読み終えた1冊から。
『弱くても勝てます:開成高校野球部のセオリー』。何年か前に、ある業界誌に掲載されていた紹介記事が気になり、いつか読もうと思っていたノンフィクション作品です。
実のところ、高校野球は全く興味ないですし(誤解を恐れずに言えば、むしろ嫌いです)、高校の学校名にもとんと疎く「ところで、開成高校ってどんな学校なの?」なんて状態なので、読み始める前は不安でしたが、流麗な文章のおかげで、とても読みやすかったです。
何より登場する顧問の先生の割り切った考え方や弱いなりにも結果を出す為の徹底した戦術、生徒たちの年齢不相応な(笑)考え方や言い分が面白くて、時間を忘れて最後までイッキ読みしてしまいました。
『弱くても弱いなりに戦う方法がある!』という言葉は、ともすると精神論になりがちですが、これを実践し結果を出すために必要なことが、ちりばめられているように思います。
こう書くと『弱くても弱いなりに戦う方法がある!』の“実例”が楽しくわかる本で(僕自身も読む前は僕自身もそう思っていましたが)、タイトルからも弱小野球部が成し遂げた眩いサクセス・ストーリーのような印象を受けますが、さにあらず。
眩さの欠片もない、とてもシビアで泥臭い本です。
実際には、とても地道な試行錯誤の繰り返し。賢い生徒ゆえに頭でっかちになってしまったり、やるべきことに対する認識が食い違って苛立つこともあれば、セオリーどおりじゃないことをやるが故の衝突もある。
彼らなりの最大限の努力と準備を積み重ねて臨んだ試合も、必ずしも思惑どおりにいかないのが現実。
そういったシビアで泥臭い部分、思惑どおりでなかった面も丁寧に取材してありますし、それを過度に美化せず「事実は事実」としてしっかり書いてある部分に好感が持てました。
イメージとは裏腹。とても凄みのあるノンフィクション作品でした。
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「弱くても勝てます」: 開成高校野球部のセオリー (新潮文庫)
529円
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