*フランク・シナトラ(9)ー ビギン・ザ・ビギン ー* | ミスター・ビーンのお気楽ブログ

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【1950~1960年①】
2年間ステージを離れていたシナトラは、1950年1月12日、コネチカット州ハートフォードでコンサート・ステージに復帰します。ところが声の調子がおかしく、1950年4月26日のコカパバーナのステージでは声帯から出血。また、年齢も30代半ばにさしかかり、新たな十代の聴衆への魅力も衰えていきました。

この時期はシナトラにとって、深刻なスランプの時期でした。1951年2月のある日、シナトラはタイムズ・スクエアを渡り、パラマウント劇場の前を通り過ぎます。パラマウント劇場、そこは若い頃のシナトラが爆発的な成功を収めた場であったのです。ところが今は、劇場の正面の垂れ幕にはコンサート中のエディー・フィッシャーの名前が華々しく書かれています。そして劇場の前には新たな歌のアイドルに熱狂する十代の娘たちが群れていました。シナトラにとって、フィッシャーに対するこのあからさまな熱狂ぶりは、彼が長い間心に抱いていた不安を実証するものでした。
シナトラという星が落ち、あの「フランキー!」という叫び声は過去の木霊となったのです。

動揺し意気消沈したシナトラは急いで家に引き返し、キッチンのドアを閉めます。それからガス栓を開き、レンジの上に頭を横たえたのでした。程なく、友人がシナトラのアパートメントに戻って来ると、そこにはむせび泣きながら自分の人生を嘆くシナトラの姿がありました。
自分は完全な敗北者であり、自殺すらできないと言うのでした。




さて、今日の1曲は1946年、コロンビアレコードからシングル・リリースした

「ビギン・ザ・ビギン(Begin the Beguine)」

コール・ポーターが、ブロードウェイ・ミュージカル「ジュビリー」(1935年)の一曲として作曲した曲です。
この曲の歌詞に登場するビギン(Beguine)とは、西インド諸島フランス領マルティニックのダンス音楽で、社交ダンスとラテンの民族ダンスが融合して出来たダンスです。
このダンスはパリで流行し、世界中に広まって行きました。

今日は、シナトラの他にビング・クロスビー、アメリカの人気バリトン歌手、トーマス・ハンプソンの歌唱も聴いてみます。




Begin the Beguine
When they begin the beguine,
It brings back the sound of music so tender,
It brings back the night of tropical splendour,
It brings back a memory evergreen!


ビギンのリズムが始まると
あの優しい楽の調べがよみがえる
光鮮やかな熱帯の夜がよみがえる
色あせることのない思い出がよみがえる


I'm with you once more under the stars,
And down by the shore an orchestra's playin'
Even the palms seems to be swayin'
When they begin the beguine!


君と僕は再びあの星空の下にいる
そして浜辺ではオーケストラの響き
ビギンのリズムが始まると
ヤシの木さえ枝を揺らすように思えるのだ


To live it again is past all endeavour,
Except when that tune clutches my heart,
And there we are swearin' to love forever,
And promising never, never to part!


どうあがいても過去を蘇らせることは出来ぬにしても
あの調べが僕の心を捕えるときだけは
再び永遠(とわ)の愛を誓い
二度と別れはしないと誓うのだ


What moments divine, what raptures serene,
'Till clouds came along to disperse
the joys we had tasted . . .
Now, when I hear people curse
the chance that was wasted,
I know but too well what they mean!
So, don't let them begin the beguine,
Let the love that was once a fire remain an ember . . .
Let it sleep like the dead desire I only remember,
When they begin the beguine!


何と神々しい瞬間、何と静寂に溢れた恍惚
雲が現れ、僕らが味わった喜びを
吹き散らすまでは…
そして今、人々が
無駄にしたチャンスを呪うのを聞くと
その意味が痛いほど分かるのだ
だから、ビギンを演奏させてはだめなんだ
昔は炎と燃えた恋を熾火(おきび)のままにしておこう
昔の恋はその欲望をただの思い出として眠らせておこう
ビギンのリズムが始まるときは


Oh yes, let them begin the beguine, make them play!
'Till the stars that were there before return above you,
'Till you whisper to me once more, "Darling, I love you!"
And we suddenly know, what heaven we're in,
When they begin the beguine!
When they begin . . . the beguine!


そうとも、ビギンのリズムを始めるがいい、演奏するがいい
昔あった星々が再び君の頭上に現れるまで
君が僕に再びこうつぶやくまで、「あなた、愛してるわ」と
すると突然分かるのだ、僕らが素晴らしい天国にいることが
ビギンのリズムが始まると
ビギンのリズムが…始まると


(ミスター・ビーン訳)

シナトラ(1944年)


ビング・クロスビー


トーマス・ハンプソン