12/3に踊らせていただけることになりました。詳細は決まりましたらお知らせいたします。 | 次の日のフランスパン

12/3に踊らせていただけることになりました。詳細は決まりましたらお知らせいたします。

友人とある飲食店に入った。
目的はおしゃべりをしながらチャイをすする事だった。
しばらくしてそこは分煙されていない店だということに気がついた。
女性が一人で極細の煙草を吸っていたからである。
煙草は吸う人をあらわすのか彼女もかなりの極細であった。
私は煙草を吸う人がキライというわけではない。
分煙でなくても平気だし吸いたい人は吸えばいい。
しかし、次に隣の席に座った女性には参ってしまった。
その女性が吸うたばこの煙が全て私の顔の前を通る風向きだったのだ。
「私は煙が来ても平気さ。こんなのには慣れっこなのだよ。」
という顔をして友人と話をしていた。隣の女性の方には意識を向けないようにしていた。
一回でも顔を向けると煙がうっとおしいのよアピールをしていると思われるかもしれない。
いや、実際はうっとおしかった。
しかし、彼女にとっては意地悪な上司の目から逃れ、チャイと煙草を好きなだけ楽しめる唯一の場所かもしれない。
もしかしたら、家事に疲れた主婦の憩いの空間なのかもしれない。
そんなささやかな楽園を私が奪っていいものか。
もうちょっとだけ我慢しよう。
そう思い直し、私はチャイをすすった。
すると私の口に入ってきたのはニコチンタールだった。
チャイではなく、煙をすすってしまった。
思わぬ出来事にうろ耐えながえら、咳き込むかと思いきや、くしゃみをした。
私の脳が一瞬で反応した結果だ。くしゃみなら厭味ったらしくないと私の体が判断した。
たぶんそうだ。
しかし、隣の女性も自分の煙草の煙が隣の客の顔の前を通り過ぎていることは承知していたのだろう。
私のくしゃみの後すぐに火を消した。
私の中の15パーセントの感情が申し訳ないという気持ちになった。
そして85パーセントの感情がホッとしていた。
そのホッとしたのもつかの間、隣の彼女はニコチンを早くも消化してしまったらしくまた煙草に火を付けた。
そして彼女は体を壁の方に向きなおした。
煙を一度壁にバウンドして方向を変えようという彼女なりの作戦だった。
しかし作戦も空しく煙は私の顔の前を霧のように通り過ぎて行く。
私だけ霧の摩周湖状態にまた戻ってしまった。
彼女の気遣いには報いなければいけないと、又私は何食わぬ顔で友人とおしゃべりをしていた。
そしてひとり霧の摩周湖状態にもすこし慣れてきた時、彼女は席を立った。
私と友人は思いっきりホッとした表情をした。摩周湖の霧はスッキリと晴れたのだ。
そして私ははじめて彼女が座っていた席をマジマジとみた。
灰皿の中にはすいがらが10本縮こまっていた。
私の横眼での情報収集能力に甚だ疑問を感じる一時間半であった。