*シューマンの歌曲 (3) - リーダークライスOp.24の6~8-* | ミスター・ビーンのお気楽ブログ

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≪誕生≫

ロベルト・シューマンは、ドイツのライプツィッヒの南、ムルデ川を臨むツヴィッカウ
で1810年6月8日に誕生します。
父はアウグスト・シューマン、母はヨハンナ・クリスティアーネ・シュナーベルでロベ
ルトは夫妻の6番目の末子でした。

誕生当時、ツヴィッカウはプロイセン王国に属していましたが、1812年3月~5月、ロシア
に遠征するナポレオンのフランス軍の通過地点となり、翌1813年1月、モスクワで惨敗し
たナポレオン軍が敗走したときには、町は略奪の対象となりました。

ヴィーン体制になるとツヴィッカウはザクセン王国の一部となり、ヴィーン体制の自由
主義、民族主義に対する弾圧はプロイセン全土に及ぶことになります。

1818年、自由主義の実現とドイツ統一を求める「全ドイツ学生同盟」が結成され、ナショ
ナリズム運動が高まるとともにリベラルな風潮がツヴィッカウにも広がり、ギムナジウム
の若者たちにも大きな影響を与えることになります。

シューマンは、そうした時代風潮の中で幼少年期を過ごすことになります。


$ミスター・ビーンのお気楽ブログ-ロベルト・シューマン・ハウス
ツヴィッカウのロベルト・シューマン・ハウス

$ミスター・ビーンのお気楽ブログ-ロベルト・シューマンの銅像
ツヴィッカウにある
シューマンの銅像

≪今日の1曲≫

この歌曲集も後半に入ります。
第5曲「僕の苦悩の美しいゆりかご」で中盤の頂点を迎えたあと再び高揚感と
諦めが交互に歌われ、壮大な終曲「ミルテと薔薇で」に向かいます。

歌唱は引き続き、バリトンのシュテファン・ゲンツです。


6. Warte, warte wilder Schiffmann 待ってくれ、たくましい船乗りよ
Warte, warte, wilder Schiffmann,
Gleich folg' ich zum Hafen dir;
Von zwei Jungfraun nehm' ich Abschied,
Von Europa und von ihr.

Blutquell, rinn' aus meinen Augen,
Blutquell, brich aus meinem Leib,
Daß ich mit dem heißen Blute
Meine Schmerzen niederschreib'.

Ei, mein Lieb, warum just heute
Schaudert's dich, mein Blut zu sehn?
Sahst mich bleich und herzeblutend
Lange Jahre vor dir stehn!

Kennst du noch das alte Liedchen
Von der Schlang' im Paradies,
Die durch schlimme Apfelgabe
Unsern Ahn ins Elend stieß.

Alles Unheil brachten Äpfel!
Eva bracht' damit den Tod,
Eris brachte Trojas Flammen,
Du brachst'st beides, Flamm' und Tod.


待ってくれ、たくましい船乗りよ、
あなたのすぐ後に付いて港まで行くとしよう。
二人の娘に別れを告げるんだ、
ヨーロッパと彼女とに。

血よ、僕の目から溢れ出ろ、
血よ、僕の体から湧き出でよ。
僕がその熱い血潮で
この苦しみを書き留められるように。

おや、恋人よ、何故いまさら
僕の血を見て震え出すんだ?
青ざめて血まみれの胸で
君の前に立つ僕を見るのは慣れっこだろう!

あの昔の小歌をまだ覚えているかい、
エデンの園のヘビのことを。
悪知恵のつくりんごで
僕らの祖先を不幸に突き落としたやつのことを。

すべての災いはりんごから起こったんだ!
イヴはそれによって死をもたらし、
エリスはトロイアに戦火をもたらした
おまえは両方をもたらしたんだ、炎も死も。


7. Berg' und Burgen schaun herunter 山と城が見下ろしている
Berg' und Burger schaun herunter
In den spiegelhellen Rhein,
Und mein Schiffchen segelt munter,
Rings umgänzt von Sonnenschein.

Ruhig seh' ich zu dem Spiele
Goldner Wellen, kraus bewegt;
Still erwachen die Gefühle,
Die ich tief im Busen hegt'.

Freundlich grüssend und verheißend
Lockt hinab des Stromes Pracht;
Doch ich kenn' ihn, oben gleißend,
Birgt sein Innres Tod und Nacht.

Oben Lust, im Busen Tücken,
Strom, du bist der Liebsten Bild!
Die kann auch so freundlich nicken,
Lächelt auch so fromm und mild.


山と城が見下ろしている
鏡のように澄んだラインを。
僕の小舟は陽気に進む、
あたりを陽の光につつまれて。

金色の波の戯れを、波立ち揺れるのを
じっと見ていると、
胸の底に押さえていた
あの感情がそっと目覚めてくる。

親しげに挨拶し、約束しながら
壮麗な流れは底へと誘う。
だけど僕は知っている、水面は輝いていても、
その中には死と夜の闇を隠しているのを。

うわべの楽しさ、胸中のずる賢さ、
流れよ、おまえはあの恋人の姿そのままだ!
彼女も親しげにうなずき、
優しく無邪気に微笑みもしたものだ。


8. Anfangs wollt ich fast verzagen はじめはがっくりと気を落として
Angfangs wollt' ich fast verzagen,
Und ich glaubt', ich trüg' es nie;
Und ich hab' es doch getragen -
Aber fragt mich nur nicht, wie?


はじめはがっくりと気を落として
もう駄目かと思ったけれど、
それでもどうにか耐えてきた。
でも、どうやって?とは問わないでくれ。


シュテファン・ゲンツ(Bar.)