とある町の一角にその店はありました
たくろうおじさんの店です
古びた人形の店でした
じっと動く事の無い人形達の姿が見えます
今日も暇だったな~
さてもう閉店するかな
ちょっと早いけど まあいいか・
ん・・?
あれ あの子達 今日も来てるんか
わぁ~っ
素敵っ 可愛いわ~
あっ・・?
おじさん こんにちは
ああ こんにちは
いやホントにその人形が好きなんだね~
うん とっても素敵っ
そうかい ありがとうね
この兄妹達は この1週間ほぼ毎日ここへ来て
この人形を見つめている
こうして私はこの兄妹と出会った
それは素敵な出会いだった
うふふ
いいな~
遅くなっちゃったね
早く帰ろう おばさんが心配する
うん
それから毎日のように この子達は
やってきた 私もこの子達と会えるのを
楽しみにしていた
それは心なごむ一時だった
私には毎日が待ち遠しい日となった
お嬢さん そんなにその人形が気にいったのなら
え・・・
え・・?
あ・・ごめん・・
何か悪い事を言ったかな・・
あ・・いえ・・
実は僕たちの 親はもう死んでいません
で、今は おばさんの所で住まわせてもらってます
そ・・そうだったのか・・
でも おばさんは本当にやさしい人なんです
とても良くしてくれます
だから もうこれ以上迷惑はかけられません
別に私 人形を買わなくても いいのよ
こうして毎日 ここに来るだけでいいの
こうして見ているだけで ホント楽しいの
でもおじさん 見てるだけじゃ迷惑かしら・・
いやいや迷惑だなんて・・
いいんだよ いつでも見に来ていいんだよ
うわ~ ありがとう 良かった~
さあ そろそろ帰ろうか
うんっ
じゃあ おじさん また明日ねー
さようなら 気をつけてお帰り~
親に必死で買って買ってと訴えるような
年頃だろうに・・
それを 買わないでいいなんて・・・
そして おばさんの事も悪い人では無いと・・
おばさんに対する遠慮もあるだろうけど
そうやっていつも大人の顔色を伺いながら
生活してるんだろうな・・
それはあの兄妹が自然と身に付けた生きる為の
術なのか・・
なんて不憫な子達なんだ・・
・・・・
それから毎日 子供達はやってきた
普段誰かと楽しい時間を過ごす事の無かった私にとって
それはとても癒やされる時間だった
他愛の無い事でおおいに笑った
そして話は尽きる事が無かった
久し振りに心の底から笑える事が出来た
しかし それも・・・
つづく