*野薔薇* | ミスター・ビーンのお気楽ブログ

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詩人、三木露風は深刻な孤独と憂愁の思いから逃れるために、函館の男子トラピスト修道院を度々訪れました。

1917年、彼が二度目にそこを訪れたとき、修道院に帰る院長と偶然出会い、修道院への道すがら、院長から海岸沿いの険しい小道に咲く赤い野薔薇がハマナスであることを教えられました。

人知れず咲く美しい野薔薇の姿に神の教えを知るというこの詩はそのときの体験から生まれたものです。
露風の詩集「蘆間の幻影」では「賢きのばら」という題名でこの詩が収められています。

露風はトラピスト修道院の絵葉書の余白にこの詩を書き添えて山田耕筰に送り、耕筰が曲をつけたということです。

どこかドイツリートを思わせる清冽で簡素なこの曲を、今日はソプラノの中沢桂さんの独唱で聴いてみます。


函館トラピスト修道院


野薔薇
1.
野ばら 野ばら
蝦夷地の 野ばら
人こそ知らね
あふれ咲く
色もうるわし
野のうばら
蝦夷地の 野ばら

2.
野ばら 野ばら
かしこき 野ばら
神の御旨(みむね)を
あやまたぬ
曠野(あらの)の花に
知る教え
かしこき野ばら


中沢 桂


志摩大喜







ところで、「野薔薇」というとゲーテの詩にシューベルトが作曲した曲はあまりにも有名ですね。
今日はそちらの方もアップしてみます。



Heidenröslein
Sah ein Knab' ein Röslein stehn,
Röslein auf der Heiden,
War so jung und morgenschön,
Lief er schnell, es nah zu sehn,
Sah's mit vielen Freuden.
Röslein, Röslein, Röslein rot,
Röslein auf der Heiden.

Knabe sprach: Ich breche dich,
Röslein auf der Heiden!
Röslein sprach: Ich steche dich,
Daß du ewig denkst an mich,
Und ich will's nicht leiden.
Röslein, Röslein, Röslein rot,
Röslein auf der Heiden.

Und der wilde Knabe brach's
Röslein auf der Heiden;
Röslein wehrte sich und stach,
Half ihm doch kein Weh und Ach,
Mußt' es eben leiden.
Röslein, Röslein, Röslein rot,
Röslein auf der Heiden.



野にひともと薔薇が咲いていました。
そのみずみずしさ 美しさ。
少年はそれを見るより走りより
心はずませ眺めました。
あかいばら 野ばらよ。

「おまえを折るよ、あかい野ばら」
「折るなら刺します。
いついつまでもお忘れないように。
けれどわたし折られたりするものですか」
あかいばら 野ばらよ。

少年はかまわず花に手をかけました。
野ばらはふせいで刺しました。
けれど歎きやためいきもむだでした。
ばらは折られてしまったのです。
赤いばら 野ばらよ。


訳:手塚 富雄


Dietrich Fischer-Dieskau, bariton. Gerald Moore, piano.


Barbara Bonney


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