憂国のモリアーティ(12) / 竹内良輔×三好輝 | jakeのブログ 

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読み終えた1冊から。

竹内良輔×三好輝『憂国のモリアーティ(12)』 

 

表紙を飾るのはスコットランド・ヤードが誇る熱血漢レストレード警部!とはいえ、残念ながらこの12巻では表紙以外に出番がないという…(笑)

 

さて。12巻に収録されているエピソードは恐喝王チャールズ・オーガスタス・ミルヴァ―トンとモリアーティ、ホームズの三つ巴の対決を描いた「犯人は二人」

コナン・ドイルの同名作品(※1)を下地にしつつも『憂国のモリアーティ』の世界観ならではのスリリングさと勇壮さ、そしてなんとも切ない悲壮感も漂う…。そんな、シリーズ中でも屈指の重厚な物語になっています。

 

ところで、ドイル作品におけるホームズは基本的にイギリス紳士ですし、事件解決の手段は類いまれなる観察力と推理能力を駆使することにあるのですが、その一方で、事件解決のためなら犯罪行為も厭わないという独善的な考え方も持っており、原作の「犯人は二人」ではミルヴァ―トン家の内情を探るために同家の家政婦アガサを騙して婚約(!)したり、住居に不法侵入したり…といった大胆な行動をとっています(ある意味、そんなエキセントリック・ホームズが、同作の魅力でもあったりしますが…)

 

では、ドイル作品以上にエキセントリックな設定になっている『憂国のモリアーティ』版ホームズが、本エピソードでとった行動は…?

その行動の源泉にあるものが、ワトソンとの友情ってところが、なんとも泣かせます。

 

一方、ホームズとミルヴァ―トンの対決を見届けたモリアーティはというと、「二人の探偵」」第1幕(第4巻収録)でホームズに対して不敵な笑みを浮かべて発したあの名台詞を、喜怒哀楽の感情すべてを包括したかのようななんとも複雑な笑みを浮かべて再び言い放ち自身の野望の総仕上げにかかる覚悟を固めた様子。

いよいよ第1巻冒頭に登場したあのシーン…モリアーティとホームズが「そのとき」を迎えるまでのカウントダウンが始まるようです。

 

それは物語が最高潮を迎える時であるとともに、『憂国のモリアーティ』という物語のおわりを迎える時でもある。ファンとしては非常に複雑な心境ではあります…。

 

でも…。

 

見届けたいですね。絶対に(笑)

 

 

☆余談

ホームズvsミルヴァ―トン、そしてホームズとワトソンの友情といえば、BBCドラマ『シャーロック』シーズン3 第3作「最後の誓い」も秀逸なドラマ!

今回ピックアップした『憂国のモリアーティ』第12巻の第 幕に、おそらくこのドラマに感化されたんだろう…と思しきシーンも登場していて、ついニヤリとしちゃいました。

 

そういえば、こちらのホームズもワトソンのために、ミルヴァ―トンに対して一線超えちゃうんですよね…。原作のホームズって、たしかに悪人にはまったく容赦しないし前述のとおり事件解決のために犯罪も厭わないというキャラクターでもあるのですが、一線を越えたのはあの宿敵ただひとりですし、それだって当初は“相打ち”だったんですよね(※2)

 

『憂国のモリアーティ』にしても『シャーロック』にしても、ホームズが一線を超えるに至るまでの作り込みが見事なので、とても読み応え・見応えがあったのですが個人的には「それ、やっちゃったかぁ…」という感じもありました。

もっとも、ドイル原作と比較してどうこう…なんて言い出したら、パスティーシュは楽しめないですし、両作品とも独自の世界観を保ちつつも原作への愛情・尊敬の念を端々から感じる良作には違いありません!2次創作ならでは醍醐味を存分に楽しみたいと思います。

 

以上、本編並みの長さとなった余談でございました(笑)

 

 

※1…僕が所有する新潮文庫版では「犯人は二人」ですが、英語タイトルが“The Adventure of Charles Augustus Milverton"であることから、「チャールズ・オーガスタス・ミルヴァ―トン」「恐喝王ミルヴァ―トン」と訳しているものもあります。

 

※2…「最後の事件」参照。これが後に発表された「空き家の冒険」により“正当防衛”になります。非常に苦しい設定ではあったのですが、このおかげでファンは引き続きホームズ物語を楽しめるようになったワケですね。

ちなみにドイルがホームズ物語を書くことに嫌気がさして終止符を打つべく書いた作品が「最後の事件」で、復活を望むファンの熱さと圧(笑)に根負けするようなカタチでホームズ復活第1弾として書いた作品が「空き家の冒険」。

は作品数は復活後のほうがちょっとだけ多かったりします。