*シューマンの歌曲 (31)- 詩人の恋 第12曲、第13曲 ー* | ミスター・ビーンのお気楽ブログ

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≪デュッセルドルフ時代⑤≫
$ミスター・ビーンのお気楽ブログ-デュッセルドルフ、ライン河岸

シューマン夫妻は、1853年11月24日、「音楽協会」理事会との重苦しい確執
を逃れるようにオランダへ演奏旅行に出かけます。
オランダ各地では熱狂的歓迎を受け成功を収めました。
さらに1854年1月19日には、夫妻はハノーヴァーでコンサート・マスターを
しているヨアヒムのもとを訪れます。これがシューマン夫妻による最後の旅
になりました。

2月10日、シューマンは激痛を伴う耳鳴りに悩まされます。そして17日夜、「
天使が歌う」旋律を聴き変ホ長調の主題を書き写しました。シューマンはこの
旋律をシューベルトの霊によるものと受け取り、「≪天使の主題≫による五つ
の変奏曲」を作曲します。
これがシューマン最後の作品となり、妻クララに捧げられました。

2月26日、精神の変調に悩まされるシューマンは、クララを傷つけることを恐れ
精神病院に入ることを希望します。
しかし医師の説得によりその日の夜は自宅で過ごしますが、翌27日午後、雨の
中、自宅を飛び出しライン川に架かる橋から投身自殺を図ります。
幸い、近くにいた漁師に助けられ未遂に終わりますが、そのことはクララには
知らされず、シューマンは3月4日まで医師の監視の下自宅療養に努めます。
その間はクララとの面会も許されませんでした。

そして3月4日、シューマンの強い要請でボン郊外にあるエンデニヒ療養所へと
馬車で向かいます。
同行したのは医師と二人の従者だけで、妻クララの同行は許されませんでした。
クララが次にシューマンに会うのは2年後の1856年7月27日になります。

今日は前年にヨアヒムとの邂逅によって刺激を受け、作曲された

「ヴァイオリン協奏曲ニ短調」

その第1楽章をフランク・ペーター・ツィンマーマンのヴァイオリン、WDR交響
楽団(旧ケルン放送交響楽団)
の演奏で聴いてみます。






≪今日の1曲≫

今日の歌曲は歌曲集「詩人の恋」の第12曲

「Am leuchtenden Sommermorgen 光り輝く夏の日に」

それと第13曲

「Ich hab’ im Traum geweinet 僕は夢の中で泣きぬれた」

を聴いてみます。


12. Am leuchtenden Sommermorgen 光り輝く夏の日に
Am leuchtenden Sommermorgen
光り輝く夏の日に
Geh’ ich im Garten herum.
僕は庭を歩き回る。
Es flüstern und sprechen die Blumen,
花たちがささやき話しかけてきても、
Ich aber wandle stumm.
僕は黙って歩きつづける。

Es flüstern und sprechen die Blumen,
花たちはささやき話しかけてきて、
Und schaun mitleidig mich an:
気の毒そうに僕を見つめる-
"Sei unsrer Schwester nicht böse,
「わたしたちの妹を悪く思わないで、
Du trauriger blasser Mann!"
悲しみで青ざめたお人!」


13. Ich hab’ im Traum geweinet 僕は夢の中で泣きぬれた
Ich hab’ im Traum geweinet,
僕は夢の中で泣きぬれた、
Mir träumte, du lägest im Grab.
夢の中では、君は墓の中にいた。
Ich wachte auf, und die Träne
目が覚めても、涙が
Floß noch von der Wange herab.
まだ頬を流れていた。

Ich hab’ im Traum geweinet,
僕は夢の中で泣きぬれた、
Mir träumt’, du verließest mich.
夢の中でも、君は僕を捨て去った。
Ich wachte auf, und ich weinte
目が覚めても、僕はまだ
Noch lange bitterlich.
いつまでも激しく泣きつづけた。

Ich hab’ im Traum geweinet,
僕は夢の中で泣きぬれた、
Mir träumte, du wär’st mir noch gut.
夢の中では、君はまだ僕に優しかった。
Ich wachte auf, und noch immer
目が覚めても、いつまでもとめどなく
Strömt meine Tränenflut.
涙が溢れ流れた。


フィッシャー=ディースカウ(Bar.)


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