*フィッシャー・ディスカウのシューベルト歌曲(22) ーしぼめる花ー* | ミスター・ビーンのお気楽ブログ

ミスター・ビーンのお気楽ブログ

好きな音楽の話題を中心に、気の向くままに書いていきます。

今日は再び歌曲集「美しき水車屋の娘」に戻り、その第18曲

「しぼめる花(Trockne Blumen)」

です。
この歌曲集もあと2曲を残すのみとなりました。

第18曲は静かに沈んが調子で始まり、若者の死の決意が固い
ことを示しています。
若者の棺に入れられたしおれた花、それは娘がくれた花なの
ですが、たとえ5月になっても若者の涙だけでは決して再び
芽吹くことはありません。

しかし、若者は自分の死後に一縷の望みを託します。

「そして彼女が
この丘に通りかかった時、
心の中で想ってくれたなら、
『あの人は誠実だった』と!」

「その時にはすべての花々よ、
咲き出せ、咲き出せ!
五月が来たんだ、
冬が去ったんだ。」

曲はここでホ長調に転じ、伴奏も行進曲風の明るい曲調に
かわります。しかし、それも束の間、最後には短調に転じ
葬送行進曲のような響きになって消えていきます。

当時、この曲は「水車屋」の中でも人気の高い曲だったよ
うでよく歌われていたようです。
シューベルトもこの曲が気に入り、1824年1月に


「フルートとピアノのための〈しぼめる花〉による7つの変奏曲」

を作曲しました。

演奏は15分ほどかかりますが、興味の有る方はお聴き下
さい。


Trockne Blumen しぼめる花
Ihr Blümlein alle,
Die sie mir gab,
Euch soll man legen
Mit mir in's Grab.


おまえたち花はみんな、
彼女が僕にくれた花。
入れてもらおう、
一緒に僕の墓の中へ。


Wie seht ihr alle
Mich an so weh,
Als ob ihr wüstet,
Wie mir gescheh'?


何とおまえたちはみんな、
悲しそうに僕を見るんだ?
まるで僕に起ったことを
知っているようじゃないか?


Ihr Blümlein alle,
Wie welk, wie blaß?
Ihr Blümlein alle,
Wovon so naß?


おまえたち花はみんな、
何としぼんで、何と色褪せてしまっているんだ?
おまえたち花はみんな、
何故そんなに濡れてしまっているんだ?


Ach Tränen machen
Nicht maiengrün,
Machen tote Liebe
Nicht wieder blühn.


ああ、涙は
五月の緑を育てはしない、
死んでしまった愛を
再び花咲かせはしない。


Und Lenz wird kommen,
Und Winter wird gehn,
Und Blümlein werden
Im Grase stehn.


それでも春はやって来て、
冬は去って行くだろう、
そして花が
草の中に育つだろう。


Und Blümlein liegen
In meinem Grab,
Die Blümlein alle,
Die sie mir gab.


僕の墓の中に
置かれている花々、
その花々はみんな、
彼女が僕にくれた花だ。


Und wenn sie wandelt
Am Hügel vorbei,
Und denkt im Herzen:
Der meint' es treu!


そして彼女が
この丘に通りかかった時、
心の中で想ってくれたなら、
「あの人は誠実だった」と!


Dann Blümlein alle,
Heraus, heraus!
Der Mai ist kommen,
Der Winter ist aus.


その時にはすべての花々よ、
咲き出せ、咲き出せ!
五月が来たんだ、
冬が去ったんだ。



フルートとピアノのための「しぼめる花」による7つの変奏曲