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イギリスの国民的人気バンド、デフ・レパードのドラマー、リック・アレン。



アルバム『炎のターゲット』で爆発的人気を得たバンドは4枚目のアルバム製作に躓く。



『炎のターゲット』は80年代のロック・バンドの其の後の雛型になる程の完成度を見せる結果を出した。



其れはバンドにとってもプロデューサのロバート・ジョン・マット・ラングにとっても重圧になる。



結果ロバート・ジョン・マット・ラングは途中降板する。



製作遅延の原因はもう一つ。ドラマー、リック・アレンの交通事故。



アレンは何年かは覚えていないが或る年の大晦日の夜中に泥酔して自動車を走行中に事故を起こす。



詳細は記憶して無いが車外に放り出された際に左腕が車内の何処かに引っ掛かったのかこの時彼の左腕は肩から千切れて仕舞う。



大晦日で人通りの少ない中、不幸中の幸いは偶然事故現場付近を夜勤帰りの看護師が通り掛かった事。



彼女は寝静まった近隣住民を次々と叩き起こしてアレンを応急処置すると同時に救急要請して其の上で容器と水と有りったけの氷をかき集め車内に残された左腕を低温保存すると同時に雑菌を洗い流す。正にプロの仕事。



其の甲斐有ってか長時間を掛けた接合手術は成功する。



命を取り留め左腕も無事接合。此処迄は良かった。



接合部位は骨、靭帯、筋肉、血管、神経共に術後の経過は順調。



一見問題は回避出来たかに見えたが、肘から指先迄が動かない。



多分でしか書け無いのだが血流が行き渡らなくて壊死を起こしたのではないかと思う。違ってたら御免なさい。



結局、医師達は生命維持に関わるとして人為的かつ外科的処置でアレンの左腕を切り離す。



これでアレンは演奏家生命を絶たれたと誰もが思う。当然だろう。



プロデューサのロバート・ジョン・マット・ラングが復帰して4枚目のアルバム製作の報が伝わる。



アレンは現場復帰したと伝わるがレコーディング技術に依るオヴァーダビング(多重録音)で録音を済ましたかサポート・ドラマーの助けを借りたと噂される。


アルバム『ヒステリア』完成。結果、シングル盤を除くアルバムだけで1600万枚を売り上げる。



バンドはこのアルバムをサポートするツアーの前にウォーミング・アップのライヴを行う。



この時具体的なサポート・ドラマーの名前迄報道されていたらしい・・・が、



ステージ上に現れたのは5人のメンバーのみ。



アレンはエレクトリック・ドラム・セットを駆使して全曲を一人で演奏する。



彼はエレクトリック・ドラムを使い失った左腕の代わりに左脚でエレクトリック・ドラムを鳴らす複数のペダルを踏み分けて演奏したのだ。



恐らくシモンズ社のセットなのだろうが、隻腕で演奏可能なドラム・セットを共同開発してライヴでも現場復帰を果たす。



其の後のアレンのドラム・セットはアコースティックなドラムへと変遷を重ねる。



エレクトリック・ドラムは故障が多くパッドの打面は硬く腕の故障に繋がり易い。何寄りアコースティック・ドラムの様な繊細なニュアンスは出ない。



現在のアレンのドラム・セットは正面から見ると普通のドラム・セットと変わり無く見える。



過酷な訓練を重ねフット・ペダルを腕の様に使い熟す迄に至った彼が再びアコースティック・ドラム・セットを使えるとは考え難いが・・・



より進歩を遂げたエレクトロニクス技術を組み込んで演奏家として邁進しているのではないかと思う。



ハンディキャップを己の個性として受け入れて、良い意味で諦めが悪いにも度が過ぎる男、リック・アレン。



其の彼を支えて、尚且つ彼を必要し続けるバンド・メイト達。



僕には其んな強さも気力も無い。情け無いが事実だ。あの強靭さが欲しい。



だからこそ憧れの人であり僕のヒーローの一人で有る。



彼達は僕にとっての等身大のヒーロー。