*フィッシャー・ディスカウのシューベルト歌曲(9) -ます-* | ミスター・ビーンのお気楽ブログ

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今日も冷たい雨の降る肌寒い日でしたね。皆様お風邪など召さぬよう
お気をつけください。

そんな肌寒い日ですので、せめてブログだけでも暖かく爽やかな5月
を思わせる曲を1曲。おなじみの


「ます(Die Forelle)」

をアップします。

1817年春の作曲で、歌詞はシューバルト。シューベルトではありませ
んよ、シューバルトです(笑)
シューバルトはロマン派の抒情詩人で、彼の詩はいずれも自由への
憧れを歌っています。
この詩も、自然の中で自由に泳ぎまわる「ます」を無慈悲に釣りあげ
る釣り人への怒りと悲しみを歌ったものですね。

弱冠20歳のシューベルトは、この年の3月には「音楽に寄せて」も作曲
しているわけですから、その天才振りがうかがえます。

皆さんご存知のように、この曲の旋律は、2年後に作曲されたピアノ五
重奏曲「ます」の第4楽章の主題にもなっていますね。


Die Forelle ます
In einen Bächlein helle,
Da schoß in froher Eil
Die launische Forelle
Vorüber wie ein Pfeil.
Ich stand an dem Gestade
Und sah in süßer Ruh
Des munter Fischleins Bade
Im klaren Bächlein zu.


明るい小川の中、
喜び勇んで飛び跳ねて
気まぐれなますが
矢のように泳いでいた。
僕は岸辺に立って
気分良くくつろいで眺めていた。
澄んだ小川の中の
陽気な魚たちの水浴びを。


Ein Fischer mit der Rute
Wohl an dem Ufer stand,
Und sah's mit kalten Blute,
Wie sich das Fischlein wand.
So lang dem Wasser Helle,
So dacht ich, nicht gebricht,
So fängt er die Forelle
Mit seiner Angel nicht.


一人の釣り人が竿を持って
川岸に立った。
そして冷ややかに見つめていた、
魚が身を躍らせているのを。
僕は思った、水に透明さが
無くならない限り、
彼がその釣り針で
ますを釣り上げる事は無いだろうと。


Doch endlich ward dem Diebe
Die Zeit zu lang. Er macht
Das Bächlein tückisch trübe,
Und eh ich es gedacht,
So zuckte seine Rute,
Das Fischlein zappelt dran,
Und ich mit regem Blute
Sah die Betrogne an.


だが、とうとうこの盗っ人は
待ちきれなくなった。彼は
小川を狡猾にも濁らせ、
僕があっと思う間もなく
その竿をさっと動かすと、
ますがその先にもがいていた
そして僕は激しく血が流れるのを感じながら
だまされた獲物を見つめていた。


フィッシャー・ディスカウ

ボストリッジ

ピアノ五重奏曲「ます」