでした。力技的な消毒に、グスタフは異変を気づきつつも、銀行のおじさんに真実を尋ねるとまさかの病院に空きベッドゼロの状況。やだステージ6!などとコロナを重ねつつ視聴しました。銀行のおじさんとグスタフの諦めに近いスマイルが妙にツボりました。

あと何と言っても途中ホテルにやってきた楽団の歌い手顔色悪すぎません?目の前で熱唱する歌い手をガン無視するタジオ達もハート強いなと思いましたが、今すぐにでも倒れそうな歌い手、動く生物兵器アジア・コレラーって感じで恐ろしかったですね。普通に怖かったです。ぜひ見てください。

 

グスタフのもう誰も失いたくないという思いとシャイな人柄を狂わせるタジオ。

ビューティーってすごいですね!

 

お読み下さってありがとうございました!