本日も読み終えた1冊から。久々の活字です(笑)。
『猫はわかっている』
文春文庫から発売された“猫”をテーマにした短編アンソロジー集。大好きな作家・望月麻衣さんが寄稿しているので購入してみました。
(ちなみに望月さん以外の作家さんの作品は失礼ながら…読んだことがありません…。)
収録されているのは全部で7作品。まがりなりにも「本レビュー」というジャンルに御招待いただいている身なので、たまにはレビューっぽい記事を書いてみようと思います…(笑)。
①「世界を取り戻す」村山由佳
タイトルは、主人公は40代後半の女性編集者が物語終盤で口にしたセリフ。
ここに行きつくまでに“猫”がどう絡んでくるか…?さらっと読むと関係なさそうで実は関係がある…という絶妙な距離感が印象的でした。
②「女か猫か」有栖川有栖
ある晩発生した奇怪な事件の鍵を握るのは、“猫”…?
小説内に出てくる架空のアマチュア・バンドが実在したら、かなり格好よさそう…(笑)。サウンドが聴こえてくるような描写が印象的でした!
③「50万の猫と7センチ」阿部智里
とある一家が、ひょんなきっかけで出会った“野良猫”。つかず離れずだった互いの距離は徐々に近づくものの、ある日大事件が!
タイトルの「50万」と「7センチ」の意味を知ったときは、思わず吹き出しました(笑)。
④「双胎の爪」長岡弘樹
登場するのは離婚を控えた家庭。まもなく別居する…という時期に妻が1匹の“野良猫”を保護した目的は…?
ひと昔前の昼ドラを彷彿とさせる人間のエゴや闇を感じる作品。正直後味はあまりよくないのですが、それ故に印象にも残ります。
⑤「名前がありすぎる」カツセマサヒコ
生活に困窮した女子大生が、やむなくガールズバーでバイトをすることに。オーナーから「源氏名」を考えるよう言われたとき、彼女の脳裏に浮かんだのは、かつて飼っていた“猫”のことだった…。
収録作の中では一番尖った印象のある作品なのですが、主人公が飼っていた猫の名前が、その昔ウチで飼っていた猫と同じなので、妙なシンパシーを抱いてしまいました(笑)。
⑥「猫とビデオテープ」嶋津輝
ネットニュースで大学時代の同級生が水難事故に遭ったことを知った主人公。脳裏に浮かぶのは同級生との出会いの場であったレンタルビデオ店にあった、1本のビデオ・テープ…。
本作で“猫”は、主人公が同級生から託されて飼っている存在であると同時に、脳裏に浮かんだビデオ・テープのタイトルにも出てくるのですが、そのギャップが…秀逸すぎ(笑)。
⑦「幸せなシモベ」望月麻衣
妊娠をきっかけに“猫アレルギー”を発症した姉からの依頼により、期間限定で“猫”を預かることになった主人公。彼女がその“猫”との共同生活で見出したものは…?
エンタメ性を保ちつつ「自分とは何か?」というテーマを読み手に圧をを感じさせない程度に投げかけてくるのは望月作品の魅力の1つだと思っているのですが、本作でも「猫を(一時的に)飼う」というシチュエーションから、自分という存在を再発見する主人公の姿を通じて「自分とは何か?」というテーマを投げかけ、「例えば、こんな目線もあるんですよ…」と誘ってくれているように感じました。
ちなみにこの作品、望月さんが愛猫・レオと出会って感じたことをモチーフにしておられるのだそうです。
作家さんが、これだけ多種多様なテーマで物語を紡ぎ出すことができるのもまた、“猫”の魅力なんでしょうね♪