*ニコラ君の新学期 ー 学食ー* | ミスター・ビーンのお気楽ブログ

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学食
プチ・ニコラ
 小学校には学食があるんだ。そして、校内でお昼を食べる生徒がいるんだよ。彼らは半寄宿生って呼ばれてる。僕やクラスの他の仲間たちは家に戻ってお昼を食べるのさ。学校に残るのはウードだけだけど、それは家がかなり遠くにあるからなんだ。
 だから、昨日パパとママが今日の僕のお昼は学校で食べることになるって言ったとき、僕はびっくりしたし、嬉しくなかった。
 「パパとママは、明日はお出かけしなきゃならないの」って、ママが僕に言ったのさ。「私たちは殆ど丸一日留守をすることになるの。だからね、坊や、一度だけ坊やに学校でお昼を食べてもらおうって考えたの。」
 それで、僕の方は泣き出して、こんな風に叫び出したんだ。学校でなんかお昼を食べない、ひどいじゃないか、食事はすごくまずいに決まってる、一日中校内にいるなんてまっぴらだ、もし無理強いしたら、僕は病気になって、家出して、死んでしまう、そしたらみんな僕がいないことをすごく寂しがるようになるんだってね。
 「まあまあ、坊や、聞き分けておくれ」ってパパが言った。「一度だけなんだからね。それに、ニコラはどこかで食事をしなきゃならんだろう。君を一緒に連れて行くわけにはいかないんだから。それに、きっと学食の食事はすごくおいしいよ。」
 僕の方はますます泣きじゃくって、こう言ったんだ。学校では、肉には脂身がたっぷりあって、脂身を食べない生徒はぶたれるっていううわさだよ。学校に残るくらいなら、何にも食べない方がましだいって。パパは頭を掻いてママの方を見た。
 「どうしたものかね?」ってパパはママに訊いた。
 「どうしようもないわ」ってママが答えた。「学校にはもう知らせてあるし、ニコラだってもう物が分かる年頃よ。それに、どっちみちこの経験はあの子にとって害にはならないわ。今度のことで家の食事の有難味を分かってくれるでしょう。さあさあニコラ、お利口にしてちょうだい。もう泣かないで、ママにキスしてよ。」
 僕は少しの間ふくれっ面をした。それから、泣いてももう何の役にもたたないって分かったんだ。だから僕はママにキスして、次にパパにキスしてあげた。すると二人はおもちゃを山ほど買って来てあげるって約束してくれた。二人ともすごく喜んでいたよ。

今朝登校したとき、悲しくて僕はすごく喉がつかえて、大泣きしたい気分だった。
 どうしたのって訊くクラスメートには「お昼は家に帰らずに学食で食べるんだ。」って説明した。
 「ナイス!」ってウードが言った。「同じテーブルになるようにしようぜ。」
 で、僕が泣き出すと、アルセストが自分のクロワッサンの切れ端を少しくれたんだ。それで僕はすごくびっくりしちゃって泣き止んだのさ。だってアルセストが少しでも人に食べ物をくれるのを見るのは初めてだもの。それで後は、午前中ずっと僕は泣く気にはならなかった。すごく楽しかったからね。
 正午になって、クラスのみんながお昼を食べに家に戻っていくのを見ると、また悲しくなって喉がつかえちゃったんだ。僕は壁の方に行って壁にもたれた。ウードとビー玉遊びなんかする気分じゃなかったからね。それから鐘が鳴って、僕らは学食の前に行って整列した。変な並び方なんだ、食事の列は。普段とは違うんだよ。何故って、全てのクラスがごっちゃになっていて、殆ど知らない連中と一緒に並ぶんだ。運良く、ウードとは一緒だった。それから前にいた奴が振り返って僕にこう言ったんだ。
 「ソーセージ、ピュレ、ロースト肉、それにフランだ。後ろに伝えて。」
 ウードに伝えてやると、「ナイス!」ってウードは叫んだ。「フランが出るんだ!すごいじゃないか!」
 「少し静かに並びなさい!」ってブイヨンが叫んだ。ブイヨンていうのは、生活指導の先生のあだ名だよ。
 それからブイヨンはこっちにやって来て、僕を見かけるとこう言ったんだ。
 「ああ、本当だ!今日はニコラもお仲間だな!」
 そう言って、ブイヨンは僕の髪を片手でなでて、ニコニコ顔になった。それから押し合いへし合いしてる二人の中学年の生徒を引き離しに行ったんだ。ときどきすごく優しくなるんだ、ブイヨンは。
 それから列が前に進んで、僕らは学食の中に入った。学食はかなり広くて、テーブルが並んでいて、一つのテーブルの周りには椅子が8個あるんだよ。


プチ二コラ

 「早く来いよ!」ってウードが僕に言った。
ウードについて行くと、彼のテーブルは席が全部ふさがっていたんだ。僕はすごく困ってしまった。何故って、知り合いのいないテーブルになんて行きたくなかったからね。すると、ウードが人差し指を上げてブイヨンを呼んだ。
 「先生、先生!ニコラが僕の横に座ってもいいですか?」
 「もちろんだよ」ってブイヨンが答えた。「今日のお客の席がどこでもいいってわけにはいかないからな。バジル、今日は君の席をニコラに譲りなさい…みんな、静かに!」
 それで、上級生のバジルは自分のナプキンと薬を持って、別のテーブルに行って座ったんだ。僕の方は、ウードの横に座れてすごく嬉しかった。ウードっていい奴だからね、でもお腹は全然空いてなかったんだ。調理場で働いてるおばさんが二人、パンが一杯入った籠を運んで通った時、僕は一個もらったんだけど、もしパンを取らないと罰を喰らうのがこわかったからだよ。それからソーセージが運ばれた。僕が好きなタイプのソーセージだよ。
 「みんな、話をしてよろしい」ってブイヨンが言った。「ただし騒がしくしないように。」
 すると、みんなが一斉に大声で話し出した。それに、僕らの正面に座ってる奴には笑っちゃったよ。寄り目をして、顔にソーセージを入れる口がみつからない振りをやり始めたからね。それからピュレを添えたロースト肉が運ばれてきた。パンがまた配られたのはよかったな。何故って、ソースを拭うにはうってつけだもの。
 「ピュレをおかわりしたい人は?」って給食のおばさんが訊いた。
 「はーい!」って全員が叫んだよ。
プチ・ニコラ

 「少し静粛に」ってブイヨンが言った。「でなきゃ、おしゃべり禁止だ。分かったかい?」
 でもみんなおしゃべりを続けたんだ。ブイヨンは休み時間より食事の時間の方がずっと優しいからだよ。それからフランを食べたんだけど、こいつがメッチャおいしかった!僕はピュレの時のようにフランもおかわりしたのさ。
 昼食の後僕らは校庭に出て、ウードと僕はビー玉をやった。クラスメートが自宅から戻って来た時には、僕はもう3個も稼いでいた。だからみんなの姿を見たとき、僕はちょっとうんざりしたんだ。だって、みんなが来れば、また教室に戻るってことだからね。

家に帰ると、ママとパパはもう戻っていた。二人の顔を見て僕はすごく嬉しくなって、僕たちは山ほどキスをしたんだ。
 「それで、坊や」ってママが僕に訊いた。「学校のお昼はそれほどひどくなかったでしょう?何を食べさせてもらったの?」
 「ソーセージと」って僕は答えた。「ロースト肉のピュレ添えだよ…」
 「ピュレ添えですって?」ってママが言った。「まあ、かわいそうに、坊やはピュレが大嫌いだし、家じゃ決して食べないものね…」
 「でも、あのピュレはとても素敵だったんだ」って僕は説明してあげた。「それにソースもあったし、僕らを笑わせてくれる変な奴もいたんだよ。だから僕はピュレをおかわりしちゃった。」
 ママは僕をじっと見て、こう言ったんだ。これからスーツケースの中身を出して、夕食の仕度をしてくるって。
 食事のとき、ママは旅行のせいでとても疲れているように見えた。それから、ママはでっかいチョコレート・ケーキを運んで来たんだ。
 「ねえ、見てよ、ニコラ!」ってママが僕に言った。「坊やのために買ってきた素敵なデザートを見てちょうだい!」
 「わーい!」って僕は叫んだ。「ねえねえ、お昼のときもすごかったんだよ。すっごく美味しいフランが出たんだ!ピュレだけじゃなく、フランもおかわりしちゃった。」
 するとママがこう言ったんだ。しんどい一日だった、みんながピリピリしていたし、だから食器洗いは明日やることにして、すぐに上に行って寝るわって。
「ママは具合が悪いの?」すごく心配になって僕はパパに訊いたんだ。
 パパは笑って、僕のほっぺを軽くたたいてこう言ったよ。
 「心配いらんさ、坊や。きっとお前さんがお昼に食べたものでママは胃がもたれているのさ。」


プチ・ニコラ

(ミスター・ビーン訳)

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