ミス・ホームズの婉麗奇譚~衒~
萬劇場で、BE WOOD LIVE制作『ミス・ホームズの婉麗奇譚 ~衒~』観劇。はじめに。元来、ミステリー作品が得意ではない。映画でも漫画でも演劇でもそうだ。理由は簡単で、前提がよく分からないのである。前提というのはつまり、完全犯罪的なことをする意味が分からないということだ。復讐でもなんでもいいのだが、そんなに殺したいほど憎い相手がいるのならちゃっちゃと実行に移せばいいではないか。そして、本懐を遂げた後のことなど知ったこっちゃないのである。アウトレイジよろしく「ヤるならさっさとヤれよコノヤロー」なのだ。そして、ヤった後は潔く散ればいい。成り行きで事件を起こした犯人が追い詰められていくサスペンスならわからんでもないが、トリックなんぞ考えたり仕込んだりする暇があったら、後先考えずヤりにいけ。私はそう考えてしまう。そんなわけで、「犯罪を犯してそれを巧妙に隠し生き長らえようとする犯人」という人物像やその前提がどうもしっくりこないので、基本的に私はミステリーを見たり読んだりしないのだった。で、舞台の話。今作は連続モノで、これが3作目。前の2作を見ていないので、なんで1作目の犯人が普通にパン屋さん(キッチンカー?)やってるの……とかよく分からないところもあるにはあったのだが、要は、人を操って事件を起こし(起こさせ)自らは手を汚さない黒幕がいて、女探偵がそいつの尻尾を捕まえようとする話なので、その大筋さえ掴んでいれば過去2作を見ていないことは問題にならなかった。最大の懸念材料は「役名がスッと入ってくるか」で、キャスト表を見ても麗寿渡(れすと)、萌珠多(もすだ)、茶仁安(さにあ)などよく分からん名前ばっかり。コナン・ドイル作品に出てくる人名のオマージュなのか知らないが、正直、舞台を見終えた今でも登場人物の半分くらいは「名前だけ言われても顔や姿が思い浮かばない状態」だったりするのだが、上演中は「今誰の話してんの?」となっても直後にその人物がすぐ出てきたりして「ああ、この人のことね。了解、了解」という感じで、話に置いていかれることはなかった。ただまあ、「置いていかれたらどうしよう」という不安は要所要所で感じたし、名前を出された瞬間にカチッとハマらないもどかしさみたいなものはあったので、多少気疲れする舞台ではあった。もっとも、じゃあ役名が田中とか高橋とかよくある名前ばかりだったらスッと入ったのかと言われたらそれは分からないが。あと、つくづく自分にはミステリーをたしなむ素養がないと思ったのは、上演中、黒幕(モリアーティ)が誰かを1ミリも考えなかったこと。後でキャストの皆さんが「推理や考察を聞くのが楽しい」といったポストを読んで初めて黒幕のことを思ったのであった。なるほど、「犯人はこの中にいる」じゃないとミステリーにならんのだな。(ChatGPTによると、伏線を張っていればシリーズ未登場、つまり次回最終作で初登場の人物が黒幕でも話は成り立つと言うが果たして……)自分としてはミス・ホームズが宿敵に一番近い人物に肉薄する話として見て、それを心から楽しんだし、それはお世辞抜きに面白かった。ChatGPTに相談したら「推理しながら見なきゃいけないってことはないっすよ」的なことを言っていたし、当日パンフにもそんなことが書いてあるので良しとしよう。その他、思ったことをいくつか。ミステリー演劇って、これが小説なら「いつの話?誰の話?」となった時、ページを戻ればいいだけなんだけど、舞台の場合始まったらノンストップでしょう。客がついてこれるか、どうやって事前に図るんだろうと思ってみたり。主演の小菅怜衣さんやっぱりすげえな……と思ってみたり。さすが宇田川ポジションを狙っているだけのことはある。(ザ・ボイスアクターという作品で宇田川美樹さんしか演じたことがない役を再演があったら狙っているそうですよw)小林亜実さんを今まで見たことがなかったことを激しく後悔してみたり。(メガネ姿、良すぎやろ)瀬芭下嵐子を演じた夏陽りんこさんをXで見たら、めたくそ綺麗な方でびっくりしてみたり。そんなところですかね。せっかくならこのシリーズ最初から見たいなぁと思って、オンラインショップで過去作のDVDやら上演台本をポチってみました。届くのが楽しみですわ。観劇日4月2日