*オールマン・リヴァー Ol' Man River* | ミスター・ビーンのお気楽ブログ

ミスター・ビーンのお気楽ブログ

好きな音楽の話題を中心に、気の向くままに書いていきます。

【1960~1970年③】
若い頃からシナトラは、アフリカ系アメリカ人への共感を示し、生涯公私にわたり黒人の平等権獲得を援助するために尽力してきました。1960年代にはネバダ州のホテルやカジノの黒人差別撤廃に大きな役割を果たしています。

1961年1月27日、シナトラはマーチン・ルーサー・キングJr.(Martin Luther King, Jr.)のための慈善公演をカーネギー・ホールで行い、また、シナトラ軍団(Rat Pack members)やリプリーズ・レコードの仲間たちの先頭に立ち、黒人の興行主や芸人の入場を拒否するホテルやカジノをボイコットしました。

シナトラは、しばしばステージから差別撤廃について語り、キング牧師とその活動を援助するために繰り返し慈善公演を行いました。

シナトラの息子、フランク・シナトラJr.によると、1963年のあるコンサートでシナトラが「オールマンリヴァー(Ol' Man River)」(ミュージカル「ショー・ボート(Show Boat)」の名曲で、黒人の荷揚げ人足が歌っている)を歌ったとき、客席にいたキング牧師は涙を流して座っていたということです。

シナトラというと、生前なにかとマフィアとの黒い噂が絶えずダーティーなイメージがついてまわりましたが、こういう一面もあったのだということは銘記しておきたいですね。
彼自身、イタリア系移民の子供ということで幼い頃から影に日向に差別を受けてきたので、当時それ以上に酷い差別を受けていたアフリカ系アメリカ人に対する深い同情と共感がこうした活動の根底にあったのでしょう。

sinatra



さて、今日の曲はシナトラが歌う

「オールマン・リヴァー(Ol' Man River)」

ミュージカル「ショー・ボート」の代名詞ともいえる名曲です。
このミュージカルは人種問題を扱ったエドナー・ファーバーの小説「ショウ・ボート」を原作に1927年ブロードウェイで初演、その後1929年、1936年、さらに1951年と3度映画化されました。

音楽はジェローム・カーン、脚本はオスカー・ハマースタインⅡ世が担当。特に1951年MGMのテクニカル・カラー映画版が最もよく知られています。

私のブログでも、その1951年映画版を中心に9回にわたりこのミュージカルを紹介しておりますので(ブログテーマ・タイトル「ショー・ボート」)、宜しければご覧ください。
因みに、シナトラは、1951年この映画に出演した名女優エヴァ・ガードナーと結婚、1957年に離婚しています。

シナトラ版は若い頃のヴァージョン(1946年)と熟年になってからのヴァージョン(おそらく1960年代後半)の二つを用意しましたが、後者の歌うというよりは黒人の苦悩を語りかけてくるようなヴァージョンは特に聴き手に深い感銘を与えてくれます。キング牧師が涙を流したのは無論この後者のヴァージョンであったにちがいありません。




Ol' Man River
Dere's an ol' man called de Mississippi
Dat's de ol' man dat I'd like to be!
What does he care if de world's got troubles?
What does he care if de land ain't free?


ミシシッピと呼ばれている親爺がいる
俺もあんな親爺になりたいもんだ
面倒なことが起きても悠々としている
自由がなくたって悠々と構えている


Ol' man river,
Dat ol' man river
He mus'know sumpin'
But don't say nuthin',
He jes'keeps rollin'
He keeps on rollin' along.


オール・マン・リヴァー
ミシシッピの親爺は
真実をちゃんと分かっているが
一言だって口にはしない
川は静かに流れていくのさ
ただどこまでも流れ続ける


He don' plant taters,
He don't plant cotton,
An' dem dat plants'em
is soon forgotten,
But ol'man river,
He jes keeps rollin'along.


川はポテトも植えなきゃ
綿も植えない
植えてる人間は
じきに忘れられちまうが
ミシシッピの親爺は
ただどこまでも流れ続ける


You an'me, we sweat an' strain,
Body all achin' an' racket wid pain,
Tote dat barge!
Lif' dat bale!
Git a little drunk
An' you land in jail.


俺たちゃ汗にまみれて苦労して
身体は痛み苦痛に呻く
荷船を引っ張り
荷物を上げる
酒などくらえば
監獄行きだ


Ah gits weary
An' sick of tryin'
Ah'm tired of livin'
An' skeered of dyin',
But ol' man river,
He jes'keeps rolling' along.


身体はへとへと
やるきも失せて
生きていくのも嫌気がさすが
だからといって死ぬのも怖い
それでもミシシッピの親爺は
ただどこまでも流れ続ける


(ミスタービーン訳)


フランク・シナトラ(1946年)


フランク・シナトラ


1951年映画版


サミュエル・レイミー


ペタしてね