多くの人に愛されてる高野山

 その高野山に千年の時を超えて 灯し続ける灯籠があります

 今回はそのお話です

 

 

  槙尾山麓に 横山村と言う村に 源左衛門とお幸と

 言う夫婦が住んでおりました

 

 源左衛門とお幸には子が無く 子宝に恵まれますようにと

 槙尾山施福寺の千手観音菩薩に日々参拝しておりました

 

 そしてその日も参拝を終え帰り道を歩いておりました

 

 その時です 行く先から 赤ん坊の泣き声がするのです

 

 行く先の このお堂の方から赤ん坊の泣き声はしました

 二人は慌ててその方向へと向かいました

 

 そしてその場所にたどり着いた時 二人が見たものは・・

 

 可愛い可愛い赤ん坊が居たのです

 

 二人は吃驚いたしました

 どうやら親に捨てられてしまったようです

 

  これはきっと 千手観音様が 私達に授けて下さった

  赤ん坊に違いないわ

 

 うんうん きっと そうだ よし家に連れて帰ろう

 

 二人はその赤ん坊を連れて帰りました

 赤ん坊は女の子でした

 

  二人は赤ん坊に お照と言う名を付け

  たいそう可愛がりました

 

 数年経ち お照ちゃんは 可愛い女の子へと育ちました

 

 あれから変らず 源左衛門とお幸は お照ちゃんを大事に大事に

  育てました

 

 しかし それからまもなくして お幸が病の為

 亡くなりました

 

 そして今度は 源左衛門が病の床に伏せたのです

 

 お照 お照・・

 

 なぁに おとっつぁん

 

  お前に話しておかなければいけない事がある・・

  実は・・実はお前は私達夫婦の本当の子では無いんだよ

 

  ええっ!

 

 私達夫婦には子供が居なかった  それで施福寺の

 観音様に子宝に恵まれますようにと 参拝をしていたのだよ

 で、その参拝の帰り道にお前が捨てられているのを見つけ

 私達がお前を連れ帰り 自分達の子としてお前を育てたんだよ

 

 お前には いつか言おう言おうと思ってたんだけど

 言えなかった・・・許しておくれ・・

 

  そ・・そうだったの・・

  知らぬ事とは言え 私こそ我が儘放題で・・

  本当にごめんなさい

 

  でも おとっつぁん お照は おとっつぁんと おっかさんの

  本当の子よねっ  そうよねっ

 

 おお そうとも そうとも

 お照 お前は私達夫婦の本当の子だよ

 

 おとっつぁん・・

 

  しかし源左衛門も それから数日後に亡くなってしまいました

 

 お照ちゃんはひとりぼっちになりました

 

 わずかにあった 土地などは親戚と名乗る

 男に取り上げられました

 

 お照ちゃんは 家を追い出されました

 

 そして墓の近くのお堂に住む事となりました

 

 村の人達から仕事を分けてもらい生活する事となったのです

 

 そんなお照ちゃんの 心やすらげる事は

 槙尾山の観音様へのお参りでした

 

 そして お上人の法話を聞くのも とても楽しみにしていました

 

  そしてその日もお参りを済ませ 帰り道で石に腰をかけ

  休んでいる時の事でした

 

  目の前を二人の男が話しをしなが通り過ぎて

  行こうとしていました

  その時の二人の話しが耳に入って来たのです

 

  なあ 今度高野山で長者殿が灯籠を奉納するらしい

 

  ああ 菩提を弔うには 一番な事だと言うからな

 

  うんうん おいらも 是非奉納したいもんだ

 

  でも高野山は遠いし 先立つ物も無いしな~

  ああ 残念な事だわ

 

 

 へー・・灯籠か~・・・

 

 その日から お照ちゃんの頭の中は灯籠の事で

 一杯になりました

 

  でも お照ちゃんには灯籠を買う お金がありません

  でも どうしても灯籠を奉納したい  

  その気持ちは日に日に強くなって行ったのです

 

 

  その日は村のお祭りでした

  お照ちゃんも お祭りに出かけました

 

  多くの屋台が出て賑わっていました

  その時です 一人の男がお照ちゃんに

  声をかけてきたのです

 

 やあ お嬢さん 何と言う美しい髪をしているんだい

  かもじにしたら とても良い品物が出来るだろうね

 

  ええっ?

 

  いや 吃驚させて ごめん

  でも あまりに綺麗な髪の毛だったからね

 

  あ・・ありがとうございます・・

 

  もしも もしもだよ

  髪を売る気になったら 私の所へ訪ねておいで

 

 お照ちゃんは 吃驚してしまいました

 

 でも もし髪を売れば 灯籠が買えるかもしれない

 そう思い始めました

 

  でも髪は女の命  その髪を切ると言う事は・・・

  お照ちゃんは悩みました

 

 そして お照ちゃんの出した答えは・・

 

 おとっつぁん  おっかさん・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 お照ちゃんは急いで商人の所へ行きました

 

  おお よく来たね さあさ 上がりなさい

 

 お照ちゃんは 今までのいきさつを 説明しました

 

 商人は お照ちゃんの話を黙って聞いておりました

 

  お前は何と言う孝行な娘なんだい

  よし 私にも協力させておくれ

 

 商人はお照ちゃんの話に感動し 代金と旅の足しにと

 多額の金銭をお照ちゃんに渡しました

 

  そして小さい灯籠を1基 買う事が出来たのです

 

 亡き 父の為 母の為 

 お照ちゃんは 高野山を目指しますっ

 

                                     続く~