*星の王子さま 翻訳(第16章~第20章)* | ミスター・ビーンのお気楽ブログ

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星の王子さま

$ミスター・ビーンのお気楽ブログ-星の王子さま序文

朗読 ベルナール・ジロドー  1時間19秒から1時間9分55秒まで 



第16章
そこで、王子が7番目に訪れた惑星は地球でした。

地球は並の惑星ではありません。そこには111人の王様(無論、黒人の王様も忘れていません)、7千人の地理学者、90万人のビジネスマン、750万人の酔っ払い、3億1千100万人の自惚れ屋、つまりおよそ20億人の大人がいるのです。

地球の大きさを分かってもらうために、こう言っておきましょう。電気が発明される前は6大陸全体で、まことに大量の街灯点灯人、つまり46万2千511人の点灯人を養わなければならなかったのです。

少し遠くから眺(なが)めると、それは本当に眩(まばゆ)い光景でした。この大集団の動きはオペラバレーの集団のようにきちんと決められていたのです。先ず最初に登場するのは、ニュージーランドとオーストラリアの点灯人たち。受け持ちのランプに灯をともしたら、彼らは舞台を去り眠ります。すると今度は、中国とシベリアの点灯人たちが光のダンスの舞台に登場します。そして彼らも舞台裏に引っ込みます。すると次はロシアとインドの点灯人の登場。次にアフリカとヨーロッパの点灯人。それから南アメリカの点灯人。最後に北アメリカの点灯人の登場です。そして点灯人たちは決して舞台入りの順番を間違えることはありません。それはそれは壮大な眺めでした。

ただ、街灯が1本しかない北極の点灯人と南極の点灯人だけは、暇でのんびりした生活を送っていました。彼らは年に2回だけ仕事をしたのです。




第17章
気の利いたことを言いたくなると、人は少々嘘をつくことがあります。街灯点灯人の話をしたとき僕はあまり正直ではなかったのです。そこで、地球を知らない人々に我々の惑星について誤ったイメージを与えるかもしれません。実は、人間は地球のごくわずかな場所しか占めていないのです。もし地球に住む20億の住民が、集会に集まるときのように少し間を詰めて立っていれば、縦(たて)横20マイルの広場に楽々収容されるでしょう。太平洋に浮かぶ最も取るに足らない小島に人類全体を押し込めることもできそうです。

無論、大人はそんな話は信じないでしょう。彼らは自分たちが大きな場所を占めていると思い込んでいるのだから。つまり、自分たちはバオバブのように大したものだと思っています。そこで大人には計算してみるように勧めてみてください。大人は数字が大好きですから、喜ぶと思いますよ。しかし、読者諸君は、そんな退屈な仕事で時間をつぶさないことです。むだですから。私を信用することです。

そんなわけで、王子も地上に降り立つと、人影が無いことにひどく驚きました。惑星を間違えたのではないかと心配になったのです。でもそのとき、砂の中で月のような色をした輪が動きました。

「おやすみ。」念のために、王子は声をかけました。

「おやすみ。」と、蛇が答えました。

「僕は何という惑星に降りたんだろう?」と、王子は尋(たず)ねます。

「地球さ、アフリカだよ。」と、蛇が答えます。
$ミスター・ビーンのお気楽ブログ-第17章(1)
「ああ!… じゃ、地球にはだれもいないの?」

「ここは砂漠さ。砂漠にはだれもいないよ。地球は大きいんだ。」と、蛇が答えました。

王子は石の上に座って、空を見上げました。

「僕は思うんだ」と、王子が言いました。「星が光っているのは、皆一人一人がそのおかげでいつか自分の星を見つけられるようになるからじゃないかとね。僕の惑星を見てごらんよ。僕らの真上にある… でも何て遠くにあるんだろう!」

「美しいね」と、蛇は言いました。「君はこの地球に何しに来たの?」

「花といろいろあってね。」と、王子は答えました。

「へえー。」と、蛇は言いました。

それから二人は黙りこみました。

「人間はどこにいるの?」とうとう王子は口を開きました。「砂漠にいるとちょっと孤独だね…」

「人間の中にいても孤独さ。」と、蛇が答えました。

王子は長い間じっと蛇を見つめました。

「君は面白い動物だね」とうとう王子は言いました。「指のように細いし…」
$ミスター・ビーンのお気楽ブログ-第17章(2)

「でも、僕は王様の指より強いのさ。」と、蛇が言いました。

王子は微笑みました。

「君はあまり強くないよ… 足だってないし… 旅だってできないし…」

「僕は船よりも遠くに君を運ぶことも出来るさ。」と、蛇は言いました。

蛇は、金のブレスレットのように王子のくるぶしに巻きつきました。

「僕は、僕がさわった者を、そいつが出てきた地面に帰してやるのさ」と、さらに蛇は言いました。「でも君は純粋で、星から来た人だし…」

王子は何も答えませんでした。

「君を見ていると可哀相(かわいそう)になる。そんなに弱いのに、この無慈悲な地球にいるんだからね。もしいつか君が、自分の惑星が恋しくてたまらなくなったら君を助けてあげられるよ。僕には出来るんだよ…」

「ああ!よく分かったよ」と、王子はいいました。「でも君はなぜいつも謎めいことを言うの?」

「僕は全ての謎を解くのさ。」と、蛇は答えました。

そして、二人はまた黙りこみました。



星の王子様 第18章
王子は砂漠を横切りましたが、出会ったのは花1本だけでした。花びらが三枚の取るに足りない花です...

$ミスター・ビーンのお気楽ブログ-第18章

「こんにちは。」と、王子が言いました。

「こんにちは。」と、花が答えました。

「人間はどこにいるのですか?」王子は礼儀正しい口調で尋(たず)ねました。

花は、ある日、キャラヴァンが通るのを見ていました。

「人間?いると思うわ、6,7人ね。何年か前に見かけたわ。でも、どこにいるのかは決して分からない。風の吹くまま気の向くままだからね。彼らは根無し草なのよ、それでずいぶん苦労しているわ。」

「さようなら(アディウ)。」と、王子は言いました。

「さようなら(アディウ)。」と、花が答えました。




第19章
王子はある高い山に登りました。王子がそれまで知っていた山と言えば、王子の膝の高さ程しかない三つの火山だけでした。そのうちの一つ、死火山はスツール代わりに使っていたのです。そこで、王子は思いました。「こんな高い山からなら、地球全体と全ての人間を一目で見渡せるな…」しかし、王子の目には、とても鋭い針のような岩山しか映りませんでした。

$ミスター・ビーンのお気楽ブログ-第19章

「こんにちは。」王子は念のために言ってみました。

「こんにちは...こんにちは...こんにちは...」と、木霊(こだま)が答えました。

「君たちはだれ?」と、王子は言いました。

「君たちはだれ...君たちはだれ...君たちはだれ...」と、木霊が答えました。

「僕の友達になって、一人ぼっちなんだ。」と、王子は言いました。

「一人ぼっちなんだ...一人ぼっちなんだ...一人ぼっちなんだ...」と、木霊が答えました。

「なんておかしな惑星なんだ!」と、そのとき王子は思いました。「ひどく乾燥していて、えらく尖っていて、やけに塩っ辛い。おまけに住民は想像力に欠けている。言われたことをただ繰り返している... 僕の惑星には花がいたなあ。いつも最初に口を開くのは彼女だった...」




第20章
しかし、砂漠を超え、岩山を超え、雪原を超えて長い間歩いた末に、王子はついに道を一つ発見しました。そして道は全て人間がいるところに通じているのです。

「こんにちは。」と、王子は言いました。

そこは、薔薇が咲き乱れている庭でした。

「こんにちは。」と、薔薇たちが答えました。

$ミスター・ビーンのお気楽ブログ-第20章(1)

王子は薔薇たちを眺(なが)めました。彼女たちは皆、王子のいた惑星のあの花に似ていました。

「君たちはだれ?」王子は、あっけにとられて尋(たず)ねました。

「私たちは薔薇よ。」と、花たちが答えました。

「ああ!」と、王子は言いました。

そして、王子は自分をとても不幸に感じたのです。彼の花は王子に、宇宙で薔薇は自分だけだと話していたからです。ところが、たった一つの庭に、5千本もの、皆似たような薔薇が咲いていたのでした。

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「もしあの子がこの様子を見たら」と、王子は思いました。「ずいぶん気を悪くするだろうな... すごく大きな咳をして、笑いものになりたくないって死んだふりをするかもしれない。そしたら僕はきっと、彼女を看病するふりをしなけりゃならないな。なぜって、そうしなければ、僕にも恥をかかせてやろうとあの子は本当に死んでしまうかもしれない...」

王子は更にこう思いました。「僕は宇宙でただ一つしかない花を持っている、だから自分は豊かだと思い込んでいた。でも、実は、普通の薔薇を1本持っているだけなんだ。あいつと膝までしかない三つの火山、おまけにその一つは永久に噴火しやしない。それじゃ大した王子とは言えないじゃないか...」そう思って、王子は草の中に寝そべり、涙を流しました。


(ミスター・ビーン訳)